表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方妖陽録  作者: よっしー兄貴
3/4

第参話 〜荒れ果てた紅魔館〜

この作品は東方Projectの二次創作作品です

暴力表現、流血表現があります。注意してください

生き物の気配が全く無い紅魔館(こうまかん)の内部を探索する霊夢(れいむ)魔理沙(まりさ)美琴(みこと)の三人。内部はかなり荒れており、壁や天井が所々欠けたり崩れたりしている。


「随分派手に暴れたみたいね」


「だな。やっぱ吸血鬼は元から力が強い部類だし…それだけに凶暴化したら厄介なんだろうな」


(とか言いながらなんか余裕を感じるのは私だけ?)


美琴は、この紅魔館の状況を見て少し怖くなってきてしまった。静かすぎる上に、相手はかなり強いという話だ。ここで、ある事を思い出した。


「ねえ、さっきの人さ、咲夜(さくや)さん?って人がまだ戦ってるって言ってたよね」


「あぁ、言ってたな」


「それにしては静かすぎじゃない?」


「確かに…」


魔理沙が歩みを止めた。そして顎に手を当てて考え事を始めた。


「こんな広い建物でも激しい戦闘があれば小さくでも何か音が聞こえるはず…でも聞こえない…か」


「もうここに居ないとかじゃない?」


「それは無いな。レミリアは日光がダメだからな」


美琴は何となく上を見上げた。崩れた天井から陽の光が差し込んできてる。


「この建物内でいくら騒いでも音が聞こえない場所…かつ陽の光に当たらない場所」


「地下ね…」


「だな」


魔理沙は顔を上げ、霊夢と目を合わせた。


「ここで騒げる地下室は二つ。地下図書館かフランの部屋だ」


「フランの部屋ならまだ被害を抑えられる可能性はある。だが、既に地下図書館に居たら…」


霊夢の顔が険しくなる。


「二手に分かれて行動しよう。私はフランの部屋に行くから、霊夢と美琴は地下図書館に行ってくれ」


「ちょっと、一人で行ってレミリアが居たら…対処出来るの?」


「逆に一人で地下図書館に行ってレミリアが居たらどうする?負傷者を守りながらレミリアと戦えるか?」


「…」


魔理沙の表情から覚悟を感じとれる。


「分かった…。図書館の安全を確認したらすぐに向かうから」


「あぁ。こっちもレミリアが居なかったらそっちに直行するぜ」


「よし…行動開始よ!美琴、着いてきなさい!」


「う、うん!」


魔理沙は箒に跨り、スピードを上げてフランの部屋を目指した。霊夢と美琴も急いで地下図書館を目指した。美琴も覚悟を決めた。何があってもレミリアの暴走を止め、ここの住人を救うと…。

地下図書館前の扉の前


「この先よ。美琴、覚悟はいい?」


「うん…いけるよ!」


霊夢は美琴の返事を確認すると、扉を開いた。その瞬間聞こえてきたのは、魔力と魔力がぶつかり合う音、騒ぎ声。


「まさか…」


「急ごう!」


霊夢と美琴は螺旋階段の間を掻い潜り、急いで図書館へ降りた。見えたのは障壁を貼るパチュリー、フランやメイド妖精の手当てをする小悪魔、そして障壁に攻撃を当て続けるレミリア。


「霊夢!?」


霊夢の姿を見たフランが言った。その声に反応し、レミリアが霊夢たちの方を向いた。レミリアの標的がパチュリーたちから霊夢たちに変わった。限界を迎えたのか、障壁を解いたパチュリーが膝から崩れ落ちた。


「逃げて!今のお姉様は危険だよ!!」


「逃げてって…ここで私たちが止めなけりゃ誰が止めるのよ!」


霊夢は御札とお祓い棒を持ち、構えた。それを横目で見た美琴も大鎌「気炎万丈」を形成し、構えた。


「いくわよ!美琴!」


「うん!」


レミリアは紅い槍を二本作り出し、二人目掛けて投げた。槍と、その軌跡から撒かれる弾幕を避けつつ霊夢と美琴はレミリアとの距離を詰めた。


_______________



霊夢たちと別れ、フランの部屋を目指す魔理沙。部屋の前の階段に来たが、物音一つしない。


(ハズレか…ならもう地下図書館に…?)


急いで地下図書館に向かおう、と思ったが、ある事が頭をよぎった。


(咲夜は?咲夜は無事なのか?)


