08.お金に目が眩んだわけではない
…定住して早1ヶ月。掃除も終わり、家具も揃い、日用品も商品もある程度揃えた。だけど足りないものがあるっ…!それはお金!この1ヶ月とにかく身の回りを整えるのに追われ出費、出費、出費の嵐!!
あぁ…どうしようかなー、立地のせいもあるけどお客さん来ないしなぁ…。仕方ない、ギルドで単価の良い依頼受けよう!
《街から人が消える!》そんな見出しの依頼書を見つけた。この街から馬で半日行ったところに集落が1つある、そこの人々が消えたらしい。人為的なのか魔物の仕業なのかも分からないため、調査兼捜索をするのが依頼内容。えっと、報酬は…うっそ、金貨15枚!?……お金に目が眩んだわけじゃないよ!ただね、生活するにはお金がいるんだよね!
__________..........
勢いに任せてきたけど、本当にこの集落??人いなさすぎじゃない??
「んあ、何やあんた旅人かい。はよ出てった方がええで、ここは呪われちょる」
「そうなんですか…少し体調崩してて数日休んでいこうと思ったんですが、具体的に何があったんですか?」
話を掻い摘むと2週間くらい前から人が消え始めた。最初に消えたのは林へ食料調達に行った若い衆数人、それを皮切りに女子供、年寄りと消えていくようなった。今や集落の半数いるかいないかぐらいらしい。
ぐるっと集落を見て回ったけどあれだね、ハーメルンだね。集落に残ったのは体の弱い者か、不自由な者、決定打は聞き込みで笛の音がした翌日に人が消えている。とりあえず、笛が聞こえるのを待っててもいいけど、最初に人が消えた林へいこう。
__________..........
えー…何あれ、人攫い?でもこのネレイス神王国って奴隷制度禁止してたよね…。馬車の荷台の中に沢山人が押し込まれてるのは見えてるけど、見張りとか多くない?
「この集落はこれで撤退でいいんだよな?」
「あぁ、使える奴だけ誘き出したからもういい。後はローカストにこいつらを渡すだけだ」
ローカスト…あぁ…軍事、差別主義国で有名なお隣さんか。軍事強化のためにどんな形であれ人手が欲しかったのかな。
何にせよ、集落の人たちを返して貰わなきゃね…目には目をってことで音には音ってことで子守唄と夢を贈ろう。
あれ、歌い終わる前に皆、夢を見に行ったみたい。
やっぱり、魔法って便利だなぁ。こんなことなら幻想系の物語もっと読んでおけばよかったな。あ、集落の人も馬もまとめて寝かし付けちゃった…起こすの大変そう……。
あぁ…馬もがっつり寝ちゃってる…全然起きない。とりあえず、犯人らしき人間は拘束したけど、どうやって運ぼう…。あ、収納出来る魔法ってないのかな。P Cのフォルダみたく任意で仕分け出来るように、まずは実験台を犯人で…出し入れできるか確認しつつ、生き物入れても平気なのか確認してみたけど案外簡単に出来たっぽい。じゃあ、皆入れて帰ろう。
__________..........
集落に連れ去られた人たちを届け、日が暮れた頃には街へ帰ってきた。
「ミラさん、只今戻りました。受注依頼について報告があります」
「お帰りなさい、集落見て帰ってきたんですか?」
「えっと、消えた人たちとその原因見つけて対処してきました」
もう、見慣れてきたミラさんの唖然顔。ローカスト帝国に依頼され人攫いがいた事と使われた魔道具を報告した。そして犯人達をギルドに引き渡した。
「調査、捜索依頼は完了になりますが、他に報告することはないですか?」
「あ、もう1つ報告が…。この子ってどうしたらいいですか?」
収納の中から魔法の眠りから覚めない髪の長い子供をミラさんに見せた。
集落に人々を届けた際に身元確認を行い足りない人がいないか集落の人たちと確認したが、足りないどころか1人多かった。ローブ包まるように蹲っていた私より少し年下であろう子供がいた。集落に身元も分からない者を置いておくのも集落側も困るだろうし、この子も誘拐された子だろうから帰る場所をギルドなら探してくれると思い連れ帰った。
「レティシアさん…この子奴隷です…。おそらく犯人グループの…」