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変わる世界・変わらない者

作者: リルン

こんにちわ、リルンです。

12作目は短編物です。

今回は不老不死をテーマにした小説になっています。

最古の人類が誕生する前に不老不死が誕生するという設定です。


この小説は実際、学校の部活にて原稿として提出した小説を若干修正した物です。

読みにくいところがあるかもですが……それでも良かったらどうぞ!

 時代は約4億5千万年前に遡る。世界は自然に覆われていた。風が自然をゆらゆらと揺らす。太陽の光が広大な草原に差し込む。その光が一部分に集まると突然、光が一段と輝き出した。そこだけ光に包まれ、中で何が起こっているのかが分からない。光はさらに輝きを増していく。風も光の輝きの増しと共に、強くなっていく。そして――――――――……

 やがて消えた光の先に小さな少女がいた。ボロボロの服を着ているその少女は、ただただ立ち尽くしていた。少女は周りを見渡し、何が起こったのかを理解しようとするが…広大な草原が広がるだけだった。

『お前は不老不死だ』

「!?」

少女は驚いた顔で声が聞こえた方向を見る。そこには大きな木々(自然)があった。

「どういう……こと……?」

『そのままの意味じゃが?』

「私が……不老不死? そんな訳ない」

『光から生まれ、しかも服を着た少女の姿で。そんな人間、いるのか?』

「うぅ……」

『さらに、生まれたばかりなのに、言葉を理解する・話せるとなったらもはや、お前はもう人間じゃない……』

「……!!」

少女は何も言い返せず、立ち尽くすだけだった――――……


 舞台は再び変わる。人が住むようになった世界に1人、少女がいた。少女は、自然世界の時から生存していたと話すが、もちろん誰も信じなかった。少女は具体的に話すものの、少女の姿から“そんなことないだろう„と思われてしまった。

「誰も信じてくれない……。どうして? 真実を言っているだけなのに……」

少女は俯く。少女の姿は自然世界にいた時代と全く変わらなかった。見た目や幼さ・身長も何もかも変わっていなかった。服装が少し変わっただけ。彼女は不老不死だった。

「私は今まで見て来た世界を話しているだけなのに……。どうして皆はそんな変な目で見るの……?」

少女は涙を流す。少女はこうして事実を言う度、馬鹿にされ、翌日も……という毎日を繰り返していた。その度に少女は

「明日、頑張ろう……」

そう自分に言い聞かせたのだった――……


 ある時代のこと。ある所で、少年が生まれた。自然に囲まれ、魚が元気に泳いでいるこの場所で。少女と同じくボロボロの服を着た姿で。これは今から何億も前の話。いつかあの少女の人生を変えていくことになろうとは、この時の少年は知らなかった――……。


 少女はだんだん苛められるようになった。少女自身は、頑張って伝えようとするが、空しく、逆に頭が可笑しいと思われるようになってしまう。少女の心はどんどん壊れていった。そもそも、少女には名前が無かった。さらに名前とは何か。私は何者か。私は本当に頭が可笑しくなってしまっているのか。そのようなことが全く分からなかった。そして、ついに少女は、自然世界について話すのをやめてしまった。何を話しても無駄だと思ったからだ。

「どれだけ話しても、信用されない。寧ろ笑われる……。なら、もういい。自然世界のことは、二度とこの世界の人々に話さないから……」

少女は涙を流しながら、笑った。


 決意してから、少女は一歩も外に出なくなった。森の奥にある隠れ家でひっそりと過ごしていた。口数も急に減った。

「…………」

少女の瞳に光は無かった。まるで、心の……命の無い操り人形のように。一人、ただじっとソファに座っていた。すると、ガサガサと足音が聞こえる。どんどん近付いて来る。そして少女がいる建物の前で、足音は止まった。

