30、戦の終わり
目の前の少年が発した一言が、全てを変えていた。
打ち倒された軍師は力なく体を起こし、女は呆然と手にした剣を下ろす。
シェートの目の前で、もう何度目かも分からない、勇者の崩壊が始まっていく。
「話には聞いていたが、本当に貴様らは、消えていくのだな」
周囲の視線を気にすることも無く、ベルガンダが傍らに歩み寄ってくる。シェートはその顔を見上げたが、浮かんでいる表情の穏やかさに、黙って武器を収めた。
「何か言い残すことはあるか」
「一つだけ、お願いがあります」
少年は少しだけ迷い、それから姿勢を正して魔将を見つめた。
「僕がいなくなった後、軍の皆はただの人に戻ります。ほとんどが、神規で力をつけさせた兵士ばかりですから」
「それを、見逃せというのか。俺達の軍を散々切り刻み、仲間を殺された恨みを忘れて」
「でも、貴方の軍も体裁を保っているのがやっと、ですよね。ここでつまらない被害を出すよりは、退却するほうが遥かにいいと思います」
己の身を崩れさせながら、それでもきっぱりと言い切った少年に、ベルガンダは苦笑を漏らしていた。
「やれやれ、神の智謀に踊らされているだけの子供かと思えば」
「それじゃあ……」
「貴様らのおかげで、俺の手勢はガタガタだ。戦勝の宴の後は、コモスにいじめられながら再編成を行うことになろう。その申し出、受けた」
「ありがとう、ございます」
短く礼を述べると、少年は呆然と事態を見つめていた仲間に向き合った。
「ここまでついてきてくれて、ありがとうございました。そして、本当にごめんなさい。何もかも……僕の責任です」
「……ふざけるなよ!」
黄金の光を散らしながら消えていく勇者に、ポローがよろめきながら進み出る。
言葉の荒さとは裏腹に、その瞳には戸惑いと、哀願があった。
「何が自分の責任だ! そう思うなら今すぐ俺達を勝たせてみせろよ! リセットとやらはどうしたんだ! 神様は一体何をしているんだよ!」
言葉が虚しく流れていく。
ポローが勇者の胸倉を掴もうと腕を伸ばし、その指先が空を掴む。
「どれだけ」
悔しさを滲ませた男は、今にも泣き出しそうな顔で、絶叫した。
「どれだけ俺達を、馬鹿にすれば気が済むんだ! 勇者らはぁっ!」
唇を噛み締めると、最後にもう一度頭を下げ、少年は散った。
水鏡の向こうの光景に、フルカムトはため息をついた。
骨身を削り、泥臭くあがいてみたはいいものの、結局二匹の魔物を抑えきれずに負けてしまう。
引き際ぐらい面白いものを見せてくれると思っていたのだが、結末としは凡庸極まりないものだ。
「まあ、座興としては、そこそこ楽しめたか」
「貴方は、本当に最低な方だ」
不満を隠しもしない女神に、嫌悪と侮蔑を交えた視線だけを投げると、時の女神の黒衣に向き直る。
「イェスタ、現存している"目"の加護を全て買戻しに当てよ。兵士達に与えたレベルの分も全てな。微々たる物だが、無いよりはましだ」
「フルカムト・ゲウド・ネーリカ! ……貴方という方は、どこまでっ!」
時計杖が、無情に地上の光を吸い上げていく。だが、各地の守備兵も、戦場で行われた決闘の結末を見ていた者たちも、誰一人それに気付かない。
「私の凍結後、全員のタグに通達。今回の敗北は、サリアーシェとその配下のコボルトによるものだと布告を流しておけ」
「かしこまりました」
合議の間に神々のしわぶきが漂い、竜神は再び酒器に舌をつける。
その全てを眺めやり、フルカムトはゆったりと椅子に背を預けた。
「残念だが、今回は私の敗北だ。だが、勘違いするなサリアーシェよ。此度の敗北は、全て私の知略が至らなかっただけのこと」
