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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南


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第10話 再会

  これが異世界の電車か。座席がロングシートで、硬そうな感じだ。

 おまけに広告が見当たらない。こいつは移動するために特化したって

 言っているように思った。電車内のモニターは行き先が出るだけ。


  異世界人は電車を快適にしようと考えなかったのかな。いや、

 そもそもグラビランナーという車社会で、電車を利用する客が

 少ないからか。それに長時間電車を乗らないとなると、座席が

 硬くて不愉快だと思わないのかもしれない。つり革もあるしな。


  オレはふと、座席に座っている乗客を見渡した。何人かはこめかみに

 指を当てて、ブツブツと何かを話している。リクルートスーツを着た

 エルフの女性二人はよだれを垂らしながら寝ていた。隣のコボルトは

 VRゴーグルのような装置を着けており、手をバタバタと動かしている。


  あ。VRゲームをやっているのか。この世界ではコントローラーなしで

 プレイヤーの両手が3DCGの世界とリンクする仕組みなのか。ミシェルが

 脳インプラント使っているように、両手にマイクロチップ入れたのかな。


 オレが周囲を観察していると、いきなりベンジャミンが話しかけてきた。


「なぁ★ どんな気分なんだい? 目が覚めたら機械化人間サイボーグってさァ。」

「・・・宙に浮いている感覚だな。」

「体が浮かぶってことかなァ?」

「違う。自分の脳みその下から何も感じられなかった。

 まぁ・・・だんだん気にならなくなったけどな。

 雑巾を掴むと、人間だった時と同じ触感だったな。

 慣れることで、オレの脳は騙さているのかもしれない。」

「物理的喪失感ってやつか。そりゃそうだろうなぁ~、自分には

 本当に意識があるのか、ないのか。いまお前が触っているつり革は

 機械が脳に情報を電気信号で伝えている。お前は常に機械を通して

 情報を手に入れている。それはお前の身体感覚じゃアァない★」

「そうだな。昔はスマートフォンで調べている時は自分で何かを

 動かしている実感があった。でも今は、オレはつり革を掴んでいると

 思うのと、同時に義手がぶら下がっているのを感じるんだ。」

「ハハハ・・・哀れだねぇ。無知だった存在が目覚めたからそうなる!!」


  無知か・・・知らなければ幸せだという話をYoutimeで誰か言っていたな。

 貧しい国の子供が、生まれて初めてインターネットで外国人と会話したら、

 自分の国には何もないと思い込んでしまい、うつ状態になったという話だ。


  オレがこの異世界について知る度に、日本での生活が恵まれていると

 考えるようになった。美味い飯を食べ、高校の友達と一緒に雑談したり、

 母親と一緒にネットでドラマを見る。ネットで地球の科学技術もどんどん

 進化していることを知り、夢であるアメリカで起業するモチベになった。


 そんなことを考えていたら、歪んだ笑みを浮かべるベンジャミンが話してきた。


「お前ら地球人のせいだよ。この星がぶっ壊れたのはなァ★」

「はぁ? なんだそれ。人のせいにするんじゃねえよ。」

「この世界は元々僕ら魔族が頂点で、それ以外の種族は役割があったんだよ。」

「やくわり?」

「魔法を使えない哀れな凡人は魔族の下っ端として働き、エルフは森で暮らし、

 ドワーフは山に住み、ゴブリンやオークどもは毎日エサを探す。下の階級が

 あるから、僕らも幸せに感じていたんだ。なんて平和なんだろうってな。」

「・・・・・・とことん、お前以外の種族を見下しているんだな。」

「違うね。世界のことわりさ。社会が作った役割だよ。僕らはそれぞれの役割を

 まっとうして世界を維持してきた。それを地球から転生した奴がぶっ壊した!!

 魔法を発動できる機械を作り、それを世界中で売る資本主義を広めやがった。

 その結果、何が起きたと思う? 僕らのアイデンティティは奪われ、目下の

 存在が権利を主張してきたんだよ。僕らに対等に扱えと。ふざけるなァ!!