「……何?  何か用……?」

少女は無愛想に尋ねる。すると外からは

「……大丈夫?」

と、心配するような声が返ってきた。

「私? 大丈夫に決まってるじゃない!」

「……」

外にいる誰かは黙り込む。

「用が無いなら帰って……。そして、二度と此処には来ないで……」

「――――……欲しいんだ」

「……え?」

「僕は君が言う自然世界についての話を、聞きに来た!!」

「!!」

少女は驚く。

「……ごめん、急だよね……。でも君となら僕、仲良くなれるかもって……」

「……仲良く……?」

「……君は……不老不死だよね……?」

「……え?」

「……実は僕もなんだ。でも生まれたのは君の方がずっと先。僕は魚類が出始めた時に生まれた」

「魚類……そう、私が生まれた時にはいなかった生物……」

「僕、生まれる前の世界について知りたいんだ。……それと僕と友達になってくれないか?」

「!」

「僕と君……不老不死同士、仲良く出来ないかな……」

「……」

少女は黙り込む。信じられないのだ。“きっとこの人も、私をからかって……„と言い切れなかった。外にいる誰かは、騙そうとしている感じがしなかった。魚類が出始める瞬間を見た誰か。少女ももちろんその瞬間を見た。その時の不思議な感じと仲間が出来たという嬉しさが込み上げたのを覚えていた。

「……っ!」

少女は決心したかのように、窓を開けた。

「!!」

そこにいたのは、一人の少年だった。

「あっ……」

少年は少女をずっと見つめる。

「……いい……よ。……その代わり、このことは内緒に……」

「え?」

「……黙ってて欲しい……私と友達になったこと。貴方を苦しめたくないから……」

「!!」

「別に……当然のことでしょ?」

「……うん。ありがとう!」

少年は少女に笑顔を見せる。

「……じゃあ此処、入って。入ったら2階に上がってくるのよ」

そう言うと、少女は窓を閉めた。


 少女が待っていると、やがて息を切らせた少年が上がって来た。

「……何、息切らせてるの……」

「ごめん……はぁ……はぁ……」

苦しそうだ。しばらく経って、少年はようやく落ち着きを取り戻した。

「ごめん、待たせたね……」

「……遅い。私はこんなんで息は切れないのに……」

「……で、自然世界のこと……教えてくれないかな……?」

「名乗りもせず、いきなり本題!? ……まあいいけど……」

「あ、ごめん。でも、僕は名前が無いんだ……」

「!」

「……生まれた時から独りだったからさ……」

「……正直言うと、私もよ」

少女は言うと、自然世界について語り始めた。

「私が生まれたのは、自然で世界が覆い尽くされている時。時間経つごとに輝きが増し、ついに弾けたらしいの。その光が消えた先にいたのが、私だったそうなの。でも、普通なら赤ん坊のはずが少女の姿で生まれたの。しかもボロボロだけど、服も着てた」

少女はまず、少年に自分が生まれた時のことを説明した。

「え……? 本当に? 僕も同じだ。僕も君と同じように、ボロボロな服を着た少年の姿で、この世界に生まれて来たんだ」

少年もそうだと言う。

「! 貴方も!? ……不老不死は同じ生まれ方するのかしら……?」

「僕らは、そのように生まれる生き物なのかもしれない。言うと、僕等は新生物」

「不老不死という、新しい生き物? でも、姿・形は人間だけど……」

「そう、僕らは人間種であるけど、“不老不死„という分類なんだ。きっと……」

どうやら知識(頭の良さ)は、少年の方が上らしい。少女は少し悔し気な顔をした。

「それで、自然は生まれたばかりの私に言ったの。“お前は不老不死だ„と。もちろん、私は自然を疑ったわ。でも、“光から生まれる、しかも服を着た少女の姿で„と言われると、言い返せなかった。本当のことだもの。“さらに生まれたばかりなのに言葉を理解する、話せるとなったらもはや、お前は人間じゃない……„と言われたわ。衝撃を受けたわ……。でも、どこも矛盾してないし……。……? ちょっと待って。何故、自然は人間という生物を知っていたの? あの時代にいなかったはずじゃ……」

