第五話「あと三日」
お嬢様が就寝後、水田に呼ばれリビングへ向かった。
「とうとう大物、掴んだぜ」
「城で入手した極秘情報によれば…アイツら、次はこの村を狙ってやがるみたいだ」
水田が資料の様なものを持ち出しながら話し始めた。
「この村の住人以外にもシルヴァを疑ってる人達がいた。その疑いを完全に無くす為にここを選んだみたいだ」
「マスターが居なくなった事はこの村の人間以外は知らないようだった。おまけにここの住人は全員マスターの味方だから、村人達に何か行動される前にここを潰すことにしたんだろう」
ここをターゲットにすれば元主が自分達のした事を隠蔽するために、この村を潰したと思わせる事が出来るからだろう。
シルヴァは自分達の疑いを完全に消すために、元主達に更なる罪を着せようとしているらしい。
「それともう一つ、聞いた話がある」
「これはネージュフールの近くを通った旅人から聞いたんだが、シルヴァの連中がぞろぞろとネージュフールの中に入っていくのを見かけたらしい」
「あの村は完全に壊されたと思っていたが、本当はまだ潰れちゃいなかったんだ。
中で何かが行われ続けているんだ。」
「村の結界を解く方法はあるはずだ。俺が必ず見つけ出してやる。」
そういい、水田は持っていた資料をギュッと握りしめた。
そして一呼吸置き、話し出す。
「マスターももしかしたら…ネージュフールにいるかもしれない」
「城の兵士共が捕まえた奴等の何人かをネージュフールに連れて行く様なことを話していた。」
「実際、城の牢屋の中にはマスター達はいなかった…」
「城にも侵入したのか。大丈夫だったのか?」
「大丈夫じゃなかったらここにはいねえ。変な心配するんじゃねえよ。」
得意気な顔をし、水田が更に話を続けた。
「アイツら、儀式の為に一体どのくらいの人を犠牲にする気なんだ」
「魔神の復活なんて神様が許しても俺が許さねえ。」
「この村を潰すのもさせねえ。俺が絶対に止めてやる。」
「でもどうするんだ。お嬢様は両親との約束を守ってずっとこの屋敷でお留守番中だ。
連れ出すなんて到底出来そうにないぞ。」
「まさかお前…一人で行く気なのか?」
「そういうお前はどうするんだよ。村が潰れるを黙って見てる気か?」
「私も村を破壊されるのはごめんだが…お嬢様に従うのみだ。お嬢様と最期まで一緒に過ごすつもりだ…」
「…そうか」
元主に助けられ、恩がある以上、お嬢様を置いてここを離れるわけにはいかなかった。
「俺だってマスターに恩がある…でもこの村が潰されるのを見ているだけなんて…我慢ならねえよ…」
こいつも元主に執事として雇われた身であった。
私と同様に元主に忠誠を誓っているのだ。
「三日後の夜、俺はこの村を出る。お前ももう一度考えておいてくれ。」
そう言い放ち、水田は部屋から出ようとする。
「お前の気持ちもわかるが私の心は変わらないよ…すまないな…水田…」
水田の去り際にそう声をかけたが、それが彼に届いていたかは分からない。