「……この期に及んで、減らず口を!」
「減らず口ではない。そもそも選定した勇者自体に誤りがあったのだ。やはり、人間の克己心など、戦略上の擦過でしかない。今後は機械の様に、私の命令を遂行するものを選ぶことにしよう」
すでに石化しつつある身を感じながら、それでも余裕を崩さず、黄金の竜を見やる。
「そして竜神よ。良くぞ我が知略に打ち勝った。そのことは素直に賞賛しよう」
こちらの宣言に長いマズルを酒から上げ、対手はつまらなそうに鼻を鳴らした。
「知略? 打ち勝つ? 一体何のことか分からんな」
「その問いこそ、何のことだ。貴様は私の策のこと如くを見抜き、それを上回る智謀を展開して見せたのだ。いまさら韜晦など」
「……ぶふっ!」
竜神は酒の入った樽を持ったまま、おかしそうに笑った。
まるで、こちらの言葉が、最高の冗談でもあるかのように。
「ぶはっ、ふはははははは、いきなり何を言い出すのかと思えば、知略? 韜晦だと? これは……ふはははっ、た、たまらん、はははははは!」
突然、黄金の竜が出した笑いに、皆があっけに取られて注目する。不快な石化の兆候を感じながら、フルカムトは声を荒げた。
「……何がおかしいというのだ、"斯界の彷徨者"」
「ならば聞くが、そなたはなぜ、先ほどの盤面で勝ちを逃した?」
「勝ち、だと? そんな手筋は存在しない」
不快に眉をひそめるこちらに対し、竜は上機嫌に指を立てた。
「歩兵全軍を魔王軍に当て、勇者は騎兵と共に後退、白麗の都へ落ちるのだ。それほど難しい手でもなかろう」
「だが! それでは魔将とコボルトの遊撃が!」
「その後、騎兵、竜騎兵を等間隔に数騎づつ置き、死兵として魔将に当らせる。後はご自慢の将軍と特殊部隊で、シェートを抑えさせるのだ」
「そんなもの!」
竜神の暴言に憤然と立ち上がろうとし、膝までせりあがった石化に足を取られた。
忌々しい不自由に苛立ちながら、冷静さをかき集める。
「そんなものただの敗退、兵士を徒に浪費する行為ではないか。策とは呼べん」
「くっ、はははっ、ふはははははははははははははははは!」
遠慮ない爆笑に全身がやすられ、神経がぴりりと逆立つ。その様子を楽しむように、竜は笑い続けた。
「そなたの神規は勇者さえ生き残っていれば、何度でも軍を再編できる。そして、一度白麗の都に着けば、各地に散らした無傷の六万が召集できていたろう。対する魔将の軍の生き残りはどうなったであろうな?」
確かに竜神の言い分は最もだ。
しかし、そんなことをすれば――。
「しかし、そんなことをすれば」
こちらの心を読みでもしたかのように、投じられる指摘。
「三国の王に無様な敗軍の将となった勇者を見せつけ、膝をついて救護を請う事になるではないか」
そして、たっぷりと間をおき、竜神は嘲りを吐いた。
「そんなみっともない真似、たかが人間如きに晒すなど、断じて出来ぬ、とな」
「ぐ……」
「これまで、そなたは全てにおいて完璧に勝つことを望んできた。サリアを戦う前に棄権させようとし、カニラとケイタ殿に絶望感を与えて戦う意思を挫き、魔将たちの前でセーブをして見せ、敗北を印象付けた」
問い詰められ、追い詰められ、フルカムトは肘掛を掴み、我が身を逃そうともがいた。
それでも、石と化していく体は、竜の顎の前にさらされ続ける。
「そなたが使ったリセットの神規も、絶対に過つことの無い、完璧な存在を演出するための大切な小道具というわけだ。その全てが、儂に向かって声高に叫び続けていたのだ」
「な、なにを……」