「……確かに気になるね。その自然は未来を見ることが出来た訳でも……」

少女と少年は考える。すると、飽きたように

「……そうだ!! その自然に会いに行こう!!」

と、少女は突如言う。

「え!? でも場所は――」

「分かる」

「いや、食料は――」

「ある」

「……じゃあ、寝る場所――」

「そんなの、何処でも寝れるわよ」

「……」

と、しばしば続く言い合い。すると……

「おい! この建物に誰かいるぞ!」

「まさか……“あの少女„?」

「きっとそうだぜ! こんな所にいやがって……」

外から複数の男の声がする。

「……やばいなー……」

慌てる少年に対して、少女はずっと冷静だった。

「行くよ」

「え? 何処に……」

「言ったでしょ? あの場所に――――」


少女と少年は、生まれた時代にあった自然に会いに行く旅に出た。少女は少年を連れ、歩く。少年は少女についていった。しかし、少年は別のことを考えているよう。

「ねぇ……」

「何?」

「お互い呼ぶために、名前付けようよ」

「……は?」

「駄目……かな?」

「そんな呼び合うことってないでしょ?」

「あるよ。ほら、今みたいに話す時に、『貴方』とか『君』とかって可笑しいじゃん」

「……」

少女は立ち止まる。少女に合わせて少年も止まる。

「……? どうしたの?」

「……貴方のこと、『レイ』でいい……?」

「! いいよ。君は……『レイラ』ね!!」

「レイラ……好きにすれば……?」

「うん。ありがと、レイラ」

「別に……なかなかでしょ? 『レイ』」

少女……レイラは少年レイに向けて、無邪気な笑顔を出す。

「あ……」

レイは初めてのレイラ笑顔につい、見惚れてしまう。その様子に気付いたレイラは

「……何よ」

と、少し機嫌を悪くした。

「あ、ごめん。何でもない。行こうか」

「……」

レイラは無言で肯定し、再び歩き始める。

「……レイラ、自然に言われた後、どうしたんだ?」

「……しばらく立ち尽くしていたわ……。信じられないもの。そして、歩き出した。生まれてきた世界を見るために。本当に自然がいっぱいだったわ。でもだんだん、自然を見る度に不安になった。これから先、何も食べずに生きていけるのかと。歩いていたら、運がいいことに実が生っているのを見つけて……私は、その実と水で飢えを凌いでいたわ」

「そうなんだ……。僕よりは大変だったよね……」

「そうでもなかったわよ? だって、自然以外何もないって言ったでしょ? だから、草原の上で生活しても大丈夫なの。草原はとても綺麗で気持ち良かったし、空気も美味しかったもの。……まぁ、雨の時は仕方なく森深くの洞窟に入って生活したけど……」

「……! 洞窟!?」

「? 何?」

「僕、多分その洞窟で生活してたと思う……」

「!?」

「思い出した!! 僕、レイラを見たことあるよ」

「へ!?」

「確か……僕よりは深くまで入らずに入口の近くで座ってた。髪が長く伸びていて……そう、ボロボロの服も着てた……!!」

「! ……そうだったの……」

「でも、あの日からは会わなくなった。雨の日、ずっとその洞窟でレイラを待ってた。でも、レイラは来なかった……」

「……つまり、今回のことでレイは、あの時にいた少女……私と再会したのね……?」

「……そういうことになるね」

レイラとレイは歩きながら話していた。しばらく歩いていると、いつの間にか夜になっていた。

「もう夜か……」

「……じゃあ、今日はここまでね。此処で寝ましょう」

レイラはそう言うと、背負っていたバッグからシートと布を出す。

「明日も歩くから、早めに寝る」

そう言って、レイラは布をガバッと着て、横向きになった。

「……うん。お休み、レイラ」

レイもレイラと同じように布を着る。


 結構な時間が経った。しかし、レイは寝られずにいた。

「……起きてる? レイラ」

レイはそう尋ねてみる。しかし返答がない。

「寝てるのか……ごめん」

そう言うと、レイは一人でそっと起き上がり、夜空を見る。

「綺麗だね……。君とこうしていたあの時も同じように、綺麗だったよね……。㏠だけだけど、それでも僕にとっては君が初めての人類だったんだ……。あの出会いから、随分時間は経ってしまった。でも、やっと会えた……。再会出来た……。後ろ姿しか見てないけどそれでも分かる。あの頃に比べて君は……強くなってる……。……レイラ」

そう呟いて、レイは横になると、眠りに落ちた。それを影で聞いていたレイラは、驚きを隠し切れない様子でいた。

「レ……イ?」


 翌日、起きると雲一つもなく、いい天気だった。隣からの激しい息遣いに気付き、レイラを見ると、苦しそうに息をする――――

「!? レイラ……!?」


 レイはレイラを看病した。だが、レイラは治るどころか、酷くなっていった。

「……レイラ」

レイは心配気にレイラに触れようとすると、レイラは弱々しく……でも精一杯の力でレイの手を払い、言った。

「……レ……イ。私を置いて、自然の所に……行きなさい」

「そんな……置いて行けないよ……」

「早く行けっ! じゃないと、進めないでしょ……!!」

「……」

レイはレイラの行動を思い出す。あれからずっと休んでいなかったのだ。あの時に休むように言っていれば……。レイラに尋ねなければ……。自然世界について教えてもらいに行かなければ……。レイラと再会しなければ……。“あの時、レイラに会わなければ……!!„レイは気が付くと、レイラを背負って涙を流しながら自然の所に向かっていた。“会わなければ良かった? なら僕はそれの責任を取ればいいじゃないか。„