 なんで僕らがペットだと思っていた凡人と同じなんだよ。誰が毎日仕事を

 与えていたと思っているんだ!! そしてこの世界が地獄に変わった。見てみろ、

 あのエルフの女ども。くたびれたスーツを着て、毎日凡人に頭を下げて就職

 活動をしているんだぞ。森の賢人と思い込んでいるバカが、外の世界に出たら

 ちっぽけな存在だと目覚めてしまったんだよ。木の実食べている野蛮人だと

 自覚してしまった。そしてエルフは凡人が作った服と化粧品で身だしなみを

 始めた。凡人の商品とサービスに支配され、価値観を奪われたのさァ!!」


  長い。そして逆恨みに近い。全てのエルフがそうじゃないだろ。

 中には森に残って、自分たちの伝統的な文化を守っているはずだ。


 そう思うオレを尻目に、ベンジャミンはまだ喋り倒してきた。


「いいか? お前もこの世界に転生した時点で不幸なんだよ。

 僕らが食べる食事も楽しめない、温泉にも入れない。自分の

 感覚は本物なのかと葛藤する。そして前世よりもクソな世界。

 だったら死んで無になっていたらと後悔しているんだろ!?」

「・・・最初は逃げたかった。だけどオレはハンクに掴まれた時、

 オレはもう現実を受け入れて前に進むことにしたぜ。」

「現実を受け入れる? お前が?」

「成長して本物になるってな。だから、オレは壊れたヘルメットを

 ミシェルに預けた。それは過去のジンが被っていた証だからだ。」

「ハハハ!! 証? ヘルメットがァ?」

「ああ。証だ。ライセンスだよ。オレがジンを超えた時、被るんだ。」

「ククク・・・アッハッハッハ!! 偽者のお前が、本物になる?

 なんて惨めなんだろう。そんなくだらないことを気にしているの?

 もうこの世界に居ない本物のジンがまだ居ると思っているのか!?」

「感じるんだよ。そう、ジンの亡霊ゴーストをな・・・。」

「・・・・・・ハァ?」

「身体的共感なのかもな。オレとジンの脳が融合し、オレが感じることを

 ジンも感じる。・・・地球の哲学者が言っていたんだが、その人は未知を

 理屈をつけて説明すると必ず理性の暴走が起きるって言っていた。」

「・・・なに? いきなり何を言っているんだお前ェ?」

「例えば、なぜ生物は生まれたのか。お前は説明できるか?」

「それはだねェ・・・世界は量子で構成されているのさ!

 つまり生物は量子によって造られたんだよ!!」

「じゃあ、量子はどうやって生まれたんだ?」

「はぁ?・・・はぁ!?」

「宇宙から生まれたのか? それとも無から突然生まれたのか?

 なぜ無から量子が生まれたのか、お前は論理的に答えられるか?」

「し、知るかよ! そんなこと!! 考えるだけで無駄じゃないか!!」

「それだよ。答えがない答えを考え続けるのは意味がない。純粋に理性を

 追求すると思考のOSがフリーズする。さっきからお前も囚われている。」

「・・・・・・で? 何が言いたいんだよ。お前はァ!!」

「オレがジンの存在について考える、同時にジンもオレの存在を考える。

 どうやってもオレとジンは分かれていない。でもお互い別の存在を感じる。

 そういう未知のことについて考えたり、逆に聞いても意味ねえと言うことだ。」

「ふん! ・・・そうだな。僕のことを考える方がまだ有益だな!!」


  なんとか黙らせたな。哲学さん、ありがとう。あんたのおかげで

 あいつのクレームをこれ以上聞かなくて済むようになったよ。


  ジンとベンジャミンの言い争いを、離れた場所で観察する女性が居た。

 フードで顔を隠しながら、二人の男が何を言っているのか、妄想する。


 うーん・・・見ていると、どうも仲は良くなさそう。なんかずっと

 ギスギスしてて、まるでお互いS極同士だから反発しているみたい。

 ・・・・・・って!! 何を考えているんだよ、あたしはァアア!!


