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15才少年の新生世界の警察  作者: 現代兵器無双
新たな基地と新たな交流
29/36

島内観光とパーティー

 昼過ぎ、俺はドラゴンの代表をハンヴィーに乗せるために作戦本部を出た。そして彼のいる強襲揚陸艦に向かった。海上基地に繋がる橋の前で隊員の身分確認と身体検査を受けると俺はそのまま車に乗って岸壁に向かった。俺は改めて自らが作り出した人口島を見るがやはり5km四方の島というのはデカい。そして俺は彼を迎えるために強襲揚陸艦が泊まっている岸壁の横に車を付けた。既に彼は他の隊員の警護の元、艦から降りて待っていてくれた。

 「お待たせしてしまいました。」

 「私たちも丁度降りたとこだったよ。」

 「それではこの車に乗ってください。」

 俺はハンヴィーの扉を開ける。

 「しかしこれに乗らなくとも飛べば速いのではないか。」

 「警備上の理由です。ご理解ください。」

 「まあ仕方ない。それではお願いする。」

 「それでは乗ってください。それでは行きたい場所はありますか。」 

 「空を飛ぶ物を見たい。」

 「分かりました。それではこれから向かいます。」

 俺は彼が乗ったのを確かめるとドアを閉めて岸壁沿いを走りながら本島とを結ぶ橋に向かった。

 「ところで池田さん、横に泊まっている船に何か腕を伸ばして物を渡しているように見えるのだが一体あれは何なのだ?」

 彼が指を指して聞いているのはクレーン車がキャニスターを吊り下げて船に下しているところである。

 「あれは今船に武器を渡しているのです。あの細い腕の先についているのが武器です。」

 「あれが武器のように見えないがな。でもそこらじゅうで同じことをやっているようだがあれはいつもあんな感じで作業をしているのか。」

 「いえ、いつもはあんなに忙しいのは今まで見たことがありません。あれらの船は全てアノメア合衆国の艦隊と戦っていたためほとんど全ての武器を使い切っているのです。」

 「ところであの戦闘で損害はどれくらい出たのだ。」

 「作戦行動中の事故で空を飛ぶ乗り物を2機失いましたがそれ以外の損害はないですね。2機の機体に乗っていた隊員は脱出して軽傷ですし犠牲者が出なくて良かったです。」 

 「それは随分と圧倒的な戦果ではなかったですか。なかなか信じられないがな。」

 俺は車を走らせながら彼の質問に答えていた。

 本島に向かう橋の手前で車を止めた。検査を受けるためだ。

 「ここで検査があります。車を降りてください。」

 「分かった。」

 彼は大人しく車を降りた。

 「身分証明と身体検査を行います。所持品は全てこちらに預けてください。」

 隊員が金属探知機と光彩認証装置を持ってこちらに話しかけた。もう一人の隊員が車の検査をしている。隊員は彼がドラゴンの代表者であると伝えておいてある為、身体検査のみで通過させた。そして俺たちは再び車に乗り込み、敬礼をする隊員に敬礼を返して橋を渡った。

 「しかしあれはあなたの軍の兵士なのか。」

 「ええ、そうですよ。」

 「なぜ代表者であるあなたも検査を受けたのだ。」

 「基地を出入りする者は例外なく検査を受けることになっています。その方が他の指揮官が私の居場所を把握しやすくなるので。」

 「しかしどうやって検査しているのかはよくわからなかったが随分と警備が厳重なんだな。」 

 「やはり武器を扱っている場所です。ここまでするのは当然かと。」

 「私とは考えが違うようだがまあ確かにそうだな。」

 正直なところ橋の前でここまで検査するのはドラゴン族を迎えるために警備レベルを引き上げているからなのだが。そう雑談していると彼は何かに驚いているような表情を見せた。

 「これが道なのか?まるで闘技場のフィールドのようだ。それに凹凸が全くない。すごいな。」

 「ここは色々な物を運ぶための道です。ですので他のところよりも頑丈に出来ているのです。」

 「結構走っているようだがあとどのくらいで着くのだ。」

 「あと15分程です。それと基地に入る際にもう一度検査があります。」

 「分かった。」

 それから10分程すると基地に繋がる橋に辿り着いた。俺たちは再び降り検査を受ける。前の検査の時にも思ったが彼の動きはかなりスムーズだった。通訳が検査時の行動を事前に教えておいてくれたのだろうか。それから再び橋を渡り航空基地の北側から入る。基地は4000mの滑走路4本に囲まれており00L-18RのA滑走路, 00R-18LのB滑走路, 09R-27LのC滑走路,09L-27RのD滑走路となっている。滑走路の終端がそれぞれ交差しており、その中に基地の建物と爆撃航空団のエプロンがある。F35Bの戦闘航空団とMH-60Rの哨戒航空団は00R-18Lの滑走路脇にエプロンを構えている。この広大な基地で活用されているのはまだほんの一角に過ぎないのだ。

