[二周目] 三人目 (名前はまだない)
扉のむこうには社長椅子に深く腰掛け、こちらに鋭い視線を向けてくるスーツ姿の女がいた。彼女はいわゆる美人と言われる部類の女で、この『ハイレグ熱帯魚☆エブリデイビビンバ』の社長であるようだ。この女社長とカマ姐が並ぶ姿はまるで美女と野獣である。俺はこの女社長との対面で未だに話ひとつすら聞いていないこの会社への不安が何処か少し薄れていった。
「とりあえずそこに座りたまえ。」
「あ、はい。失礼します。」
我に返った俺はまだ何も解決していないことを思い出した。
「ところで君はここえ何しに来た?何が目的なんだ?」
「は?」
何が起こっているのか理解できなかった。求人募集の貼り紙を貼っている最中に人が訪れたのだから普通そんな事を聞かなくても分かるはずだ。途端に何処かえ行きかけていた不安が何倍もの勢力を増して戻って来た時には不安は恐怖へと変わっていた。
「あ、あの…私はその…ハイレグ熱帯魚☆エブリデイビビンバの求人募集の貼り紙を見てここえ来たのですが…」
「なんだそのふざけた名前の会社は!!」
女社長のその言葉に唖然とした。
「ごめんね〜。人手不足でどーしても新人が欲しかったのよ。最近の若い子たちは皆んな経験が浅いから死んじゃったり、逃げ出したりして随分と従業員が減っちゃったのよね〜。」
俺はこのオカマの話が途中から聞き取れなかった。いや、聞きたくなかったから聞こえなかったように自分に嘘をついていた。
「お前はまた勝手なことをしたのか!」
女社長が怒鳴る。
「別にいいじゃない。」
全く気にしていないオカマ
「ここを知られている以上このまま返す訳にもいかないだろう!!」
オカマと女社長は口論を続けている。俺はショックのあまり倒れた。
気が付くと女社長とオカマが笑ってこちらを見ている。怒りがこみ上げて来た矢先に見えたのは『ドッキリ大成功』のプラカードだった。
「いやー悪かったね。面接時に新人をからかうのは私の趣味でね。」
女社長は笑いながら喋る。
「ほ〜らね。性格に難があるでしょ。」
続けてカマ姐が喋る
「あなたがた二人ともお人が悪いですよ。」
俺はよく分からない涙を流していた。
「まあそう言うな。君は合格だ。明日から君はここの社員だ。」