能力者・ナツと愉快な妹たち~3~
風呂場へ向かうイオのパンツを見つめつつ俺は深ーく深ーく深呼吸。
なにをともあれ、ここは一度落ち着こう。
落ち着いてみよう。
落ち着けば、もしかしたら元にもどっているかもしれない。
ふーふーふーふー。
俺は大きく深呼吸した。
こんなに大きく呼吸したことなんて、本当にひさしぶりだ。
中学卒業の時、エリに告白する前以来だな。
あん時は本当に緊張した、緊張しすぎてエリに振られたっけな。
「兄さん、そこでいつまで天井眺めてるつもり?」
どうやら元に戻らなかったみたいだ。
中学最終日に俺を振った女子、エリが話しかけてきた。
違った、今は妹だ。
妹のエリが俺に話しかけてきた。
普通だったら、好きだった子と同棲だぜーひゃっほーい! と盛り上がるところだが、今の俺は盛り上がれない。
好きだった相手が妹になってしまったのだから。
親同士が再婚して義理の兄妹になったとか、実は血の繋がっていませんでいしたみたいな話だったらよかったのだが。
こいつらがいうに本当の妹だ。
妹だ! マイシスターだ! 別にエンジェルでもないただの妹らしい。
ついでに俺を振った女子だ!
「兄さんがなぜ熱い顔してるのか知らないけどさ、カホちゃん頼むね」
俺が恋した女子は俺に母親を押しつけて、やはり風呂場へ向かっていってしまった。
どうやらイオと一緒に入浴するつもりなのだろう。
家の湯槽は一人がやっと入れるほどの大きさだ。
年頃の女子が二人同時に入れるような大きさではないのだ。
どう入るのか興味深いが、ここは我慢して覗くのは止めておこう。
また変態と罵られそうだしな。
「ねえお兄ちゃん」
幼なじみのアイが話しかけてきた。
いつもの笑顔とはほど遠い引きつった表情だった。
「なんだ?」
「あのね…」
「どうした?」
アイがモジモジしながら、何かを言うのをためらっているみたいだ。
一体、何なのだろうか?
この状況だったら、大抵のことを受け入れられる気がする。
「あまり他の子と仲良くお話しないで!」
アイはそう言い残して小走りで居間へいってしまった。
ちなみに居間へいく間に3回転けた。
転けた時にスカートの中が見えた、本当に久しぶりに見た、幼なじみのパンツ。
アイのパンツはピンク色だった。
中学の時に見た時はくまさんパンツだったなーと思い出しながら、母親のカホを見た。
泣いていた。
グスン、グスンと鼻を鳴らしながら泣いている。
泣いているカホの頭を優しく撫でる手がある。
オトの手だった。
オトは慣れた手つきでカホの頭を撫でていた。