  ジュリアが妄想していると、席の向こう側から声が聞こえてきた。

 女性だ。女性の声が聞こえる。そう思ったジュリアが振り返ると、

 席に座っているコボルトの女性二人が機械化人間サイボーグのチンピラに

 からまれていた。頭部が機械仕掛けの骸骨がいこつに見える男が言った。


「騒ぐな!! 俺の聴覚機能が下がる!!」


  怯えて涙目のコボルトの女性二人は、オートマチックピストルに似た

 武器を構える骸骨顔の男と、隣でニヤニヤ笑う二人組に向かって言った。


「や、やめて・・・さっき見たことは・・・謝るからぁ!!」

「助けてください!! 私たち、知らなかったんです!!」


  コボルトの女性は初めてプライドシティの地下鉄で、機械化人間サイボーグ

 見かけたので、まじまじと見てしまった。それがチンピラからすると、

 馬鹿にされたと思った。骸骨男の仲間の一人が、女性にこう言った。


「おい。おめぇ、移民だろ? ド田舎から出てきて、俺らシティ生まれから

 仕事を奪おうとしやがって。さっきから見た目が洗練されてねぇんだよな!」

「すいませんでした!! もう勘弁してください!!」

「ダメダメダメ。もうお前ら終わりだよ。あのな、AIがどんどん仕事を

 任されている時代にお前ら移民の生きる場所なんて、ねえと思わない?」

「う・・・う・・・」

「俺らも少ない金で改造しているんだよ。そのうちロボットと競わないと

 生きていけねえんだ。それでお前ら犬女がシティで何ができるって?

 金持ちの社長さんの骨でもしゃぶるんか? あそこにはないぞ?」

「ハハハハハ!! 間違いねぇな!!」

「どうか許してください。もう次で降りますからぁ!!」


  フードを被ったジュリアは無言で立ち上がろうとした瞬間、横を

 ジンとベンジャミンが近づいていることに気づき、行動を止めた。

 下を向き、2人の男達がチンピラに向かっていることを察した。


「あ? なんだてめえら。おい、そこでと______」


  顔半分を機械化した男は、ジンに対して命令したが、ジンは突然

 拳で男の顔を殴り、殴られた男は床に倒れた。他の乗客も驚き、

 巻き込まれると思ったのか、一目散に別の車両へ逃げて行った。

  そしてとっさに泣いているコボルトの女性二人もその場から逃げた。

 コボルトの女性が逃げたことを見た骸骨顔の男はジンに文句を言った。


「てめえ・・・俺の仲間に手を出したどころか、移民なんて

 助けやがって・・・てめえそれでもシティ生まれかゴルァ!!」

「あ? オレが何しようがオレの勝手だろ。お前の許可なんて知るか。」

「ああん!? この地下鉄は俺ら犯罪企業ギャングの縄張りなんだよ!!

『ヴィジランズ』社のな!! これは営業活動だ!!」

「女泣かすのがてめえらの営業かよ。ゴミだな。」

「ゴミだと・・・俺らがやっているのは不法移民の取り締まりだ!!

 あの犬女はシティにゴミを持ち込む!! 多様性というゴミをな!!」


 ジンの隣でニヤニヤ笑っているベンジャミンは骸骨顔の男にこう言った。


「多様性を否定したら君も生きてけないじゃん。だって君達、

 もう凡人ヒューマンじゃないだろ。このシティは生身の凡人が作った場所。

 だから君達は異物なんだよ、シティのね★」

「いや、汚物だな。オレの中ではこいつらは人の道を外れている。」

「ハハハハハ★ 機械化人間サイボーグからも否定されてちゃったよ!!」


  あざけり笑うベンジャミンに、黒い布マスクのジンは口を動かして言う。

 そんな二人に対して、ついに骸骨の男はジンに向けて発砲した。銃弾は

 肩に当たるが、ジンのパワードスーツは銃弾をはじいた。ジンは言った。


「じゃ・・・もう正当防衛ってことでいいかな、特務官ジャッジナイト。」

「ふぅん★ 保護観察官の僕は先に殴ったお前を拘束したいけど、それよりも

 この鉄くずを解体する方が先だな★ 街の治安維持も優先順位がある。」

「殴った訳じゃねえさ。右腕の故障ってナジュリに報告してくれ。」


  そして戦闘が始まった。まず骸骨の男の仲間であるガスマスクに似た顔の

 男が背中に隠し持っていた警棒を取り出し、ベンジャミンに向かっていった。


「死ねぇヤァああああああああああ!!!」


  警棒を振り落としたが、途中でガスマスクの男の腕が止まる。

 機械化された男の腕は何故か手首が回り始め、警棒が手から

 落ちた。ガスマスクの男にベンジャミンは清々しい顔で言う。


「これが・・・僕の十八番じゅうはちばん★・・・量子ハッキングだァ!!」

「うわぁああ!! 腕がァ、腕が止まらねえ!! あ、あ、あ・・・

 眼も見えなくなっていく、た、助けてくれぇええ!!」

「フハハハハハ!! 量子操作魔法の応用さ!! 量子通信網ネットワークを通して

 僕のサイバー攻撃がお前の体をむしばむんだよぉ★ カメラで練習してて、

 本当はジンにも使いたかったんだけどねぇ!! それは僕のプライドが許さない!!

