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15才少年の新生世界の警察  作者: 現代兵器無双
始まりと仲間
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”板”の力が花開く

 女性が立体映像上から消えた後、脳には合成音声の男の声が響いてきた。

 「あなたが“板”と呼んでいる端末について説明します。まずこの端末のセキュリティロックを開けるには指静脈と指紋認証が必要になります。指を置く位置は板上であればどこでも問題ありません。そしてこの端末にはタブレットモード、ラップトップモード、そして立体映像モードの3つがあります。タブレットモードはこの端末の物理画面に投影するモードで、ラップトップモードは仮想スクリーンを本体正面、側面の三か所から出すことが出来、入力は、仮想スクリーンに合わせて指を動かすか、本体画面に表示されているキーボードを使用し行います。最後に立体映像モードは本体上部に立体映像を出現させます。そして指の動きで表示されている物体を回転させたり、編集したりすることが可能です。入力は仮想キーボードを立体映像で表示させて使用できます。また画面上に手をのせることで脳内の思考を読み取り、それを反映することが可能です。この端末で作成または情報を取り寄せたものは全てこの世界に出現させることが出来ます。出現する場所は端末の上部にある→より先10m地点に出現します。出現させるには指紋認証、指静脈認証、手のひら静脈認証、虹彩認証、顔認証、あとは暗礁番号が必要になります。最初に暗礁番号入力に緊急コードを入力するとすべての動作が停止し、この端末を介して出現させたものは全て消滅します。またこの端末はあなたの生命活動が停止した場合でも停止するようになっています。以上が利用ガイダンスです。暗証番号は午前0時に更新します。」

ガイダンスが終わるとそれはただの“板”となった。

 「利用ガイダンスの内容は複雑だったが、俺の体がパスワードで、この端末の力が世界を救うということは分かった。しかしどうやって点けるんだ?」

 そういっていたに指をつけると脳からさっきと同じ声が聞こえてきた。

 「起動しますか?」

 俺は

「はい」

 と脳内で答えると端末の表面が光り始めた。そして一瞬でメニュー画面に入った。

 『さっきあの女性が前の世界の情報をすべて取り寄せて出現させることが出来るって言っていたよな。てことは人間を作れるのかな?」

 と思いタブレットモードになっていた画面にキーボードを表示させ、“人間 作成”と検索バーに打った。そうすると一瞬で検索結果が表示され、クローン人間に関する研究や、クローン羊のドリーについての表示されていた。そして画面をスクロールして一番下に“使い人”と書いてあるリンクを見つけた。それをクリックするとまたさっきの女性が今度は立体映像ではなく動画として現れた。

 「まさかあなたがさっき説明したあとすぐ人間を作れるか調べるとは思っていなかったわ。数日後に説明しようと思ったのだけれど今説明するわ。使い人はクローン人間ではないの。これは私の権限で出現させることが出来るものよ。出現した後は使い人と個別に契約を結ぶの。使い人はあなたに服従するようになるけど、待遇が悪いと私が消すか、使い人が反乱を起こすことになるから待遇には常に気を配りなさい。そして使い人の利点だけど特定の能力に特化させることが出来るのよ。詳しいことは下にあるPDFファイルを確認してね。」

 と言って女性は淡々と説明し画面から消えた。

 使い魔のページには3つの書類があって一つ目が使い魔について、2つめが宣誓文、最後に付加できる特化能力が記されたリストだ。

 俺はこの端末を縦にして使い人についての書類を読み始めた。書類は5枚ほどで、要約すると神(この世界に転生させた女性)と使い魔の3者契約になること、使い魔は3食の食事、睡眠を必要としないが、それらを与えると忠誠心が大幅に上がること、人道的な扱いをしないと反乱がおこること、自由意思を持つこと、構造は人間と変わらないこと、使い人は18才以上で使い人の性別、人種は選択できないこと、言語は英語であること、であるということらしい。

 それらを熟読していると日が傾き始めていることに気がついた。ここは俺から見て正面が海で後ろ左右はただの砂浜だった。そしていろいろとありすぎて気にしていなかったが、俺は塾に行くときの恰好のまま砂浜に正座していたのだ。そして腹がすき始めたことにも気づいていなかった。しかし身に着けていた時計がこの世界に送り込まれたときにおそらく無くなってしまったので今何時なのかすらわからない。そしてそもそも自転周期が24時間なのか、ここは球体の惑星の上なのか、ここに広がる“海”の“海水”は海水なのか、すべてがわからないということに対して初めて恐怖がわいてきた。この恐怖を表すかのようにさらに曇っていき、日が空を赤く染めた。

