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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南


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第4話 情熱

 地下2階の医務室から1階へ到着したことを伝える音が鳴ると、

銀色のエレベーターの扉が開き始めた。すぐにジンはミシェルに

言われた通り、駐車場に置かれている電動バイクを探すことにした。


 鮮やかな夕焼けが視界に入る。もうすぐ夜になる時間帯だと気づいた。

ジンは歩き出すと、ふとアミに自分が腑に落ちない疑問を尋ねることを

決めた。なぜこの異世界では計算することで魔法が生成できるのかを。


「アミちゃん、ちょっといいかな?」

「はい。ご主人様。どうしましたか?」

「さっきヴァドールの歴史について、ミシェルから聞いたけどさ。

どうしても納得できないのが二つくらいあるんだよね。」

「はい。」

「まず、火の魔法を使う時に量子を火に変換っておかしくないかな?

火って空気中の酸素が、水素や炭素と高温で激しく反応しているんだよ。

つまり物質の酸化が起きている現象で、本来は計算なんてできないんだ。」

「なるほど。ご主人様は火の物理計算は不可能だと考えているのですね。」

「うん。火は物理現象が複雑すぎて、自分の頭で計算なんて無理だよ。」

「・・・・・・ご主人様は、量子ゲーム仮説というのはご存じですか?」

「・・・・・・シュミレーション仮説みたいなもん?」

「はい。この世界はすべて量子で構成されており、それは0と1であります。」

「うーん・・・。量子重ね合わせなら、0と1がそれぞれの桁で存在するけど…」

「手短に伝えますと、この世界はゲーム空間と同じで、魔法生成はコードを

書き換えることです。例えば目の前に椅子があったとします。椅子はドットの

集合体だとします。そのドットをアルゴリズムで別の存在に作り変えるのです。」

「? えっと、つまり・・・・・・椅子の情報をハッキングしたってこと?」

「はい。ご主人様。その通りです。何もない空間に燃え盛る炎ができるのは、

量子をアルゴリズムによって燃焼現象に変換するのです。最新の脳科学では、

生物にある魔素神経細胞マナ・ニューロンが関係していると言われています。」

魔素神経細胞マナ・ニューロン?」

魔素神経細胞マナ・ニューロンは脳内物質で、この世界の全生物が持ちます。やがて体内で

細菌として再構築され、自然に生物の体内から体外へ放出されます。」

「ええ!?細菌になっちゃうの?」

「はい、ご主人様。」

「・・・・・・・で、それが魔法と何が関係あるの?」

魔素神経細胞マナ・ニューロンの細菌化で、量子に干渉できるようになります。空気中に

ネットワークが形成され、魔族や機械などが計算すると電磁波を通して

細菌が変異するのです。細菌がそこから発信元を特定し、数字や式を

細菌が読み取ると、量子を別の存在や現象に変換する手伝いをします。」

「えっと…つまり細菌が蔓延している場所で計算すると魔法が生成されるの?」

「はい、近いですね、ご主人様。量子通信網も同じで、大気中の魔素神経細胞マナ・ニューロン

利用し、細菌と電波をつなげているのです。これでネットから魔法生成が可能に

なりました。データベースにアクセスし、AIが魔法を検索できるのもそれです。」

「はぁ~……凄い便利な仕組みになっているんだね…」

「はい。ご主人様。では、量子通信のことも知りたいですか?」

「いや、もういいかな。大丈夫、なんとなく魔法の原理分かった。

じゃあ最後の質問だけどさぁ、昔から電気もあったんだよね?」

「昔からとは、どういう意味でしょうか?アミには分かりません。」

「んー…腑に落ちないのはシェーンという人が100年前にコンピュータを

作る前に、既に発電所や電池、半導体や時計なんかもあったんでしょ?」

「はい、ご主人様。それらはすべて魔族の方々が発明しました。」

「その文明レベルなら普通にコンピュータ、思いつかないかな?