「負けるのが怖いという、貴様の弱き心をな」
ずるりと、巨躯を引きずり、竜が近づいてくる。獲物を前に、喜び勇んで食いついてくる猛獣の如き笑みで。
「貴様は我慢ならんのだ。敗北し、地にまみれ、会衆に笑われるのが。だからこそ、必死になって他者を踏みつけ、敵よりも優位に立ち、安心を得ようとする」
「そ……そんなこと、誰しにもあろうことではないか!」
「無論、誰でも負けるのは恐ろしい。しかし、そなたのそれは度が過ぎた。故に、まんまと乗せられたのだ、儂の策にな」
にたり、と竜が笑う。
「儂が、そなたの神規を見切った、と言った瞬間から、そなたは儂が演出した、大軍の戦いという虚妄に踊らされておったのさ」
「きょ、虚妄!? 馬鹿なことを! 現に貴様は戦場を差配し、魔物どもにさまざまな策を授けたではないか!」
「あんなもの、ただのはったりだ。最初から魔将の軍に勝つ見込みなどなかった。そなたの軍は完璧にして強大。その上リセットなど使われては、手も足も出ぬ」
竜神の長広舌が、合議の間に響き渡る。その間もじりじりと体が石に変わり、相手の言葉を避けることさえ許されなかった。
「儂はただ、ほんの少しの時間が欲しかっただけだ。シェートを"育てる"時間がな」
「コボルトを、育てる……?」
「リンドル村襲撃の折、シェートの力には限界が見えていた。あやつが魔将の軍につかまった時、儂はこの上のない幸運を感じたよ」
誰が見てもあからさまな窮地を、竜神は好機と称した。
その言葉を皮切りに、隠されていた真実を暴き始める。
「シェートは魔将の保護下に入り、そなたの軍から守られた。その間、食客として武術を学び、力を蓄えた。そして、カニラとケイタ殿によって、新たな力を手にしたわけだ」
確かにその姿は常に見えていた。小さな姿が不器用に武技を習い覚えていく様が。
そして、カニラとその勇者が作り上げた神器がコボルトに新たな力を与え、結果として大軍にさえ、引けを取らないほどの力を――。
「ま……まさか! 全て、あのコボルトを強化するためだけに!?」
「左様。二ヶ月はちと短いと思ったが、シェートの素直さと、魔将の面倒見のよさが助けになったな」
竜は頷き、こちらの疑念を確信に変えた。
軍事行動という巨大な隠れ蓑の影で、コボルトは竜神の手によって、着々と創り変えられていたのだ。単なる小器用な魔物から、一騎当千の勇者へと。
「最初から儂は、そなたのルールでなど動いておらん。全てはシェートを単独で勝たせるための布石、壮大な育成シミュレーションだったというわけさ」
「そ……そんな……」
「勇者の軍を精強にしていたのは大量の魔法兵。しかし、シェートの破術はその優位を完全に消すことができる。後は、先ほども見せたとおりだ」
破術の事を失念していたわけではない。だが、それ魔物の軍の中で補助的に使われるはずのもので、こんな風に利用されることは想定外だ。
「だが、そなたは儂のちらつかせた"大軍同士の戦い"という、虚妄へ逃げた。計算しやすく、確実に勝てるという"安心"へな。その結果、シェートの破術を"補助"としてしか認識しなくなった」
そんな馬鹿な、我知らずうめきが漏れる。
意識が締め付けられ、世界が急速に狭まっていく。
「儂が神器をギリギリまで与えなかったのも、フィー達の存在を隠し続けたのも、シェートの武力を隠すためだ。そうすれば、そなたは何時までも、儂の見せた『圧倒的戦力の差による華々しい勝利』という、甘い夢に酔い続けておるだろうからな」
「う……あ……ああ……あ……っ」