 橋を通って地下トンネルをくぐると航空基地の指令室がある中央の建物の前に着く。その横には116m の管制塔がある。この高い塔にやはり彼は驚いているようだ。

 「ここまで立派な建物は見たことがない。それで空を飛ぶ物はいつ見れるのだ。」

 「そう焦らずともすぐご覧になれますよ。今回は特別にこの車で入りますよ。でもその前にまた検査がありますので準備してください。」

 「あなた達は体を調べるのが本当に好きみたいだ。」 

 彼はそう言ったがこれは無視する。さっきと同じ手順で検査を受けると隊員が無線機を手渡した。隊員が言うには基地内では管制の指示に従ってほしいそうだ。無線機の扱いは随分前の救出作戦の時に覚えた。そしてフェンスを開けてもらって入るとかなり早速整備中のB52がエンジンカバーを開けられフラップも全て展開された状態で整備員が何やら作業をしていた。

 「これは何だね。」

 「B52という空を飛ぶ物ですけど。」

 「これが空を飛ぶのか。でも確かに大きな羽を持っている。でもこんなにのろそうで大きな物が何の役に立つのだ?」

 「これかなり役に役に立ちますよ。アノメア合衆国の船を半分以上沈めたのはこいつです。」

 「でもこんなの船に積んでいなかったし、全く見たことがない。」

 「これは高い場所を飛んでいたので見えなくて当然です。これの中を見ますか。」

 「ぜひ見たい。」

 「それでは中に入りましょう。」

 俺は整備員に声をかける。

 「中に入っても良いか。」

 「どうぞ。ただ計器には一切手を触れないでください。」

 「了解。」

 俺はそう言うと前輪より少し手前の下部にあるハッチから出ている梯子に手をかけ彼に声をかける。

 「それでは入りましょう。」

 「楽しみだ。兵士は何と言っていたのですかね。」

 「そうでした。中にあるものに触れるなと言っていました。」

 「そうか、わかった。」

 俺は彼を手招きして中に入ることにした。中に入ると早速席が後ろ向きに2席並んでおり、コックピットはその上に梯子を使ってさらに登るようになっていた。召喚したものだから各部の塗装は綺麗だがやはりブラウン管テレビのようなモニターや丸いアナログ計器はデジタルネイティブ世代の俺にとっては馴染みのないものだった。俺はそんなことを思っていたが彼は中に入るなり奇妙な物を見たかのような感じで何度も見渡していた。

