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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

前世の魔女の記憶

作者: 更紗 佳奈

私は今彼女の記憶を見ている。




彼女は森の奥に住んでいた。


不思議の力を持っていた。


森の草木の力で薬草をつくり




人里離れていたからその力を知る人はほとんどいなかった。



ある日それが変わる。


森の中で倒れていた旅人を見つけた。


不思議の力や薬草の力を使い、彼は助かった。


彼は言った。



ソノチカラはすごい、


町には癒してほしい人がたくさんいる、


君の力が必要だ。




彼女はその言葉を信じた。


私に力が誰かのためになるならと


町へやって来た。



彼の紹介もあって


いろんな人が彼女のもとへやってきた。


老若男女問わず彼女の助言や薬を求めるようになった。




彼女は幸せだった。


独りだった私の力をこんなにも必要としてくれる人たちがいる、


それは生きていることを感じさせてくれた。



そのうち、町へと連れ出してくれた彼と


心を通わすようになる。



右も左もわからない彼女を支えてくれた彼を


本当に好きになった。



彼も包み込むように彼女を愛した。



その証のように彼女のお腹に新たな命が宿った。



その命が生まれでることを心待ちにしていた。




そんな折、突然彼女は捕らえられた。


領主によって。


理由は


人々を得体のしれない力でおかしくさせたということらしい。




彼女は混乱した。


人々を悪くするつもりなんてあるわけがないし、


彼女のもとに来てくれた人はみんな彼女に感謝してくれた。



なぜ?


どうして?


考えても理由がわからない。



牢の中で独り、


恐ろしさに震えた。




どのくらいの時間が経っただろうか、


磔にされ処刑されるらしい。



その時は来た。


処刑台の上に立つ。



彼女は絶望した。




町の人たちは口をつぐみ何も言わない。


彼の姿もない。



彼はどこ?


どうして助けてくれないの?


この子はどうなるの?



杭が心臓の前に迫る。




こんなことなら


森から出て来なければよかった。


彼を助けなければよかった。


こんな力なんてよかった。


生まれてこなければよかった。



私の何が悪かったんだろう…



彼女は貫かれた。


そのまま彼女は息絶えた。







この彼女の記憶は走馬灯のように流れる。


本当にあったのかなかったのかは知らない。


ただ今の私に影響していることは確かである。





今、私が彼女の記憶以外のことを補足するなら


彼は彼女を助けなかったのではない


助けられなかったのだ。


助けようとして命を落としたのだ。



町の人たちも本当は彼女を助けたかった。


けれど


彼と同じようになることを恐れた。




処刑されたのも正当な理由などなく


領主は不思議な力で人々の心を掴む彼女が怖かったのだ。



また町医者も自分の客が彼女のもとに向かうことに危機感を覚え


領主の手助けをしていたのだ。




彼女が亡くなったあと、


領主と町医者の悪巧みは露呈する。


そして処罰された。





私は怖かった。


不思議の力を使うことが。


その力で多くの人を救うことが。



「彼女」と同じようになることが。




でも彼女は確かに愛されていた。


彼女も愛していた。


確かなものがそこにあった。



あまりの辛さ、絶望、孤独に覆い隠されていただけで。



今はもう彼女の最期のようになる時代ではない。



恐れることない、今すぐ進んでいいのだ。


本当の力をおもいっきり使っていいのだ。


私が力を使うことは何も悪いことはないのだ。



むしろその力もそのまま受け入れてくれる、


そんな世界。


愛し愛されて広がる世界。




私は進む。私が私であるために。





そのうち「彼」と出会うこともあるかもしれない。


彼女のもとにやってきた人たちとも出会うかもしれない。


そのときは「ありがとう」とそう告げよう。

記憶の昇華のため書き残すことにしました。

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