あと、ヴァドール人は電球や街路灯なんかも作れなかったんでしょ?

どうして電気で照明器具を作ろうとしなかったんだろ?」

「はい、ご主人様。歴史について、説明をさせていただきます。

まず、発電所ですが、実際は雷の研究施設でした。400年前の魔族で、

侯爵であったニコラ・ファイデマン様は雷の魔法の使い手でした。」

「ミドロワの発電所って元々研究所だったんだ。」

「はい。雷のアルゴリズムを調べたいという欲求から、ファイデマン様は

避雷針を考案し、そこに銅線をつなげて電池を作ることが出来ました。

その後ファイデマン様はモーターを使うことで電気が作れることを知り、

電池を凡人ヒューマンの工房で大量生産し、他国に輸出しようと考えました。」

「モーターを回転させて発電する仕組みには気づいたってことか…」

「はい、ご主人様。ファイデマン様の電池は他国でも売れ、ミドロワは世界初の

電池を産業化させた国として有名になりました。そして既に発明されていた振り子時計の小型化を目指していた魔族のジャルゾン・ガリウェイ様が、世界初の電池式時計を作りました。彼はミドロワの隣国、クロムウェル王国の出身ですね。」

「あー…なるほど、振り子時計は昔からあったんだね。」

「はい、ご主人様。振り子時計は今から1000年以上前に発明されました。」

「え?もしかしてそこから時計は進化しなかったの?」

「はい。時計の改良は電池式時計が作られるまで、誰も思いつきませんでした。」

「マジかぁ…デジタル時計とかも考えなかったのか…」

「なので、シェーン様が現れる前の人々は電池を時計にしか使いませんでした。

一方で半導体や抵抗器、コンデンサなども魔族の発明家が開発に成功しましたが、

王の関心は得られませんでした。当時ミドロワは絶対王政であり、王の許可が

全てにおいて必要だったのです。その後、ヒトが思想学という新しい学問を

生み出すと、技術革新よりも精神を論理的に追求することが重視されました。」


 ジンがアミの話を聞いていると、目的の電動バイクがジンの視界に映り込んだ。

それはカウル(バイクのカバー)が存在せず、エンジンやフレームがむき出しに

なっていた。バイクの灯火類はフルLEDのようだ。またバイクのメーターパネルは

バイクの速度・バッテリー残量・目的地到着までの残り時間などが視認できるワン

ボディ液晶ディスプレイで、全長は2,120mmだとジンの眼球カメラが解析した。

 塗装色は黒で統一され、金色のフレームが歯車のようなデザインになっていた。


「どうしよう……オレ、バイクなんて人生で一度も乗ったことがないよ…」

「ご主人様、心配する必要はありません。自動運転で目的地まで走ります。」

「え?これ自動運転なの?……降りる時とかどうすれば良いの?」

「はい、ご主人様。右のブレーキペダルを踏めば、自動的に急停止します。」

「な、なるほど…あれ?これ、エンジンをかけるキーが見当たらないけど?」

「はい、ご主人様。イグニッションはこの電動バイク『DFCOデフコ-650R』には

最初から存在しません。ご主人様がシートの上に乗るだけで電源が入る仕様です。

目的地をご主人様が言うだけで、このバイクのAIが運転するようになります。」

「ま、マジか……音声認識も内蔵しているのかよ…」

「はい、ご主人様。現在音声認識は基本どのAIもできるようになっています。」


 前世では自動運転の時代とはいえ、実物を見たことがなかったジンは驚く。

内臓は既に機械化されていたが、脳の電気信号が活性化する状態を感じた。

ミシェルから聞いた目的地の住所をAIに伝えると、ジンを乗せてバイクは

急発進した。バイクに乗っていると、日が沈むにつれて街路灯が点灯した。

 周辺の廃墟は、よく見ると中世ヨーロッパ風の家屋だと判明した。ジンの