 「板の上に丸い細いものを付けたのが沢山ある。しかも所々についている緑色の綺麗な物は一体何なんだ。」

 「どれもこれを動かすために必要な物です。ここでこれを操るのですが座ってみますか。」

 俺は指を右側の席に向けて彼にそう言う。彼は子供のように目を輝かせて梯子を登り右側の席に座る。

 「でもここの視野は狭くないか。後ろなんて全く見えない。」

 「確かにこれの視野はよくないですね。これはただ前に飛ぶだけなのでそこまでの視野は必要ないのかと思いますね。」

 「なるほど。でこの前に沢山並んでいるのは一体何なんだ。」

 「僕はこれを操らないので詳しくは教えられませんが少なくともこれを見て隊員達はこれを操っているのです。」

 「これだけの数の物を見ながら操るのか。聞きたいことは山ほどあるが試しに飛ぶことは出来ないのか。」

 「これと同じものはどれも整備中です。それに今日は飛ばせる人がいないので。アノメア合衆国との戦闘で沢山働いたので休暇にしているのです。」

 「分かった。貴殿は兵士のことをかなり大切にしているのだな。」

 「それは勿論。」

 俺は褒められた。少しうれしかった。今まで褒められたことなんてかなり少なかったから余計にうれしく感じてしまった。

 「そろそろ別の機体のところにも行ってみますか。」

 「他にもいろいろなのがあるのか。」

 「ええ、早く行きましょう。」

 俺は梯子を降りて彼を乗せた後、車に乗り込むと無線機で管制塔を呼び出す。

 「こちらG-1,F35のエプロンまで誘導を要請する。」

 「こちら地上管制、直進せよ。」

 「了解、G-1」

 アルファベットはフィネティックコードを使っている。

 「G-1、右折せよ。」

 「了解、G-1」

 「G-1、右折せよ、その後滑走路手前で待機せよ。」

 「了解、右折後滑走路手前で待機、G-1」

 D滑走路と平行に走っていると待機地点に辿り着いた。

 「こちらG-1、滑走路横断許可を要請。」

 「G-1横断を許可、その後右折せよ。」

 「横断、その後右折、G-1」

 そう言い終わると俺は左右を確認して滑走路を横断する。この瞬間はかなり怖い。飛行機にひき殺されるのではないかと思ってしまうからだ。しかし俺のそんな恐怖をよそに彼は陽気に話しかけて来た。

 「すごく広いな。これは何なのだ。」

 「ここをさっき乗ったのが走って飛ぶのです。」

 「でも向こうに見えるのは船の上で少し走っただけで飛んだのに。」

 「あれが特別なだけです。普通のはこういう長い距離を走って勢いを付けなければならないのです。」

 「そなたらのは少し欠点を抱えているのか。」

 俺はこれに対してなんとも反応できなかった。飛行機とは元々長い距離を滑走して飛ぶ物だと思っていたからだ。欠点というのは人の捉え方によって異なる。これが変身していつでも飛べるドラゴン族の考え方なのかと思った。

 「これがこの基地で一番速い物です。」

 「これは一人で乗るのだろう。」

 「ええ」

 「それに思ったんだが凹凸がほとんど無くてかなり綺麗だ。これが最も速いものの品格なのかな。」

 「そうかもしれませんね。」

 「これは乗れるのか。」

 「座るだけでしたら。」

 「是非座ってみたい。子供たちが船で乗りたいと頼んだけど断られてしまってな。私が一番先に乗れるとは彼らにはちょっと可哀そうだ。」

 「良い土産話になるでしょう。」

 整備していた隊員に頼んで彼を乗せてあげた。彼は下の方を見るなり不思議そうな顔をした。

 「これはどうやって動かすのだ、それに丸い物が全く見当たらない。」

 俺はよくわからないので隊員に聞いてそれをそのまま伝える。

 「これは左側にあるこの塊と右側にあるこの棒を使って操作します。それと丸い物がついていない理由はこの前にあるディスプレイに情報を全て表示するからです。」

 「この棒と塊がどういう役割を果たすかわからないが実に面白い。ディスプレイというものは全く想像が出来ない。他の物も見せてくれるか。」

 「分かりました。向こうにあるのを見に行きますか。」

 「分かった。」

 俺は整備員に礼を言うと車に乗りすぐ近くに置いてあるMH-60Rを見せることにした。

 「これは羽がないようだがどうやって飛ぶのだ。」

 「上にローターがあって4枚の長い棒のような物が翼なのです。これを回すことによって飛ぶことが出来るのです。」

 「これは面白そうだ。船の中でも見たな。」

 「これは私たちが使う船の多くに乗せることが出来るのです。」

 「これは素晴らしい。でこれはどれくらいの速さで飛べるのだ。」

 「あなたが私たちの船に初めて飛んできた時のスピードくらいは出ますよ。」

 「そうか、今度競争してみたいな。」

 「あなたの島に基地が出来れば競争する機会も多分にあるでしょう。」

 「その時が楽しみだ。」

 彼はこのヘリの全周を歩き回り興味深そうに見ていた。

 「そろそろ帰りますか。もうそろそろ日が暮れそうです。今日は岸壁のところでパーティーがありますからそろそろ行かないと遅れてしまいそうです。」

 「そうだな。主催者が遅れては確かにまずそうだ。」

 俺は彼を車に乗せると管制塔と交信して滑走路を横断し入った時に使った入り口で無線機を返却すると俺たちは何か所かで検査を受けた。俺が計画したわけではなく隊員達が考えてやってくれたらしい。俺はなんとなくスピーチを考えながら車を走らせ海上基地の岸壁に戻って来た。岸壁では船と船の間に浮島とそれと岸壁と結ぶタラップが付けられていた。隊員達は艦に積まれていた野営用のテントや調理設備を使ってバーベキューをしたりして食事を提供していた。ただ通訳の腕章をつけた隊員は仕事で大忙しだった。所々で音楽と共にダンスをしていた。

