第弍話 〜調査の始まり〜
この作品は東方Projectの二次創作作品です
暴力表現、流血表現があります。注意してください
「里まで来たが…」
「ここはまだ被害は無さそうね」
「みんな普通に生活してる」
人間の里にやってきた霊夢、魔理沙、美琴。異変発生から時間が経っている為、何かしらの被害があるかと思ったが杞憂だったようだ。
「とりあえず、別の場所にも行ってみるか?」
「そうね」
里の安全を確認し、別の場所へ向かおうとした時
「あ、あの…巫女さん」
後ろから声をかけられた。里に住む子どもだ。
「ん?どうしたの?」
「あの…お父さんが妖怪に襲われて大怪我しちゃったの…」
「…なるほど」
「里の中に被害は無いが、住人が里を出た時に襲われた…か」
「…やっぱり道中の妖怪も倒した方がよかったんじゃない?」
「そうね…わかった。私達がなんとかするわ」
「巫女さんありがとう…」
子どもは霊夢達に手を振り、帰っていった。
「なぁ、一応里の住人に聞き込みしたらどうだ?」
「そうね。そうしてみましょう」
「よし、頑張れよ」
「は?」
霊夢は不服そうな顔をした。魔理沙が「霊夢一人で聞き込みをしろ」と言ってるように聞こえたからだ。
「ちょっと。私一人に聞き込みさせる気?」
「仕方ないだろ。私はともかく、莉音はまだ顔を知られていない。だから聞き込みしてもまともな答えが得られないかもしれないだろ?」
「でもなんで私一人よ」
「美琴を一人で待たせるか?」
「私は一人でも大丈夫だよ?」
「…」
霊夢がニヤッと笑った。
「じゃあ美琴、あの団子屋の前で待ってて。私達は聞き込みしてくるから」
「わかった」
「さ、魔理沙行くわよ」
「お、おいぃ…」
霊夢は魔理沙の手を引き、聞き込みに行ってしまった。美琴は団子屋の前のベンチに座り、なんとなく辺りを見渡した。一見平和に見えるが、不安も混じっている…そんな雰囲気だ。それに、いつもより妖怪の数が少ない。いつもは天狗や河童もよく見るが、今日はまだ見ていない。凶暴化して里に被害が出るのを恐れてか…そう考えるのも仕方ない状況だ。
(一体何が原因なんだろう…妖怪だけが凶暴化なんて…それにあの人が言っていた…)
一人、考え事をしていたその時。
「うわー!」
里の入り口の方から悲鳴が聞こえた。見ると、男が一人、凶暴化した妖怪兎から逃げてきている。見た目は普通の兎だが、凶暴化の影響か大きさが人間の大人くらいになっている。そんなものに襲われたら絶命は必至。
「まずい…!」
霊夢と魔理沙は間に合いそうにない。なら、自分が行くしかない…。
美琴は立ち上がり、目の前に炎の塊を作り出した。
「いでよ…大鎌、気炎万丈!!」
炎が消え、中から大鎌が現れた。美琴は鎌を担ぎ、妖怪兎目掛けて走る。
妖怪兎が噛み付こうと口を開けたその瞬間…美琴は鎌を大きく下から振り、妖怪兎の口を斬った。そのダメージで怯み、妖怪兎は後ろに倒れた。
「早く逃げて!」
「ヒィ…!」
美琴はバク転で距離を置き、周りから人が居なくなったのを確認する。
「被害を出さない為…一撃で決めるよ!」
一度深呼吸をし、鎌を再び構える。体勢を立て直した妖怪兎が美琴を睨んでいる。それでも美琴は冷静を保ち、鎌の柄をグッと力強く握った。
(多分、次は突進してくるはず…それしかない)
案の定、妖怪兎は美琴に飛びかかろうと突進してきた。
「ここだ…!」
タイミングを見計らって鎌に一気に妖力を注ぐ。刃は業火に包まれた。それを見た妖怪兎は避けようとブレーキをかけたがもう間に合わない。美琴は突進を避け、すれ違いざまに炎を宿した鎌で体を一気に抉った。刃は内臓まで届き、体内から妖怪兎を焼いた。そのまま妖怪兎は絶命、宣言通り一撃で決めてみせた。
「ふぅ…よかった…」
美琴が大鎌「気炎万丈」を投げると、鎌は火の粉になって消えた。ふと振り返ると、霊夢と魔理沙が立っていた。
「あ、二人とも」
「ほー…そんなこともできるんだなぁ」
「流石は炎の妖怪ね」
「えへへ」
美琴は照れたような表情をした。
「あ、それで、情報はあった?」
「えぇ。どうやら、紅魔館の方向に妖怪が多いらしいわ」
「紅魔館って言ったら…あの湖の畔にある紅いレンガの建物だよね?」
「それね。まずはそこに行ってみるわよ」
「了解!」
「ちなみに、行きは徒歩になるぜ。大丈夫だよな?」
魔理沙が横から首を突っ込んできた。
「余裕だよ!」
美琴は元気に答えた。
「よし、じゃあ早速行こうぜ!」
「そうね。パパッと解決するわよ!」
「おー!」
三人は人間の里を後にし、紅魔館目指して歩き始めた。
道中、獰猛化した妖怪との戦闘もあった。その時は霊夢と魔理沙は弾幕で、美琴は鎌で応戦した。