眼球カメラが自動で解析を始め、「ハーフティンバー(木と石の混構造)の

建造物である。」とメッセージが表示された。しかしジンにとってはそれが

何の意味なのか分からず、後でアミにハーフティンバーについて尋ねていた。


 ジンがバイクで目的地に向かっている間、ジュリア・スミスは囲まれていた。

構成員は全員マシンガンの様な銃を構えており、ジュリアに狙いを定めている。

 犯罪企業ギャング、このプライドシティでは犯罪組織も起業し、街の投資家に株を

販売していた。犯罪もビジネスとして機能するプライドシティでモラルはない。

ライバル企業に対する犯罪行為、人身売買、密漁や密輸などが主な収入源である。

 敵の軍勢にひるむことなく、ジュリアは大声で叫んだ。


「あんた達!! どこに子供を隠しているのか、お姉さんに話したら楽にしてやるよ!!! もちろん、ただでね!!!!」


 赤い長髪と健康的な褐色肌、そして露出度が高い迷彩服を着ているジュリアに

ギャング達は笑い出した。圧倒的に不利な立場にいる彼女の強がりだと認識した。


「おいおいおい…なんの冗談だぁ!? てめえが俺達に交渉できると思ってんのかぁ?」


 黒い覆面を被った男がジュリアに話し掛ける。手に自動小銃を持ち、犯罪企業ギャング

メンバーに対して挑発的な態度をとるジュリアにひどく腹が立っていた。そして、足音に気づく。金属が床にぶつかるような音を立てて、男の背後で止まった。男はすぐに振り向いた。目の前にはシュタールヘルムとホッケーマスクを装着した男が立っていた。その男の身長は2メートルで、両肩のショルダーパッドとつながっているマントで手足を隠していた。全身が苔のような暗い黄緑色で統一されていた。


「ボ、ボス……。わざわざ来たんですか!?」


恐る恐る黒い覆面の男が尋ねると、ボスと呼ばれた男は渋い声で答えた。


「来たってオメェ…俺が前線で戦うことに何か文句あるのか?」

「い、いえ!! 何も文句はございません!!!」

「……フフフフ、どんな女が喧嘩売りに来たかと思えば、まさか『ケルベロス』のジュリアとはなぁ。会いたかったぜ!!」

「!!!」


 ボスが言ったケルベロスという言葉に、ギャング達は動揺した。その名前は

裏社会では知らぬ者はいない安全保障会社ガーディアンであった。4年前に勃発したゼルマニア戦争で、数多くの民間人を虐殺した傭兵集団であり、元々は犯罪企業ギャングでもあった。


「あら、あたしの通り名を知っているのね。」

「ああ…何しろ、俺もゼルマニアで戦っていたんだからな。兄弟。」

「兄弟? あたし、あんたと家族になった覚えはないけど?」

「フハハハハハ! オメェと俺は兄弟さ!! いくつもの村人をぶっ殺したよなぁ!!!」

「‥‥‥‥」

「ゼルマニア…ミドロワとの貿易赤字が原因で、東西に分裂。社会主義者が集まる

東ゼルマニアに、俺は送り込まれた。当時西側でな、東の連中と戦っていた…」

「へぇ……あんた西側として戦っていたんだ。あたしらは西側と戦っていたよ。」

「だろうなぁ!! 何しろシティの強欲な株主どもは、東と西にそれぞれ傭兵を派遣した! 分かるか? 恒久的な戦争を連中は望んでいた!! 金儲けの為になぁ!!」

「・・・・・・・」

「俺たちはシティでも最凶と呼ばれたケルベロスの社員達に追いかけ回され、俺は機械化人間サイボーグとして生き延びるまで、落ちぶれた!! 俺は生殖機能も失った!!!」 

「ふーん…あたしも両手両足を奪われて、今は機械化人間サイボーグだけどね。だけど、

あんたみたいに人身売買やるほど落ちぶれていないのさ。」

「フフフフ…フハハハハハ!!! まさか味方だと思っていた東の連中がケルベロスを襲うとは思わなかったぜ!! あいつら、独立後に主導権を握られたくなかったとはいえ、間抜けだよなぁ!! そりゃ、東側は戦争に負ける訳だ!!! 信念がねぇ!!」