 「この音は一体何ですか。」

 「音楽と言って私たちの文化です。」

 「結構賑やかなんだな。それよりも見たこともない料理も沢山ある。あれって全部食べても良いのか。」

 「どうぞ、パーティーですから好きなだけ食べて下さい。私は少し準備があるので後は好きに行動して下さい。結構あなたのお仲間も楽しんでいるようですよ。」

 「そのようだな。」

 そう言うと俺はこのパーティーを計画した隊員に会いに行った。彼はスマートフォンを持って忙しそうにしていた。彼女が一旦落ち着いたところで俺は彼女に声をかけることにした。

 「やあ、お疲れ様。すごい盛り上がりだな。」

 「池田殿、お疲れ様です。どうされましたか。」

 「これからどういうことをするのか聞いておきたくて、後スピーチはどこでした方が良いのか教えてほしい。」

 「この後の予定はえっと...結構作戦本部の指揮官がかなり太っ腹にいろんな物を出してくれたので予定は盛沢山ですが...本当に聞きますか。楽しみが減ってしまいますよ。」

 「じゃあやめとく。スピーチのことだけ教えてくれ。」

 「えっとですね...中央の強襲揚陸艦の甲板からしてもらいたいですね。連絡を頂ければいつでも良いですよ。」

 「出来ればすぐやりたい。」 

 「了解しました。すぐに準備します。」

 なんで早くやりたかったか。それはさらに盛り上がってしまうとスピーチしづらくなってしまうと思ったからである。強襲揚陸艦に乗り込み甲板に出るとマイクといくつもの野外用の照明が置いてあった。準備をしていた隊員が俺に聞いてきた。

 「それでは始めさせていただきますけど準備はよろしいですか?」

 「いつでもどうぞ。」

 そう言うと急に今まで流れていた音楽が止まり、俺の周りに置いてあった野外用の照明器具が一斉に俺を照らした。すると横にいる隊員がかがんで親指を突き出した。俺はすぐにそれがスピーチの開始の合図だと理解した。

 「皆様こんばんは。私は池田才人、この組織の代表者です。」

そう言うと一斉に拍手と口笛が辺りを満たした。

 「まず勇敢で誇り高き隊員の皆様、あなた方のおかげでドラゴンの故郷を襲い、そして我々の故郷をも襲おうとしたアノメア合衆国艦隊を撃破することが出来ました。またこのような盛大なパーティーを開催してくれたことを感謝しています。この組織の目的は非人道的行為をこの惑星から一掃すること、その力を目的の為に振うことを期待しています。」

 そして再び拍手が巻き起こった。

 「ドラゴンの皆様、アノメア合衆国艦隊を撃破しましたが皆様の島を守り切ることは出来なかった。そして急にこのように故郷を捨てさせるようなことになってしまい申し訳ない。我々は皆様が故郷でより良い生活を取り戻せるように皆様の首長とも話し合い、皆様を故郷に帰還させると同時に復興支援事業を行わせて頂くことにしました。我々は可能な限り皆様のお役に立てるように日々任務を遂行して参ります。」

 そうすると大きな雄叫びが色々なところから聞こえた。俺たちが拍手をするように彼らは雄叫びを上げるのだろう。

 「後3日後にはドラゴンの皆様の故郷へ向けて出航します。まだまだパーティーは続きます。それでは楽しんで!」

 そう言って締めくくると雄叫びと拍手と口笛が一斉に鳴り響いた。自分の言葉でこれほど喝采を受けたのは人生で初めてのことだった。今まで受けた五月雨のような拍手ではなくこういう力のこもった拍手と口笛と雄叫びのアグレッシブな感じに俺は感動を覚えた。