 そんな恐怖でずっと立つこともできず、へこたれている俺のわずかに残ったまともな思考が俺に話しかける。

 『取り敢えず今日生きることを考えろ。』

 と。

 そして恐怖が問いかける。

 『もう人生は終わった。』

と。

 理性は答える。

 『まだ終わっていない。この端末があればずっと生きていくことが可能だ。』

と。

 いざ自分に死の足音が近づいてくると親からの仕打ちが酷く死にたかったはずなのに怖がってしまう。ここで初めて気づいた。なんと自分は弱かったのだろう。結局死にたくなかったのだ、自分の弱さを隠すためにずっと嘘をつき続けていたのだ、と。

 俺は決意する。死にたくないのならどんなに苦しい思いをしてでも生き抜こう。たとえそれによって何が起こったとしても。

 理性が打ち勝ち、立ち上がった才人は生きるために食事と自衛装備をそろえることにした。

 端末の検索からアメリカ陸軍の装備を検索した。地上にいるなら世界一実戦経験のあるアメリカ陸軍の装備を持つのが安全だろう。

 アメリカ陸軍の戦闘服には耐火ナイロンブレイドが採用されていて、迷彩はUCP, DEFCP, OCPの3種類がありこっちに来る前まではOCPが主流だったらしいからこれにした。靴はこの先何が起こるかわからないのでアメリカ陸軍が採用しているコーデュラナイロン及び革製のデザートコンバットブーツ、頭部の防護にアラミド繊維製ACHヘルメット、そしてセラミックプレートが入ったIOTV Gen3ボディーアーマー、アラミド繊維製戦闘用グローブ、暗視ゴーグルにAN/PSQ-20 ENVG、端末を収容するために灰色の小型のバックパック、武器は5.56mmM4A1にアクセサリーとして付属させたM203グレネードランチャー、暗視装置のAN/PVN-17Aを両腕で持ち5.56mm弾30発x10マガジンをアーマーのマガジンポーチ、左側のポーチにはストラップカッターを装着することを決定した。そして最後に暗礁番号3367を入力すると選択した装備品がすべて端末の前に現れた。塾帰りの服を脱ぎ戦闘服に身を包み、各種装備品を装着していった。総重量は20㎏ほどであり、人生で初めてこれだけ重いものを身に纏ったのは初めてだった。しかしこれだけ重く感じるのは物理的重量によるものだけではないだろう。

 日没しかけている時間になってきたので空いていた腹を満たすために食事を摂ることにした。この状況だから軍隊の食事なら少ない量で大量のカロリーを摂取できるだろうと思い、MREにすることにした。MREには24種類の味があると検索すると出てきた。気分で8番のメニューにした。そしてここには水がないのでMREと共に500mlのペットボトルに入った日本の水を選択した。20㎏の装備を身に着けながら砂浜に座り、ミートボールのレトルトを加熱用パックに入れ水を入れた後、粉末ジュースを飲みながら沈んでいく日を眺めていた。加熱用パックに入れたミートボールが温まるとそれをビスケット共に食した。その味はコンビニに売っているようなものをすこし甘くした感じだったが、それが異様においしく感じられた。今まで命の不安がない当たり前が当たり前でなくなったせいだろう。

 食事を終えるとプラスチックボトルとMREの袋をどうしようかと悩んだ。ここには何もないから海に捨ててしまっても良いかと考えたが、環境問題が取り沙汰されている世界のごみにとてもうるさい国にいた人間にはとても抵抗があった。結局悩んだ挙句、良心に従いごみはすべてMREの梱包袋に入れてバックパックの中に端末と共に入れることにした。

 長い夜が始まった。いつもなら自分の部屋に戻ってネットサーフィンかゲームに勤しむ時間だ。しかし今日からすべてが変わった。今日は使い人と契約する時間もなかったので見張りはもちろん俺しかいない。AN/PSQ-20 ENVGから見えるのはただ静かに一面に広がる波打つ海水、そしてただ足元に広がる砂浜、ただこれだけであった。じめじめとした暑さが体中から汗を吹きださせるような気持ちの悪い感覚に襲われながら時間だけがいたずらに過ぎていく。早く日が上ってほしい。ただそう思いながら曇天の空を見上げた。



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