 僕が認めた敵には小細工なんて使わない! 僕は正攻法で戦う! 紳士だからァ!」


  ガスマスクの男は手首が回り続けるのを見ていたが、眼球カメラの映像が

 乱れ、目の前が真っ暗になった。ガスマスクの男はうつ伏せになって倒れた。


  ベンジャミンの量子サイバー攻撃を見た骸骨顔の男は、うろたえてしまう。

 そして即座に後ろを振り向き、コボルト女性が逃げ込んだ車両へ向かった。

 人質を取り、この場から逃げなければ殺されると骸骨顔の男は考えた。

  一方、ジンは自分の左手を前に出し、右手で左腕をなで始めた。すると、

 徐々にジンの左腕が変異し、途中で量子通信でアミから経過報告があった。


「ご主人様。ヒルベルト空間の記述も終わりました。

 これで量子スピンネットワークと魔素神経細胞マナ・ニューロンは同期し、

 ご主人様が所望の武器のアルゴリズムで構築できます。」

「ああ、アミちゃん。何が何だかさっぱりだが、やってくれ!!」

「分かりました。5秒間お待ちください。」


  ジンの左手は空冷ジャケットで覆われた円筒形の銃身に変化し、

 金属製のレシーバーには弾帯がつながった。弾帯は上腕二頭筋の

 部分に出現した穴に吸い寄せられる仕組みになっている。ジンは

 昔見た映画で知ったM1919機関銃を自分の左腕にすることを考えた。

 逃げる骸骨男の背中に銃口を向け、ジンは7.62ミリの弾を発射した。


「ア゛イィィィィィィイイイ!!!!」


  火花が散り、骸骨男の背中には無数の穴が刻み込まれ、そこから茶色い

 液体が飛び出した。骸骨男は小刻みに震え、痙攣けいれんしながら倒れた。

  ジンの目には自分の機関銃によって微動だにしない骸骨男の姿が映った。

 突然の出来事に、静観していたジュリアは思わず声を出した。


「ええッ!! また物体錬成!? しかもマシンガンアームゥ!?」


 !! この声・・・どこが聞いた覚えがあるぞ。


「声紋分析終了。ご主人様。間違いありません、赤い髪の女です。」


 マジか・・・地下街で声をかけてきて、マシュアに頼んで探っていた、

 あの女がオレの背後にいる。どうする・・・振り返るか? いや、

 もしあの女がロズノフの仲間なら・・・どう戦う!?


   ジンは即座に機関銃の銃口をジュリアに向けようとしたが、

  隣にいたベンジャミンがジンの肩をたたいてささやいた。


「待てよ。次の駅で降りるぞ。これ以上は車内のカメラで誤魔化しても

 乗客に見られ続けるのは得策じゃあァなィ★」

「だが、後ろには敵がまだ残っている!!」

「僕らの戦争は終わったよ。ここからサバイブだ。もしも次の駅で

 降りないと、保護観察官の僕も監督責任を問われる。行くぞ★」


 オレは無言でベンジャミンにうなづき、左手を魔法で元に戻した。

 冷静になれば、あの女がロズノフの女スパイである証拠がない。

 それで人違いで殺めてしまったら、最悪の結果が待っている。


  ベンジャミンに説得され、ジンは電車のシートに座った。

 もしもジュリアが敵なら、今が仕留める機会だと考えた

 ジンはわざと無防備な姿をさらした。ベンジャミンも

 シートに座り、ニヤニヤ笑いながらジンにこう言った。


「しかし、お前はあいつを殺さなかったな。見ろ、まだ生きているぞ★」

「・・・ああ。過剰防衛で終わりたいから、手加減した。」

「手加減!? ハハハハハハ!! ・・・ところで、さっきの話だがァ★」

「あ? なんだよ?」

「保護観察官として警告する★ 本当の自分を認めない限りは本物になれない★」

「・・・なんだと?」

「僕はお前に負けて、ションベン漏らして泣いた自分を認めた。

 だからお前に会っても笑顔で堂々としているんだ。なぜか分かるか?」

「・・・・・・知らんな。」

「成長だよ★ 僕は弱い自分を認めて、ありのままの自分で生きる!!

 お前は過去のジンになりたいと願っている、だがァ!! それは自己否定だァ!!」

「・・・・・・・・・」

「僕は嫌いなんだァ★ 憧れているから、輝いているから、そう言って見た目を

 憧れの人に近づけようとするバカがなァ!! なれる訳ないだろ、お前はお前だ!!

