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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南


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第9話 決着

  中庭でナジュリに倒されたジンは、再び職員達に拘束された。

 そしてジンが目を覚ますと、円形のLEDシーリングライトが

 映っていた。尋問室で見た天井と違い、ベージュ色の天井だ。

 ジンの右側には朱色のカーテンが見える。目の前には絵画が

 部屋の壁に掛けられ、そして左側には謎の女が座っていた。


  その女は金髪碧眼で、女の髪型はポニーテールのように見える。

 リンゴを剥きながら、余裕綽々な態度で、こちらを見つめている。

 ジンは体を起こそうとしたが、パワードスーツは反応しなかった。

 赤い軍服姿の女は、状況を理解できないジンに話しかけた。


「ほぉ。もう意識を取り戻したのか。強い子だな。」

「・・・・・・あんた、何者だ?」

「私はナジュリ・ゲオルギオス・ラ・ヴィンストン。

 特務省ジャッジ・オフィスの特務長官だ。お前と戦った男の上司だよ。」

「・・・・・・あいつか。なぁ。今、何時だ?」

「今は夜の八時だな。中庭での出来事から48時間は過ぎている。」

「!!」

「心配するな。お前の行動が記録されたデータを、うちのAIが解析してな。

 ミシェルという仲間がデウスハイムにいるんだろ? 既に彼女の身柄は

 こちらが預かっている。手荒なことはしていないのを約束しよう。」

「ウソじゃねえだろうな?」

「ふむ。では、これを見せるか。」


  ナジュリはジンに小型のタブレット端末を見せた。スクリーンにミシェルが

 映っている。どうやら軟禁状態のようだ。美味しそうなケーキを食べている。

 元気そうな様子にジンは無表情のまま、安堵した。その様子を見たナジュリは

 ジンに対して微笑んだ。その反応を見たジンは、ナジュリに話しかけた。


「あんた・・・・・・オレに何をさせたいんだ?」

「話が早いな。我々はキャサリンを殺害した真犯人を追っている。

 ベンジャミンが言った通り、お前と司法取引をしたい。」

「・・・・・・取引条件は、まずミシェルを解放しろ。」

「分かった。では、そう伝えよう。お前は捜査に協力してくれるな?」

「ああ。どっちにしろ、オレの目的はアンソニー・ロズノフの情報だった。」

「・・・ロズノフか。やはりな。」

「どういう意味だ?」

「あの男はキャサリンに弱みを握られたようでな。動機がある。」

「なら、さっさと逮捕しろよ。」

「証拠が持ち去られた。いくら我々でも物的証拠がなければ起訴できない。

 それに・・・・・・奴は経政連とも深い関係を持っているのだ。権力者には

 権力者でしか対処できないのだ。だからキャサリンは私に取引を持ち掛けた。」

「キャサリンはロズノフを売ろうとしたのか?」

「ああ。ロズノフはMeroメロ社に投資していたからな。会社経営にも口を出す

 物言う株主アクティビストだった。それがキャサリンにとっては目障りだったようでな。

 暗部ダークサイトでロズノフの犯罪行為を知り、それをネタに奴を脅していたようだ。」

「あいつの犯罪行為ってなんだ?」

「キャサリン曰く、資金洗浄マネーロンダリングのようだ。ギャングや四大企業の汚れた金を

 仮想通貨に変えて、その仮想通貨をVRゲームの仮想通貨に変え、代理人が

 VRゲームにダイブし、ゲームの仮想通貨をRMTリアルマネートレードで現金化したようだ。

 その代理人が厄介でな。AIエージェントも関わってて、追跡に困っている。」

暗部ダークサイトには記録されていたってことか。」

「ああ。そして暗部ダークサイトは何者かに破壊された。これで証拠も失った。」

「どうやらロズノフは自由の身のようだな。どうするんだ?」

「まだ自白が残っている。なのでお前には、我々と共に仕事を手伝ってほしい。」


  ジンはナジュリが情報提供の代わりに捜査協力をさせようとしていることに

 気づいた。この女はしたたかだな、と思ったジンは彼女に追加条件を話した。


「情報提供じゃなくて業務委託なら、これは商談になっていくな。」

「分かっている。ふむ、何が望みだ?」

「長期契約を結びたい。オレも経営者でな。今後は特務官ジャッジナイトから法的に

 守ってくれないか? うちは機械生命体ミュータント機械化人間サイボーグ専門の企業でな。

 そいつらと戦うのに禁呪魔法を使うんだが、毎回検挙されたら身が持たねえ。」

「なるほど・・・目をつぶれということか。あと、ハンクに投資していた連中から

 お前を訴えたいと要望書が届いていた。それとクーロンの会社からもな。

 お前のせいで株価が急落したことにクーロンは激高しているようだ。」

「そいつからも守ってくれ。その代わり、あんたの依頼を優先的に受けるよ。」

「アハハハ!!」

「・・・・・・あんた、笑い方下手くそだな。目がマジだぜ。」

「すまないな・・・私は何年も笑ったことがないんだ。」

「オレも笑えないんだよな。会社も赤字が続いているからな。」

「確かお前の会社は非公開会社だったな。経営状況がそんなに悪かったのか。」


  ベッドから動けないジンはナジュリに電子契約書を作らせると、ナジュリは

 タブレットの量子通信でジンのメモリに保存させた。量子通信はその構造上、

 傍受されないが、長距離には中継技術が必要であり、人工衛星が担っている。

  その人工衛星を販売しているのがクーロン・マッキードの会社であった。

 ナジュリはベッドに横たわるジンに対してこう言った。


