コント:奴隷市場
――ツッコミのナレーション「俺の名前は伊集院カイト、ひょんなことから異世界に飛ばされちまった。でもこの国の王様が異世界なのに大のカープファンで、俺の失敗外国人選手モノマネが気に入られ、専属奴隷をつけてもらえることになった。そして俺は奴隷市場に来たのだが――」
ツッコミ「奴隷なんて本当は良くないんだろうけど、ここは異世界だからな……。せめて可愛い子をつけてもらおう」
ボケ「もし、そこを歩いている思い切り名前負けしてそうな旦那」
ツッコミ「余計なお世話だ!」
ボケ「可愛い女の子や力があって肉体労働が得意な男、故障を理由にキャンプだけ参加して帰国する元メジャーリーガーまで色々な奴隷がいますよ~」
ツッコミ「最後のは奴隷というより泥棒だろ! どれ、見せてくれないか」
ボケ「はいはい。ではこれなるを」
――ボケ、手を広げて何かを見せる仕草
ツッコミ「こんな小さい檻に可哀想に……」
ボケ「まあ中にいるのはチワワなんで、むしろ大きめの檻なのですが」
ツッコミ「ペットショップかよ!」
ボケ「すみません、ただ愛犬を自慢したかったのです。では改めてこちら」
――ボケ、再び手を広げて何かを見せる仕草
ツッコミ「中年の大男がこんな檻に……」
ボケ「ふふ、どうですか、この男は?」
ツッコミ「ていうか正直男は興味ないかな。俺はもっと報われない女の子を助けてあげたいんだ」
ボケ「報われないのは同じですよ」
ツッコミ「まあそうなんだけどさ……」
ボケ「ちなみにこの男は私の息子で、小さい頃からこの檻に引きこもっています。どうです、報われないでしょう、親の私が」
ツッコミ「お前のことかよ! こんなおっさんの引きこもりなんかいらんわ!」
ボケ「ふふふ、それではこれはどうです?」
――ボケ、三度手を広げて何かを見せる仕草
ツッコミ「檻の中にいるのは……エルフかよ! しかも超美人だ!」
ボケ「くくく……どうです?」
ツッコミ「……い、いくらするんだ!?」
ボケ「そうですね、敷金礼金無しで月々3万ゴールドといったところですか」
ツッコミ「……は?」
ボケ「ちなみにここに住んでいるエルフのエルフ田さんは、近々引っ越しを考えているので、すぐに空きもでます」
ツッコミ「奴隷じゃなくて檻の方を売ってるのかよ! しかも賃貸だし! お前さっきから奴隷を売る気ないだろ!」
ボケ「そんなことはありません。私は国から認められた奴隷商人ですから。無許可の奴隷商人の店に行ったら、そりゃもうひどいもんですよ」
ツッコミ「もう現時点でかなりひどいと思うが、どうなるんだ?」
ボケ「年端もいかない弱り切った妙に美少女の可哀想な女の子ばかりで、それが二束三文で売られているんです。まあひどい目に遭わされていますから、すぐに懐くでしょうがホントひどいもんですよ」
ツッコミ「俺はそういう子を買いたいんだよ! そういう子を買って『ご主人様♡』とか尊敬の目で見られたいの!」
ボケ「私が言えた義理じゃありませんけど、下衆ですね」
ツッコミ「ここでこういう物読んでる奴なんて大体そうなんだよ! ていうかそういう子がいないなら、もう用はないわ! 無許可の方行ってくる!」
ボケ「ま、待ってください。それでは最後にとっておきの奴隷を。奴隷品評会10年連続金賞かつ、あの有名な奴隷評論家エップスッタイン伯爵が「10年に1度の出来」と言った、最高の奴隷を紹介します!」
ツッコミ「いやだからそういうのじゃなくて、むしろ可哀想な子を養って保護欲を満たし、あわよくばせいよ……なんでもない。もうそれで最後だからな」
ボケ「ではどうぞこれを!」
――ボケ、最後は適当に手を広げて何かを見せる仕草
ツッコミ「……空の檻だけど? まさかまた檻の賃貸とか――」
ボケ「いえ、そうではありません。ここには阿呆には見えない素晴らしい奴隷がいるのです」
ツッコミ「ああ、はいはい、そういう話ね。まさか異世界に来て、裸の王様ごっこに付き合わされるとは思いもしなかったぞ。俺は阿呆だから何も見えません、それじゃあ」
ボケ「ま、待ってください! 本当にいるんです中に入って確かめてみてください!」
ツッコミ「仕方ないな……」
――ツッコミ、檻の中に入る素振りをする
――ボケ、すぐに鍵を閉める素振りをする
ボケ「ははは、馬鹿め! 貴様が今日から奴隷になるのだ!」
――ツッコミ、普通に立ち上がりボケの頭をはたく
ボケ「え、あれ、檻……」
ツッコミ「悪いな、俺頭悪いから檻の方も見えなかったわ」
ボケ「そんな無茶苦茶な……」
――ツッコミ、再びボケの頭をはたく
ボケ「奴隷商売はこりごりだ~。ちゃんちゃん」
ツッコミ「ちゃんちゃんじゃないわ」
――最後ツッコミがもう一度ツッコんででおしまい
――了――