 ネットで人気者になりすまして偽りの自分を演じる、中には人気になって調子に

 乗ったバーチャルライバーが投げ銭を要求してくる!! 他人が作った被り物を

 着ているだけの甘ったれが成功者として振る舞う!! ああ、腹が立つゥ!!」

「最後のはどう考えてもお前の逆恨みだろ。バーチャルライバーで事務所に

 言われてそうやっている人もいるんだよ。全部そうだと決めつけるな。」

「ハハッ!! 甘いな、着ぐるみ着ている連中こそ、中身が劣っているのさ。

 そいつは本当の自分を社会から認められていない。バーチャルライバーの

 アバターと声だけを視聴者は愛しているんだ。だから僕はそいつの顔を

 ハッキングでさらしたのさ!! 僕はこいつに教えてやりたかったんだよ★

 本当の自分を隠す奴に居場所なんてないってなぁ。ヒャハハハ!!!」

「最低じゃねえかよ。配信中に中の人をさらしたのか!?」

「そうだよぉ★ 案の定、巨漢の男だったからね。女の声に偽装していた。

 そしてAIでアカウントを複製し、再生数も水増ししていたんだ。僕はねぇ、

 愚民が騙されているから、正義の鉄槌を下したまでさァ★ だけどねぇ、

 愚民どもはなんでか分からないけど真実を教えた僕を叩いたんだよね★」

「? もしかして・・・お前自分でハッキングしましたって公言したの?」

「もちろんさァ★ SWSで拡散していたからね。おい、愚民ども。それは

 僕の手柄だぞぉ!!って書いたら炎上した★ まったく頭悪い奴らだ★」

「うわぁ・・・・・・」

「なぜか皆を騙していた男に同情する声が集まり、逆に僕が叩かれたんだ★

 だから僕に粘着してきた奴らは全部ハッキングして、IDナンバーをSWSで

 見れるようにしておいたさァ。そして誰も僕にからんでこなくなった★」


 そりゃそうだろ。からんだら倍返しするハッカーなんて怖いだろ。

 そしてバーチャルライバーに同情するわ。さらした奴が上から目線で

 ユーザーを挑発したら、そりゃ怒りはそっちに行くだろうな・・・。

 あと、視聴者の中にはライバーの外見よりも共感性を見たと思う。

 人気配信者になる人々は必ずどこか共感される部分がある気がする。


  電車が停車し、ジンとベンジャミンは降りた。そしてぬるりと、

 後をつけるジュリアも降りた。ジュリアが尾行していることに

 気づいているジンは量子通信でアミに質問した。


「アミちゃん、あの赤い髪の女にGPSとか付けられない?」

「はい、ご主人様。GPSとはどういう意味ですか?」

「ああ、悪い。要するに、あの女を追跡できるような奴。」

「量子慣性センサーのことでしょうか?・・・残念ながら

 アミはそれを保有していません。防衛用生成AIじゃないので。」

「そうか・・・オーケイ。あ、そうだ!!」


  ジンは量子操作魔法を使えるベンジャミンに聞こうとしたが、

 やめた。ベンジャミンに赤い髪の女のことを話したら、余計

 騒動になってロズノフが地下に潜ることが頭をよぎったからだ。

  地上に出る階段を見つけた二人は、そのまま階段を上った。


  ベンジャミンは地上に出ると、既に待機させていた黄色い

 グラビランナーに乗り込んだ。ジンも乗り込むと、それは

 無人タクシーのようなサービスだった。車内の立体映像を

 触ると自動で走り、降りる時に料金を払う仕組みのようだ。


 相変わらず自動運転か・・・グラビランナーでタクシーって

 儲かるのかな。空を飛べるから交通規制もなさそうだし。


  黄色いグラビランナーが離陸し、ビルの谷間に消えて行った。

 二人を乗せたグラビランナーを追うために、ジュリアも階段

 上る前に頼んだグラビランナーのタクシーに乗り込んだ。


  距離を保ちながら、空中に浮かぶ二台の黄色いグラビランナーは

 ミシェルが待つ高層マンションに向かっていった。一方、ミシェルは

 用意された部屋でピザを食べていた。ミシェルはつぶやいた。


「もうすぐジンくんと会える・・・そうだ、ピザ残しておこ。」


  サランラップを取りに台所に向かうと、インターホンの音が鳴った。

 ミシェルがモニターを見ると、ボサボサ頭で髭面の男が立っていた。

 黒髪で茶色い目をしており、ミシェルがまったく知らない男だった。

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