 レイはレイラを背負って走っていた。レイラの激しい息遣いがレイの肩に伝わる。

「レイラ……。もう少し頑張れ……。自然に着けば……何とかなる……!!」

そうは言うものの、レイはレイラの言っていた自然の場所が分からない。

「とりあえず、僕がかつて、生活していた洞窟の所まで行ってみるか」

レイはレイラが洞窟にいたことを思い出し、そこに行ってみることにした。


 あれからどのくらい時間が経ったのだろうか? 走っていても、一向に自然らしい大きな木々が見えない。同じ風景ばかり視界に入るように見える。

「……っ! くそ、まだか……」

レイが走っているうちにレイラはほんの少しずつだが、回復してきたようだ。今はもう、あの時のような激しい息遣いは聞こえない。レイラの安らかな寝息にレイは少し安心させられた。

「レイラ……もうちょっと休憩して……元気になれよ……」

そう言っていると、いつしかレイが生活していた、洞窟が見えてきた。

「あ……洞窟だ……! 今日は此処で休むか……」

いつの間にか、また夜になっていた。

「……レイラ、もう少しだよ。もう少しで僕らは……」

レイはそう言いかけるがやめた。そっとレイラを寝かし、レイもシートと布を用意する。洞窟の暗さと夜の静寂がレイ達を包む。

「……此処で初めて、僕は君と会った……。一夜だけだけど、一緒に過ごした。……君はずっと独りで頑張って来た。僕も独りで過ごした。でも、君は頑張り過ぎた。君は独りで何でも抱え込んで……。あの時も君もそうだった。独りで考え、行動して……でも、それを周りの人間は笑った。……強くなったようで、君は変わってない。あの時の小さな体の少女のまま……」

何回も訪れる夜。何回も輝く夜空。もう見慣れたはずなのに、何回も見てしまうレイ。レイラと旅に出る前、レイは夜空しか見て来なかったのだ。レイはそっとレイラを見た。幼く小さな体で息をするレイラに、レイは何故か僅かに、心を痛める。

「いつ見ても、夜空は輝いたまま……。僕らもあの星みたいに輝けたら――――……」


 朝。レイはレイラを背負い、洞窟を出ようとすると……

「……レイ」

「!! レイラ? どうした?」

「もう歩ける。無理に背負ってくれなくていい……」

「で……でも――」

「歩けるって言ってるでしょ!!」

レイラは少し声を荒げた。レイはそれにビクッとし、はぁ…と溜め息を吐いて

「……分かった。少しは元気になった?」

そう言って、レイラをゆっくり下ろす。

「ええ。おかげ様で。よいしょ……と。……ん? レイ、だいぶ進んだわね……」

「……? あ、うん。レイラが早く良くなるようにって、自然の所まで走ってたからね。結構しんどかったよ……」

「……そう……。やるじゃない。此処まで来れば、自然の所まで、あと少しよ」

「うん」

「行きましょ」

レイラは歩き出す。レイはその後ろをついていった。無言状態が続いた。レイは話し掛けようとしかが、やめた。それでまた、レイラに体調を崩されたら……と思うとぞっとした。レイラは時々、振り向いてレイが来ているか確かめた。レイラもこの状況を理解し、あえてレイに声を掛けなかった。しばらくすると、大きな自然(木々)が出てきた。

