[三周目] 三人目
「君もここに慣れて来たと思うがどうだ?」
「はい、おかげさまで…」
いや、慣れたと言うよりカマ姐の話を一日中聞くだけの仕事に覚える事が何も無いだけだった。
まぁそれだけで給料が貰えるのはありがたい。
「それはよかった。君にはまだここが何の会社か説明していなかったね。」
「はい、まだ何も聞かされていません。」
ようやく俺が今までで、一番知りたかった事が明かされるようだ。そんな事も知らぬままここまでやってきた俺自身も普通ではないと自覚している。
「我社は解体業者なんだ。たが壊すのは建物じゃなく人と人との繋がりだ。例えて言うなら、友達のAさんが悪質な宗教に付きまとわれて抜け出せないから助けてくれ。とBさんが依頼してきたとする。報酬額によって解体対象が変わる。」
「対象が変わるとはどう言う事なんですか?」
「あぁ、プラン1はAさんと宗教の繋がりを壊す。プラン2は宗教そのものを崩壊させる。もちろんプラン2はプラン1より料金は高い。」
「あの、ちなみにプラン1とプラン2ではどれほど金額に差があるんですか?」
「そうだな〜二百万くらいの差はあるな。」
社長の話によると活動資金やら人件費やらでどうしても値段が高くなるそうだ。何しろ相手があいてなら命に関わると言っても過言ではない。悪く言えばこの会社は依頼で動く詐欺師の集団なのだ。
「今日は君の初仕事として私と共に依頼主の所へ商談に来てもらう。」
「は、はい。あの、依頼主の方はどんな方なんですか?」
「そんなに緊張しなくてもいい。」
そう言って彼女は微笑んだ。
「今回は十代の娘を持つ母親からの依頼だ。なんでも不良連中とつるみだして本人も抜け出せない状況にあるらしい。」
「な、なるほど。それで依頼主さんの希望はプラン1と2、どちらなんですか?」
「プラン2だそうだ。まぁ、まだ決まったことではないし、それを決めに今から商談に行くんだ。」
俺は彼女と二人で依頼主のもとに行く事になった。