能力者・ナツと愉快な妹たち~4~
「オト……」
「なに?」
オトの手がゆっくりと母さん…カホの頭の上で動く。
カホが気持ちよさそげに目を閉じている。
オトの意外な属性に俺は驚いた、普段の学園生活とはかけ離れすぎているオトの行動に少し引き気味だ。
いつものオトなら『なに、クヨクヨしてんのさ! アハハハ!』と、こんな感じで相手の頭を軽くはたくはずだ。
それが、ものすごく優しく撫でているのだ。
「おまえ、慣れてるな」
「うーん。なんでだろうね」
そういえば…オトには実の妹がいると聞いたことがある。
妹をかわいがるあまり、両親から何度も注意されたという話だ。
どうりで撫で方が尋常じゃない。
あの手の開き具合、手首の角度、腕を動かすタイミング。
すべてが完璧だ。
生まれてこの方、人の頭なんて撫でたことがない俺でもわかる。
「カホちゃん、泣かないの」
「うっ」
まるで本当の姉妹の姿がそこにあった。
「カホのことを任せる」
「え?」
俺はオトにカホを任せ素早く靴を脱ぎ、足早に台所へむかう。
これ以上、妹化した母親の姿などみたくない。
背後からオトの声が聞こえたが無視だ、無視。
俺は台所に入ると、一息をついた。
冷蔵庫を開け、中からゼロカロリーの炭酸飲料水を取りだしコップに注ぎ、いっきに飲み干す。
炭酸はいい。
ネバ付いた口内をすっきりとさせ、脳に軽い刺激をあたえてくれるのだからだ。
空になったコップをテーブルに置き、俺は買い物袋からカホ…母親が買ったものを取り出し冷蔵庫に入れていく。
土鍋を棚から取り出して、土鍋に鍋の素を入れ沸騰させた。