「その先よ。自然があった場所」

「! やっとか!!」

レイはつい、大声を出す。

『うるさいのう……誰だ?』

頭に直接、声が響く。

「!!」

レイはびっくりし、自然(木々)を見上げる。

「お久しぶりです、自然様」

レイラは自然(木々)に会釈する。

『そなた……』

「何億年……いや、もっとですよね」

『ああ……あの時の不老不死か……』

「はい!」

『久しいのう。ふむ、そなたの隣にいる者も、不老不死じゃな?』

「!! 分かるのですか!?」

と、ついレイはまた大声を出す。

『……この不老不死はさっきからうるさい。静かに出来んか……?』

「あ、すみません。この不老不死……レイは自然と話したことなくて……」

レイラはそう言った後、ついでに横目でレイを睨んでおいた。

『ふむ……聞きたいことがあるのか?』

「あ、分かりました? 実は質問があって……此処に来ました」

『ほう……何かのう?』

「はい、早速本題ですが……貴方は私が生まれた時、私のことを“人間じゃない„とおっしゃいましたね?」

『そういえば言ったのう』

「あの時代、この世界に人間という生物はいなかったのに、どうして人間のことを知っておられたのですか?」

『! ……それは……』

「確か最古の人類……猿人は今から約400万年前にしかいなかったはずです。私達は約4億年前。ありえない話です」

『……』

「……やはり何か御存知なのですね。教えて下さい!!」

「僕からも、お願いします」

レイが言うと、レイラは小声で“レイ……„と呟くも、すぐに自然の方に目を戻す。

「お願いします」

レイラは必死に頼む。すると自然(木々)は笑う。

『……ほっほっほ……君には嘘は吐けないなぁ……』

「!」

「教えて下さるのですね!? ありがとうございます!!」

『……ただし、条件がある』

「……?」

「何でしょうか?」

『……そなたらは多分、長くは持たん。そして、この話を聞くと同時に死ぬ』

「!? だが、僕らは不老不死のはず……」

『2人共、覚えておくと良い。不老不死にもいつか……死ぬ時が来る……と』


 2人の不老不死は、自然に会うことが出来た。が、そこで知らされたのは、自分達の命が長くないこと。衝撃を受けるも、それがどういうことか2人は分からなかった。少なくとも、自然の話を聞いた後、死に至ることだけ分かった。

「私達……どうして長くないのですか……?」

レイラは自然に尋ねる。死の恐怖のせいか、レイラの声は震えていた。

『いつも通り、感じゃよ、感。だが、根拠となったのは……そなたらの命の火……まぁ、言うに鼓動が小さいからじゃ』

「命の……鼓動?」

「……? 自然様、それは一体……?」

『人間で言えば“心臓„じゃ。人間は心臓という物を動かして生きている。そして心臓が止まる時……つまり約100年経った時、大概の人間は死ぬ。それと同じことじゃ』

「……?」

レイラは理解出来なかった。やはり死と不老不死、矛盾して結びつかないのだ。

「……つまり僕らは人間種だから、不老不死でも命の火が弱まると、死に近付く……ということですか?」

『その通りだ、不老不死の少年よ。君はなかなか、読み込みが早いな。優秀じゃ』

「そうでもないですよ。……もう褒められても、死ぬことには間違いありませんし……」

『それもそうじゃな。……実はな、そなたら以外にも昔に誕生した不老不死がいたのじゃ』

「え……!?」

「!!」

つい、レイラは顔を上げる。

『……まぁ、そなたが驚くのも変じゃない。誰にも話していないことじゃからな。……じゃがな、その不老不死は“誕生した„と言うと嘘になる。詳しく言うと、そいつらは未来からやって来た者なのじゃ』

「!?」

「……未来……」

『そなたらと同じく、突然、光に包まれ弾けた時、不老不死がこの世界に来たのじゃ。そいつらは、わしに色々な話をした。これから未来で起きることや、不老不死のことも。……じゃが、そいつらは仲間と出会えず、そのストレスが原因で死んでしまったのじゃ……』

「……自然様が言うには、その未来からやって来た不老不死が未来のことについて話したことで、人間のことを知ったということですか?」

『ふむ』

「……レイラ。君はこの世界をどう思う……?」


 自然に答えを聞いた2人。未来から来た不老不死が未来について話したことで、自然は人間のことを知ったのだという。だが、レイは自分の死を覚悟している様子であった。その様子にレイラは不思議そうに首を傾げる。

「? レイ、いきなり……」

「どう思っている?」

レイの真剣さに、レイラは驚く。慌てて答えを探すレイラ。

「……僕はこの世界に生まれて幸せだったと思う」

「!?」

「……確かに、最初は残酷だなと思った。食料はあまり無くて、友達を作ろうとしても上手くいかなく、大人にも碌に相手にしてもらえなかった……。僕は、日の終わりに夜空を眺めて過ごす毎日だったからね……。レイラに再会する前……まではね。レイラと再会してから僕は人生が明るくなった気がするんだ。……死ぬタイミングは悪いけどね……。君に出会えて良かった……」