「敗北に怯え、自分にとって都合のよい未来を思い描き、まんまと罠にはまってくれた愚か者」
酒臭い顔面が、ずいと近づく。
爛々と双眸を光らせ、竜神は心地よさそうに喉を鳴らした。
「策士気取りの無様な醜態、存分に楽しませてもらったぞ、"知見者"殿」
「やっ、やめろっ! 私を侮るな! そんな目で見るな!」
「そうそう。そなたにはもう一つ、言わねばならんことがあったのだ」
もうこれ以上聞きたくない、竜の言葉がそんな願いを踏みにじっていく。
「シェートの武具製作に協力してくれたこと、この場を借りて心から礼を言おう」
「な……何の話だ!?」
「ミスリルゴーレムにワイバーン」
隠された毒の刃が差し込まれたように、意識を痛みが貫く。
「貴様がイヴーカスを介し、つけ届けてくれた材料があったればこそ、此度の策が成ったようなもの。心の底から感謝しよう」
「う……嘘だぁっ……全ては詭弁だっ! そんな、そんなことが……っ!」
全ての逃げ道がふさがれ、竜の猛毒が全身に染みていく。
信じられない、信じたくない、首を振りたて必死にあがく。
「そんな馬鹿なことがあってたまるか! 私の策を、全て見抜いていたなど!」
「おや? もうお忘れかな? この戦が始まる前、儂は確かに言っておいたはずだが」
やけに緩やかに感じる石化が、首元まで迫る。
完全に身動きを封じられたフルカムトの耳を、おぞましい嘲りがなぶった。
「予想通りの展開ご苦労、とな」
「や…………やっ…………やり直しだあっ!」
消滅したくなるほどの羞恥が意識を満たし、竜の嗤いが視界一杯に広がっていく。
その全てを消す術を求めて、フルカムトは絶叫した。
「リ、リセットッ! リセットォオッ! 今すぐっ、今すぐ何もかも、やり直すんだ! イェスタァアアアッァアッ!」
「"おきのどくですが"」
見えない世界の端で、時の女神は心底嬉しそうに、否定を述べた。
「"ぼうけんのしょはきえてしまいました"。貴方の戻るべき過去は、もうございません」
「あ……っ」
そして、フルカムトの意識は、絶望の闇に閉ざされた。
果てしない嘲りと、終わりのない恥辱を、共に鋳込まれながら。
「勝敗は決しました。女神サリアーシェ様、そして狩の先導者、コボルトのシェート殿の勝利です」
微笑みながらイェスタは宣言する。とはいえ、この女神が勝つときはいつも静寂か、空ろなため息が漂うばかりだ。
勝った本人でさえ、ほとんど喜びを表さない。その代わり、竜神の方は鼻息を漏らして満足そうだった。
「相変わらず、サドっ気が過ぎるな、"時の女神"よ」
「何のことでしょう」
「"刻の封印"の効果を遅らせたであろうが、知らぬとは言わせぬぞ」
複雑な色を湛えた瞳で見下ろす竜に、口元を僅かに緩めて首を振る。
「神々にとって、時間など瑣末事でありましょう哉? 故なき詮索は無用のことと思し召し頂きたく」
「まあよい。あの思い上がりも甚だしい男には、しばらくの間、我が身の愚昧を見つめ続けてもらうことにしよう」
「それでは、私はこれで」
杖を一振りすると、そのままイェスタは場を去り、自らの神座へと降り立つ。
黒き像の祭られた聖堂には、新たな彫塑がすえつけられつつあった。
「館長、展示はつつがなく終了いたしました」
「ご苦労様」
短く労いを述べると、新たに建てられた立像の前で足を止める。
「私的なものとはいえ、浅薄なる侮蔑をお許しください。"病葉を摘む指"よ」
祈りの形を象ったカニラの像は、苦鳴し悲嘆を叫び続ける者達の中で、凛と咲く花のように見える。
その下にすえられた板には、こんな銘が記されていた。