 俺はその後屋台でカレーとかバーベキューで焼いた牛肉なんかを食い散らかしていると再び首長と顔を合わせた。

 「やはりあなたは私たちのことを考えて下さっているのですね。船の中でもかなり親切にして貰ってかなり評判が良いですし、みんな気に入っていますよ。」 

 「隊員達を褒めて下さってありがとうございます。あなた方も私たちが言ったことによく従ってくれて助かっていますよ。」

 「それは勿論ですよ。私も少し話したいのだがあの場所を使わせて貰えないだろうか。」

 「ちょっと待ってください。隊員に確認します。」

 俺はスマホで企画した隊員に電話をする。

 「もしもし、お願いがあるんだけど良いかな。」

 「分かりました。ところでどちら様です。」

 「池田才人です。さっきの場所を貸して欲しいんだ。」

 「池田殿!失礼しました。それは可能ですがもしかしてもう一度スピーチをされるのですか。」

 「いや、スピーチをするのは私ではない。ドラゴン族の首長だ。」

 「分かりました。通訳を用意しておきましょうか。」

 「頼む。」

 「それでは好きな時に甲板にいらして下さい。」

 「ありがとう。それでは失礼する。」

 俺はスマホを切った。

 「それでなんと。」

 「いつでも話して良いそうです。」 

 「気になるものを食べたら話に行きたい。」

 「良いですよ。」

 そう言った彼についていくと彼が興味を持っていたのはマグロだった。彼はこの魚を生で食べることに興味を示していたのだ。彼はマグロの刺し身を食べた。初め彼は微妙な顔をしたが隊員が醤油とわさびを乗せてある小皿を渡すと彼は刺し身をそれにつけて食べた。その後どんどん食べていき、気が付くと、切り身の多くを平らげてしまった。これには近くにいた隊員も料理を提供した隊員も相当びっくりしていた。

 「いやあ美味かった。あれはどこまでも食べれてしまうほどおいしい。でもあんなに美味しいのに他の所よりも減りが少なかったのはどうしてなんだ。」

 「やっぱり生だからというのと近くに寿司を出すところがあったからだと思いますね。」

 「あんなに美味しいのに勿体ないな。」

 日本以外の地域では魚を生で食べるという文化があまりない。近年の日本食ブームでかなり広まっては来たが田舎にいる人間にとって生の魚というのは馴染みがないのだろう。召喚する使い人は人種も性別もランダムでそれぞれが世界各地の文化を持っているらしい。だから日本人のように生魚を好む人は少ない。ただ良いのは使い人同士が文化の違いを認め合っているということだ。そうであるからこそチームとして戦うことが出来るのだ。

 「そろそろ向かいますか。」

 「ああ、そうしたい。」

 「では行きましょう。」

 そして彼と一緒に人を避けながらさっきの場所に向かっていった。

 着くと既に通訳が待機していて俺と彼に挨拶をした。どうやら既に知った仲であるらしくちょっと打ち合わせをしてすぐに始めることになった。

 「皆さん、祭りの途中ですがちょっと私から話があります。私はドラゴン族の首長です。今日は私の決断を皆様にお話ししようと思います。」

 そして通訳が全く同じことを言う。ドラゴン族の人達は真剣に、隊員達は不思議そうに聞いている。ただドラゴン族の方の雰囲気は全く違った。

 「私は我々が最も良い方向に向かうことを常に考えておりました。そして今回大きな決断をします。私は池田軍が我々の島に駐留するのを認めます。」

 通訳が再び翻訳する。ドラゴン族は先に言葉が通じているため何も言葉を発さなくなり完全に氷ついているような感じだった。隊員達は拍手を送った。

 「私は池田軍と将来にわたっても友好的な関係を築いていきたいと考えております。私たちの同胞に言います。多くがとても動揺していると思います。それもそのはずです。我々は外との交流はほとんどなく初めての接触があのアノメア合衆国だったのです。アノメア合衆国に対してではなく人間に対して憎悪を抱いている同胞もいるかもしれない。だが彼らは我々を救ってくれた。今回ばかりは彼らが助けてくれなければ我々は全員死んでいたでしょう。それだけでなく彼らはこれだけ圧倒的な力を持っておきながら決して高圧的な態度で接することなく我々をずっと気づかい様々なことをしてくれた。我々が付き合うべき人はこの池田軍の皆様であろう。」

 通訳がそれを翻訳した。目から何か光るものが流れたのを俺は見た気がする。そう言うとドラゴン族からは雄叫びが上がり、隊員達は大きな拍手を送ってくれた。俺は彼の所へ行きそして俺も少しだけ話すことにした。

 「首長は非常に勇気のある決断をしてくれました。私はその勇気に応えることが使命であると感じております。私たちとドラゴン族の皆様が未来永劫ずっと友達でいることが出来るように努力して参ります。」

 俺がそう言うと再び拍手と雄叫びが巻き起こった。そしてしばらくすると轟音と共にF35の編隊がアフターバーナーに点火して存在感を見せつけるように上空を通過した後盛大にフレアをばら撒いてそのまま北の空へと飛び去って行った。

 


 

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