「……!」

レイラはレイの言動で初めて“本当に死ぬんだ……„と自覚した。どんどん体が重くなっていく――――……

「レイ、私は貴方の思いを聞くまで、この世界のこと無駄だと思っていたわ……。貴方との思い出より、1人で過ごしていた……人間に苛められていた……馬鹿にされた時のことの方が印象深くて……」

「……レイラ」

その時レイラは顔を上げ、レイに向けて微笑みを浮かべる。涙を流して。ただまっすぐにレイを見ていた。この時になってレイは今までで一番綺麗なレイラを見たと、ドキッとしていた。だが、これが最期の笑みになると思うと、悲しくなったのか、レイは涙を零した。その様子にレイラも、涙を流しながらこう続けた。

「でも、貴方の意見で変わった。世界は無駄なんかじゃなかった。レイという本当の仲間が出来て、幸せだった。……こんな私が言うの、違和感があるよね……! でも、最期だから……言わせて欲しかったの」

「……。レイラ。僕も同じだ」

「……やっぱり、私達は違うようで同じなんだね」

「……レイラ……」

「レイが付けてくれた名前『レイラ』、気に入った」

「今更か……。……ははっ、レイラらしいなぁ……」

「やっぱり自分らしさよ。うん。さっきの発言、私らしくなかったから」

「……うん。そうだね」

『……最期の話は終えたか……?』

「え……」

『こうして話が出来ているのは、わしが生命を長くしているからなんじゃ』

「僕らの話が終わると……」

『そう、死に至る。2人共な……』

「自然様、私達は……生まれ変わるのでしょうか……?」

『……』

「僕らはもう……消滅するのでしょうか……?」

『……それは、君ら次第じゃ』

自然はついに力を抜いた。それと同時にレイとレイラの力も抜ける。

「……僕らに……残された時間は……?」

『長くても1時間だ』

「……生まれ変われるとしたら……記憶は……」

『もちろん、なくなる』

「……レイ。貴方と出会えて良かった」

「僕もだよ、レイラ」

「……レイ、ありがとう……」

レイラの笑顔が少しずつ、薄れていく。レイの意識も遠ざかっていく……。心地良さにレイは目を閉じた――……。世界は途切れた。


 此処は何処? 真っ白な世界。僕らを包んでいた自然、綺麗に流れる川も消えていた。もちろん、僕の大切な大切な――――……


“あの人„もいない。


僕もいない。


人間も、動物達も。


何もかもが無かった。これが「死」なのか……。不思議な感じだ。そういえば“あの人„とは誰だったか……。思い出せない。“あの人„と一緒に、一生を終えた。お互い、笑い合いながらただ、いつか生まれ変わって、再会することを願って――……。……ん? この記憶は何だろう? 僕は何も覚えてないはずなのに。何故“あの人„のことをよく知っているのか? 誰か教えて下さい――……


 此処は何処か? 真っ黒な世界。自然様が消え、周りの景色も消え、私達も人間もいなくなった。急に私の前に現れ、私をいつも呆れさせた――――……


“あいつ„もいなくなった。


私もいなくなった。


消えた。


何もかもが。


これが「死」なのだろうか? なのに、やたらと疑問だ。……だが“あいつ„とは誰だ? 何で分からん奴なのに“あいつ„とやらを知っているのか……?


“貴方は誰ですか?„


その声に振り向くと、1人の少年。あぁ、どこか懐かしいな……。確か私の生前も……ん? 何だ、この記憶は? 何だ、何だ、何だ? すると尋ねたその少年は私に――――……


“ようやく出会えたね、『レイラ』„


――――――――――――――!!



 目が覚めるとそこは自然でいっぱいだった。ただただ、立ち尽くす私に

『お前は不老不死だ』

そっと呟かれたその言葉は私の耳に届いた。私は気付く。私が生まれ変わったことにより、世界は“ほぼ„振り出しに戻り、“再び„始まったと。そしてこれは、私が生まれた時の出来事だと。