「信念?」

「おう、そうだ……オメェ、俺がガキども殺して脳みそを奪っていると思っているだろ? そりゃあオメェの勘違いだぜ?」

「思っているから会いに来たんだよ、『バスタード』のハンク。」

「信じねぇのもオメェの自由だ。だがな、これだけは言う。俺はむしろガキどもを救っているんだ。慈善事業なんだよぉ、これはよぉ…」

「はぁ?」

「オメェ、機械化人間サイボーグとAIの絶対的な違いって分かるか?」

「………恋?」

「違う!! 今じゃヒトがAIに恋するんだよぉ!! 中には自分のガキだと思い込んでいる奴もいる!!! そこまでヒトは退化しちまったんだよぉ!!!」

「ま、今は多様性ってやつが幅利かせているからね。」

「違いはそこじゃねぇ……人工知能と機械化人間サイボーグの境界線はなぁ……未来だ!!」

「みらい?」

「そうだ、未来だ。人工知能だけが未来を持つ。」

「・・・・・・・そうかしら?」

「指数関数的にAIの知能指数は上がり続け、今やヒトや魔族すらも凌駕する知性を持っている!! そして生物は死ぬが、AIはアップデートのおかげで生き続ける!! 無限の可能性を秘めているのはAIだけだ!!! 分かるか?いくらヒトや魔族のガキがどんなに努力してもAIには勝てねえんだ!! 摘まれたんだよ、未来の芽がなぁ!!」

「だからスタンダードインカムがあるんでしょ。もう労働や研究はAIにやらせて、生物の子供は自由気ままに生きる____」

「ふざけるんじゃねぇぞ、この赤毛のクソ女!!!」

「・・・・・・・あ? てめえ、今すぐ殺すぞ?」

「殺す前に教えておこう!! 俺はガキどもを宇宙空間に逃がしているんだ、奴らの届かない場所にな!!! そこで俺はヒトを進化させることにした!! 過酷な宇宙ならガキどもは超進化する!!! そして俺はヒトの未来の為にオメェを生贄に捧げる!!!」


 そう言い放つとハンクはマントから両腕を出し、掌から大量の銃弾をジュリアに浴びせた。無数の弾丸がジュリアの身体を貫通すると思われたが、ジュリアは笑いながら両手を広げた。一瞬で炎の壁がジュリアの目の前に作られ、弾はすべて熱で溶けていった。満面の笑みでジュリアは両手を向けているハンクに言った。


「さっきからごちゃごちゃウルセェんだよ…さっさと遣ろうぜぇ、最低野郎!!!」


 爆発音と共に戦闘が始まった。お互いに攻撃を寸前で避け、ジュリアは炎の弾をぶつけ、ハンクは銃弾とロケット弾を発射し、お互い一歩も引かない態勢になる。そして突如、地下街に謎のバイク音が鳴り響いた。


「うわぁああああああああああああああ!!!!!」


 暴走する電動バイクに乗った男が叫びながら、バスタードの社員を轢いていく。

突然の来訪者に驚いたジュリアとハンクはバイクに乗る男に対して注意を向けた。

こっちに突っ込んでくる様子だったので、お互いに跳躍して回避することにした。


「アミちゃん、ちょ、ちょ、これペダル押しても止まらないんだけど!!」

「はい、ご主人様。目的地はあと20キロメートル先なので、停止できません。」


 ジンの電動バイクはジュリアとハンクを無視し、まっすぐ子供達が捕まっている場所に向かった。電動バイクの行き先がロケットの発射場だと気づいたハンクは、背部にあるロケットエンジンを点火させると、ジンを追いかけることを決意した。一方、ジュリアはギャング達に囲まれ、予期せぬ形で足止めを食うことになった。

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