『最終確認』
お久しぶりです。
次の話からもうちょい動くと思うんでよろしくお願いします!
家を出て伊織との待ち合わせ場所へと向かう。心の中ではこの後学校に行った時に『彼』になんと言おうかそれだけを考えていた。そのせいだろうかいつの間にかすぐそこにいた陰を見つけられなかったのは。
俺ははっとして隣を見る。そこにいたのはほかの誰でもない、『彼女』━伊織だった。
「よっ隼人!」
なんて明るいんだろう……って当然か。伊織の中ではまだ『日常』の世界なんだもんなぁ。
「隼人?どうしたの?そんな暗い顔して、なんか悩みでもあんのー?」
伊織はそうやって俺を見つめてくる。俺は目の前の彼女を見てあの時の決断を思い出す。そう、彼女は守らねばならない、傷つけてはならないなぜなら俺の好きな人だから。
それなら俺が彼女の不安を煽ってはいけないのだろう。そう思い俺はいつもと変わらない自分を演じるため強めに息を吐く。
「おっ、いたのかお前。気づかなかったわチビだから。」
「っ!隼人ぉぉぉぉ」
そうやって彼女は背伸びをして俺の頬をつまんでくる。
「んだよ、やめろよっ」
これで日常の完成だ。少し満足をしてると学校が近づいてくる。まず朝一番で『彼』に会わねばならない。
学校へ足を踏み入れ俺は彼女に用事があると言って人気の少ない後者の裏にまわって『彼』にメールを送る。
「『準備完了』っと」
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「ふぁ~、朝早いよ。マジで、サッカー部ブラックすぎ。眠。」
『彼』の出勤だ。俺がメールを打って5分くらいで『彼』はやってきた。まあ家が近いらしいしメールが来てから学校へ向かったのだろう。
「ってそんなことはどうでもいいんだよ。こんな朝早く呼び出させてなんもないってことはないだろ?」
俺は『彼』にそう言う。元はと言えば『彼』が明日朝早くに学校へ来いと言ったのだ。何も無いということはないだろう。
「あっ、そうだったけ?まあそうか、そうそうそうだったわ。あはは……」
世間話をする程度の態度で話す『彼』だが何か恐い。ウサギ小屋で見たようなそんな笑みをまた今見ている。
「で?決まった?誰か守りたい人、一 人 ?」
ゾクッと背中が凍るようなそんな笑み。俺は怖気付くことなく勇気を振り絞り答える。
「深山伊織、俺は深山伊織を守りたい。……これでいいか?」
なんとか喉から声が出たような感じだ。声は掠れかけで怖気付いているのが傍目にもわかるくらい。
『彼』がそんなことに気づかないはずがなく……
「はははっ、面白いね。恐い?恐い?恐いんだよねー?もう強がりすぎなんだよ?まっまあいいよ。深山伊織な。なんとなく察しはついてたお前の『彼女』さんだもんねーあっははっは……ホント笑える。」
『彼』はすべて見透かしているのだろうか、ただそんなことはどうでもよくて今はただ『彼女』を守る事の一ステップを踏んだことの方が俺にとっては大事だった。
「それは守ってくれるよな?」
『彼』への最終確認。
「ああ、守るとも。神に誓ってね」
よし、彼女は傷つけない。
俺が傷つくだけで済むならいいんだ。どこまでだって堕ちてやる。