レミリアと交戦していた咲夜の無事が気になる。魔理沙は階段を降り始めた。暗い中、壊された扉が目に入った。


(やっぱりここでもレミリアは暴れたのか)


部屋の中は真っ暗だ。恐らくレミリアが暴れた時に壁掛けのロウソクの火が消えたのだろう。魔理沙はミニ八卦炉から火を出し、入り口の近くにあったロウソクに火を灯し、その灯りを頼りに部屋を探索し始めた。フランのベッドやぬいぐるみが無惨に破壊されている。フラン自身がやるより遥かに酷い壊れ方だ。ふと、ピチャン…と液体を踏んだような音がした。足元を照らすと赤い液体…血が流れていた


「…っ!!」


魔理沙は驚き後ずさりをした。が、もしやと思い、血溜まりの中を照らしてみた。見覚えのあるメイド服を着た少女が倒れている。メイド長の十六夜咲夜(いざよいさくや)だ。


「咲夜!」


魔理沙はロウソクを近くに置き、咲夜に駆け寄った。顔や銀色の髪まで血で汚れている。手首に指を当てて脈をはかる。


「まだ生きてる…!」


微かだが脈はあった。


「咲夜!しっかりしろ咲夜!!」


魔理沙の呼び掛けに応じるように、咲夜はゆっくり目を開けた。


「魔理…沙…?」


「よかった、目が覚めたか…」


「お、お嬢様…は…?」


自分の身よりも主の心配をする辺り、流石というかなんというか。こういう時くらいは自分の身を心配して欲しいと思っていた。


「今は霊夢たちが対応してるはずだ」


「霊夢たち(・・)…?」


「まぁ、話すとちょっと長くなるんだ。今はお前の手当が先だ」


魔理沙はスカートのポケットから回復薬を取り出した


「応急処置くらいにしかならないと思うが…」


蓋を開け、咲夜の口に運んだ。即効性の回復薬の為、飲んですぐに顔色は良くなった。


「ありがとう…」


「いいんだ。後でちゃんと手当てを受けるんだぞ」


「わかってる…。魔理沙…今お嬢様は…?」


「多分、地下図書館だ」


咲夜の表情が固まった。


「私が…私がお嬢様を…抑えられなかったばかりに…」


咲夜の頬を涙が伝うのが見えた。


「自分を責めるな。咲夜が止めてなきゃ、被害はもっと大きくなっていたはずだ」


魔理沙はハンカチを取り出し、咲夜の涙を拭いた。咲夜は安心したように表情を緩めた。


「ありがとう…」


「気にするな。さて…私は霊夢たちの所に向かうよ。終わったらソッコーで迎えに来る」


魔理沙は立ち上がり、箒に跨ろうとした。しかし、咲夜が魔理沙のスカートの裾をつかんだ。


「魔理沙…私も連れて行って…」


その一言が出ることはなんとなくわかっていた。しかし、この傷だ。あまり動いて欲しくはない。


「正気か?さっきの回復薬じゃ完治はしてないんだぞ?」


「わかってる…でも行かなきゃ…ここでお嬢様を止めなければメイド長失格よ…」


魔理沙は小さくため息をついた。


「見上げた忠誠心だな…」


「私の生き甲斐だからね」


「ま、止めても意味ないのは分かってるから連れていくが…絶対に死ぬなよ」


「お嬢様が死ぬまで死ぬ気は無いから」


魔理沙は咲夜を抱き上げ、箒に乗せた。魔理沙も箒に跨り、空中に浮いた。


「しっかり捕まってろよ!」


「えぇ!」


咲夜は魔理沙にしっかり抱きつき、それを確認した魔理沙は咲夜に負担がかからないくらいの速さでフランの部屋を飛び出した。


(霊夢、美琴…すぐ行くからな)


_______________


レミリアの攻撃は強烈かつ隙が少ない。霊夢は避けるのに専念し隙を伺っている。美琴も避けたり鎌で攻撃を受け流しつつ隙を狙っている。しかし、受け流すにもレミリアの攻撃は重く、次の回避がギリギリになることもあった。

そんな危なげない様子の美琴を横目に霊夢は状況を確認した。


(レミリアの狙いは私と美琴…そして今障壁を張ってるのは小悪魔…)


パチュリーに変わり障壁でみんなを守っているのは小悪魔だ。パチュリーのものより弱い為、レミリアの狙いがあちらに向くと負傷者を増やすことになる。それだけは絶対に避けたい。


(早めにカタをつけないとね)


二人を相手にしながらも中々隙を見せないレミリアに苦戦を強いられている霊夢と美琴。

果たして、被害を最小限に抑えつつ勝利を収める事が出来るのか…

東方妖陽録第参話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。紅魔館の中を探索、霊夢と美琴はレミリアと対峙、魔理沙は重傷を負った咲夜と会うという展開でした。

吸血鬼である上に闘争心のリミッターが外れたレミリアとやり合って死なない咲夜さんって何者なんでしょうね。半分人間辞めてそう。ちなみに魔理沙が回復薬を与えていましたが、あれは毎回数個携帯してる設定です。自分、もしくは他の誰かが怪我した時に手当するためですね。咲夜に対しては応急処置にしかなりませんでしたが。


次回、レミリアを止める為に霊夢達が奮闘します。美琴の本格的な初陣ですが、無事に生きて勝利を収められるんでしょうか…。初陣が吸血鬼なんてついてない妖怪さんだ…

次回もよろしくお願いします〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