「久しいですね、自然様」

『!!』

「記憶、思い出したんです。自然様の言う通り、確かに一時は無くなりました。でも“あいつ„が来てくれたから……」

『   』

「「もう記憶は取らせない!!」」

私達は互いの顔を見て、そして呟く。

「……レイ」

「レイラ……」

再び出会った私達。再び巡り合えた僕ら。似てるようで違う私達。でも、違うようで同じな僕ら。


――――もう離れてたまるか。


離れるようで離れない私達だから。


姿や形が違っても、同じな僕らだから。


私達はこれからも生きていく。


僕らはこの先もこの世界を見ていく。


何があろうと


何が起ころうと


2人でいればきっと乗り越えられる。


人間になるに不完全な不老不死(私達)


人間になるに不安定すぎる不老不死(僕ら)


でもこれでいい。


これがいい。


私達は(僕らは)生まれ変わったことによって得た


この体を


動かしていく――……



 ある時代。ある所に2つの存在があった。舞台は自然に包まれている世界。自然以外何も無い世界。人間のいない世界で、そのとても仲の良い2つの存在は手を繋いで歩いていた。1つの存在は少女の姿。もう1つの存在は少年の姿。2人は人間の姿ではあるが、人間ではなかった。人間種に含まれる新生物、不老不死だった。2人は人間に見つからない、2人だけの世界を目指した。目的は1つ。2人で人間のいない世界で、この世界の成り行きを見守っていこうと。

「この世界を見守るなんて、出来るのかな……?」

1人の少女は少年に尋ねる。

「出来るさ。君と2人なら」

少年は少女の手を強く握る。少年は少女が不安である理由を知っていた。少年自身も不安であった。お互いの不安を感じて、少年は少女の手を握ったのだ。その様子に、少女もほっとしたのか、少年に向かって微笑み、そして少女はそっと握り返し

「そうだね。貴方と一緒なら何でも出来る。貴方と2人なら」

と言った。少年も少女に微笑み返し、前を向いた。

「行こう。僕らの世界はまだ先だよ」

「うん。行こう!」

2人は歩く。2人の不老不死は強く手を握り合った。新たな世界に行くために、2人は歩く。2人だけの……誰にも邪魔されない世界へ。2つの存在は、霧の中へと消えていった――――……。


 ――――これは今から何億も前の誰も知らない懐かしい話。……2人の……2つの存在の行方を知る者は……誰もいない――――――――…………


―終―

○自然様は不老不死に何をしたのか?

不老不死は実際には死なないが、命の火を弱くなることがあり、弱くなりすぎると不老不死は気絶する。それを利用して、自然様は不老不死が気絶している間に、記憶を抜き取っていた。そして、不老不死は生まれた時代まで戻される。しかし、今回はレイとレイラのお互いを思う気持ちが強すぎたため、記憶を奪うことに失敗。理由は不明だが、未来を知っていたことがバレたことを無かったことにしたかったためだろうと予測される。ちなみに真っ白な世界や真っ黒な世界は、レイやレイラの記憶世界。そして必死に思い出そうとして、奇跡的に2人が再会したのだろう。


○不老不死が死ぬという話は本当か?

この小説上では、死なないという設定であり、自然様が話したことは嘘になる。だが、これはあくまで私の考えだが、不老不死でも完全と不完全がある。完全な不老不死は死ぬことがない。不完全な不老不死は死ににくいというだけで、首を取られると死に至る。結論を言うと、完全か不完全かで死ぬか死なないかが分かる。が、完全と不完全の見分け方は不明。

レイとレイラは死んだようになっているが、実は気絶し、記憶が一部無くしている状態になっただけ。


○レイラとレイは結局……?

2人はこれからも生き続けるということで、影から世界の成り行きを見守っていこう…とのこと。だから世界を見守りつつ、2人だけでいれる世界へ旅立った…よう。それから2人の姿を見た者はいない…つまり、無事、世界に着いたのかもしれない。もしかしたら…今も2人が私達の世界を見守っているかもしれませんよ……?


分かりにくいかもですが、少し説明を入れさせて頂きました。

…という訳で、いかがだったでしょうか?

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!

不老不死の話でしたが……いいですよね、不老不死。

不老不死は存在するのなら、私もなってみたい物です。

これを書きながら考えてました。

不老不死はどうやって生まれるのだろうと。

生まれた時から、大人の姿なのか…とか。

考えると凄く想像が広がっていいですよね…。

あまり長くなってもアレなのでこのへんで。

皆さんも不老不死について、色々考えてみて下さいね!


最後になりますが、この小説に関わった全ての方に感謝しつつ、後書きとさせて頂きます。

ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました!!

また他の作品でも御会いできると嬉しいです。

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