「"勲に咲きし徒花"……己の実は結ばずとも、友の花道を飾るものとなった志、私の記憶に長く留めておきましょう」
そして、新しく出来上がった像に歩み寄り、イェスタは満面の笑顔を浮かべた。
「そこでゆっくりお寛ぎを」
まるで、刻印された銘板の内容を嫌がりでもするように、顔を逸らして絶望に顔を歪ませた知見者の像。
その滑稽な顔と"引き際を誤りし道化"の銘を共に眺めやると、女神はころころと笑い声を上げた。
シェートはそろそろと息を吐き出し、それから己の体を確かめた。
傷は全てふさがり、力も戻っているが、どこか気の抜けたような気分だった。勇者が消え去った後も、彼の残した軍はまだそこにあった。
だが、その誰一人として動くものはいない。彼らを率いる軍師や将軍、特別部隊の連中でさえも、なんの動きも見せなかった。
「さて、何時までこうしていても始まらん。帰るぞ、シェート」
「え……あ……うん」
ベルガンダの言葉に、ポローが憎しみの目を向ける。それでも、何かがその体を押し留めていた。怯えたように指が、胸元の板をまさぐっている。
「勇者、消えた。もう、それ、力残ってない」
「だまれよ……」
「それとも、今、それ、試すか?」
シェートの指摘に、男が立ちすくむ。
ポローを囲む仲間も、不安を一杯に抱えて、奇跡の残り香を取りこぼすまいとするように、体を固めていた。
「シェート!」
狼に乗った仔竜が駆けつけてくる。その顔には、全てが終わったことへの安堵と、勝利への喜びが溢れていた。
「やったな。これでもう、知見者の軍は終わりだ」
「ああ。全部終わった。あとは」
フィーの発言に押し出されるように、後に続く事実が浮き上がってくる。傍らを歩こうとしていたミノタウロスは、悲しみを隠そうともしていなかった。
「そうか。もう戦は終わったのだったな」
「……ああ。終わった」
「ちょ、ちょっと待てよ! 今ここで、やるってのか!?」
共闘は終わった。残された約定は、魔将ベルガンダとの決闘のみ。
「俺はいつでも構わん。多少焦げ付いているが、やるというなら受けて立つ」
「いや」
後もう少しだけでいい、そんな思いを込めて、コボルトは悲しく笑んだ。
「怪我した奴、倒す、簡単。それ、決闘する、意味ない」
「ぬかせ。神器を手にしたぐらいで俺に伍したなどと、思い上がりも甚だしいわ」
軽口をたたきながら、牛の顔も哀切に笑っていた。
「そ……そうだよな。もう、昨日からずっと戦いっぱなしだもんな! ちょっと休んで、メシでも食って、それからでも――」
とりなすように間に入った仔竜の顔が、歪んだ。
「っぐっ!? あ、あ、あぐあああああああああああああああっ!」
「フィー!?」
「どうしたチビ助!」
白目をむき、口から胃液を吐き、悶えながら仔竜が地面に転がり落ちる。グートの眉間に皺が寄り、僅かにフィーを気遣いながら、それでも空を睨んだ。
「こ……これ、まさか!」
どっと、四方の森から鳥たちが、逃げ散っていく。
シェートの耳を、肌を、異様な音が刺激する。
異臭を含んだ風が、大地を、草原を、居並ぶ人間、魔物の区別無く吹きつけ、衣服と毛皮をかき乱していく。
空の果て、山の向こうから、それは巨大な威容を現した。
巨大な岩塊に聳え立つ、魔の王が住む居城。
『我が魔将よ、塵芥の如き人間どもよ、そして――我が恋焦がれし、小さき魔物よ』
降り注ぐのは、神のものとは明らかに違う、若く、そして悪意に満ちた声。
『戦え』
その主は、見上げる全ての者達に向け、命じた。
『そして、見事に咲き誇らせてみせよ。血と鉄で彩られた、戦の華を』