「なあ美琴、お前ってその炎自在に操れるのか?」
「勿論。炎の妖怪だからね」
「なら森が火事になることは無いな。安心したよ」
「はは…そんなドジしないよ」
こんな少し呑気な会話をしながら、三人は紅魔館へ向かって森の中を歩いた。
「おお…相変わらず広い湖ね」
「しかし、こっから見た感じじゃなんの変化も無いけどな」
「でも、そこの住人って前に異変起こしたんでしょ?じゃあ、可能性はゼロじゃないよ」
「そうね行きましょう」
「おう」
そう言って霊夢と魔理沙はフワリと浮いた。
「え?まさか湖突っ切るの?」
「え?そうだけど…なんで?」
「だって…湖からなんか出てきたらどうするの?」
美琴は不安そうな顔で言った。炎の妖怪にとって水は弱点。水中に引きずり込まれようものなら、抵抗もできないまま息絶えてしまう。
「まさか。いくら妖怪が凶暴化してるからってそんなことあるわけないじゃない」
「そうだぜ。あまりピリピリしすぎるのも良くないぜ」
「でも…」
「大丈夫。万一何か出てきても私と魔理沙がなんとかするから」
「そうだぜ。妖怪退治の専門家に任せろって!」
「そこまで言うなら…」
美琴も宙に浮き、霊夢、魔理沙に続いて湖の上を飛んで渡ることにした。
対岸にて
「ほら、何もなかった」
「考えすぎだぜ」
「うぅ…でも水は苦手なの…」
結局、何事も無く湖を渡り切ることができた。
「さ、じゃあ紅魔館に入って見ましょ」
「だな。ついでに本も何冊か借りていきたいな」
「その余裕があればいいわね」
(二人共余裕があるなぁ。流石数々の異変を解決してきただけある…)
美琴は二人の後ろ姿を見ながらそんなことを考えていた。頼もしくもあったが、自分が足を引っ張らないか不安になってきた。出発前は「足を引っ張らないように頑張る」とは言ったが、この場面でまだ余裕がある二人に少し圧されてしまった。
(大丈夫大丈夫、自分ができることをすればいいんだ)
「美琴、準備いいか?」
「あ、うん!大丈夫。いけるよ」
「よっし…じゃ行くか」
三人が紅魔館の正門をくぐろうとしたその時、紅魔館のエントランスの扉が開き、中から誰か出てきた。門番の紅美鈴のようだ。美鈴は霊夢達を見ると、走って向かってきた。
「れ、霊夢さん!なんでここに!?」
「え?異変解決の為に」
「あぁ…よかった!お願いです!!お嬢様と咲夜さんを助けてください!!」
「い、いきなり何よ…てか、なんかあんたボロボロじゃない…」
美鈴の腕や頬には切り傷があり、チャイナズボンも所々破れていた。
「はい…お嬢様を止めるために尽力しましたが、私では及びませんでした…」
「助けてくださいとか止めるためとか…レミリアに何があったか、説明できる?」
美鈴は「はい」と答えた後、状況を話し始めた。
「昨日の夜からです。お嬢様が…いきなり気が狂ったように暴れだしたのです。部屋の近くにいたメイド妖精を襲い、そこからはもうめちゃくちゃに…」
「じゃあ…昨日の夜からずっとレミリアを抑えるために?」
「はい。私だけではなく、咲夜さんもパチュリー様も…ですが未だお嬢様は…」
「かなり深刻な状況ね…しかも明らかに凶暴化してる。となると今回の異変と関係がありそうね」
「お願いします…パチュリー様は自身と、不意打ちをされた妹様の療養の為に地下図書館に逃げています…でも咲夜さんはまだお嬢様を止めています…お願いします…二人を助けてください…」
美鈴は涙目になりながら訴えかけた。
「わかった。後は私達に任せなさい。あなたはパチュリーのとこで傷を癒しておきなさい」
「ありがとうございます…」
「行くわよ、魔理沙、美琴!」
「あぁ!」
「うん…!」
一筋縄ではいかない相手、そんなやつが中にいる…美琴は覚悟を決め、霊夢と魔理沙と共に紅魔館へ足を踏み入れた。
東方妖陽録第弐話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。はい、初の戦闘描写(?)がありましたが、やっぱり雑な感じがするんですよね…精進せねば…!
美琴が使用する武器は鎌です。あるゲームに影響を受けているので、鎌をぶん投げたりすることも今後あるかもです。鎌の刃に炎を宿し威力を上げる等、炎の妖怪らしい戦い方もしますよ。
また、美琴は炎の妖怪なので水に浸かるとかなり弱体化してしまいます。だから深い湖や川が苦手です。ちなみに、水に浸かり続けると死ぬ、という訳では無いのでお風呂は普通に入れます(謎情報)
次回、紅魔館内部を探索します。どうやらレミリアが異変の影響を受けたようで…無事に止める事が出来るのか…
次回もよろしくお願いします〜