せなか
ふと
誰かの背中を見てみたくなる
水に濡れた背中の色
粒の乗った背中の色
ほんのり赤く
わずかに黒く
赤い線を引いたように
毛羽立ったバスタオル
まるで花が咲いたような
白い入浴剤の跡
曇った鏡の向こう
僕は、背中を見ているだけ
誰だって
広い背中
狭い背中
綺麗な背中
汚い背中
眺めるのは自由
触れるのは不自由
流すのはシャワー
拭き取るのは
冬の空気
ざわっと
下から
上へ
滴が
昇って
思わず突き飛ばした
君の背中は
二歩先を行って
僕の手が、届かない
ありがとうございました。