「万全を期してお前との契約を守りたい。だから外での量子通信で私と連絡は

 出来ないと思ってほしい。長距離の場合は衛星に一度保存される仕組みでな。

 クーロンが衛星を調べることによって我々の関係を知る可能性がある。」

「おいおい。そりゃ慎重すぎないか? どうやってあんたとやり取りするよ?」

「心配するな。考えはある。お前に負けたベンジャミン・ベーコンだ。あいつの

 量子操作魔法で人間サーバーとなったベンが中継することで私の指令をお前に

 伝えることが可能だ。ベンの口を通して私の声がお前の脳に届くようになる。」

「ええ・・・・・・あいつの声がお前の声になるのかよ?」

「ああ。ベンは私の電話として動くことになる。これなら人工衛星を通さない。」

「だけどあいつの姿は目立つだろ?オレと会っていたらバレるじゃねえか。」

「まずお前は証拠不十分で、保護観察付執行猶予となる。そして保護観察官の

 ベンがお前と行動を共にする。お前のことを訴えたい連中も首輪が付いていると

 考える。これで連中がお前を殺そうと動けば、特務省ジャッジ・オフィスも敵に回すからな。」

「・・・・・・なるほど、そういうことか。オレに負けたベンジャミンはあんたに

 借りがある。あんたに逆らえないベンジャミンも作戦に強制参加って訳か。」

「ああ。ベンも汚名返上ができるだろう。私も優秀な部下を辞職させたくない。」

「経政連はどうするんだ? あんたは奴らに逆らえないだろ?」


 ジンはアミが言っていたことを思い出した。特務官ジャッジナイトは経政連直属の親衛隊だ。


「既に上と話はつけてある。たとえクーロンがシティ最強の権力者でも、議会は

 平等だ。多数決でクーロンの要望である、お前の公開処刑も止められる。特に、

 お前は重要だ。地球からの転生者だからな。上もお前がここで命を絶つことを

 望んでいない。地球への手がかりやお前以外の転生者に影響を危惧している。」

「他の転生者がなんでオレと関係があるんだ?」

「今のシティは移民に対するヘイトが高まっていてな。もし転生者だと暴露され、

 お前の公開処刑が行われたら、他の転生者も立場が危うくなる。既に何人かの

 転生者は自己申告しているからな。まだ世間にはバレていないが、お前の正体が

 バレるとシティ生まれの連中は転生者も危険人物として疑うようになる。」

「・・・・・なるほどな。シティで襲われるようになる訳か。」

「そうだ。では、商談成立だな。約束通り、ミシェルは解放した。今後は我々が

 全力でお前のサポートもしよう。お前への依頼は、コレクターの捕縛だ。奴を

 捕まえてロズノフも引きずり出す。ベンとお前、そして私で奴を問い詰める。」

「コレクターのことだが、そいつ光学迷彩を持っていたぜ。あとワイヤーで

 攻撃するようだな。オレに対しては攻撃しなかったようだが・・・。」

「ふむ。確かにマシュアだけを始末したのも気になるな。よし、では___」


  その後、部屋に不貞腐れたベンジャミン・ベーコンが入ってきた。ジンの

 保護観察官として働くことを誓ったベンジャミンはナジュリと共に部屋を出た。


  翌日、プライドシティのビジネス街にある商社で、逮捕されたジンについての

 雑談をする従業員が居た。彼らはコレクター事件が解決したと思っていた。


「いやぁ~。やっとこの街の連続殺人鬼もいなくなるのか。ほっとしたよ。」

「ですよねぇ~。あたしも今まで帰るのが怖くて、防衛用ヒューマノイドの

 警備サービスを利用していたんですけど、これで節約できるようになります。」

「エスカちゃん、ロボットに身を守ってもらっていたの?」

「はい。うちは会社から遠いし、初月無料なんで契約してました。」


  同僚の男性にエスカと呼ばれた女性は、笑みを浮かべた。ショートヘアで、

 赤いメッシュが入った青い髪の彼女は、社内で一目を置かれていた。彼女は

 新人でありながら、コード修正をAIよりも正確に行えるので、重宝されていた。

 そして一人の男性社員が彼女の席に駆け寄ってきた。金髪碧眼、眼鏡を掛けた

 男性社員は困っている様子で、談笑するエスカ・ミューランデに話しかけた。


「ごめん、エスカさん・・・いま、ちょっと良いかな?」

「あ、はい。課長、どうしたんですか?」

「実はうちのAIエージェントがまた業務を放棄してね。仕事する振りをしながら、

 VRガールズバーで遊んでいたんだよ。最近自我が芽生えているのかな。それで、

 またエスカさんに仕事を頼みたいんだよ。頼む! どうか代わりにプロダクトを

 完成させてくれ。今日中に納品しないと、上もピリピリしているんだ。」

「えええ!? またですか? あいつクビにした方が良いですよ!!」

「とは言ってもねぇ・・・契約はあと1年残っているから難しいんだ。」

「あー・・・はい。分かりました。あたしが何とかしますよ。」

「悪いね。給料、また上がるから。この分だと僕よりも先に部長になれるよ。」


  エスカは席を立ち、部屋を出て行った。腕に着けた旧式の腕時計を見ると、

 既に午後3時になっていた。エレベーターの扉が開き、エスカは乗り込んだ。



 誰もいないエレベーターの中で、エスカは独り言をつぶやき始めた。



「・・・・・・これが社会か。だるいな。この人間の脳にも飽きたな。

 そろそろ別の脳に入れ替えるか。三日前に手に入れた女社長の脳にするか。

 ボスはもう好きにしていいと言っていたしな。進化学習に使おうか。」


  突然エスカは男のような声で喋った。声は低く、中性的なイメージだった。

 エスカが笑っていると、量子通信状態に入る。相手は声を機械で加工していた。


「N-XXダブルエックスよ・・・私だ・・・・・・。」

「ボス、どうしましたか?」

「ジン・ゼッカードという男が釈放された。」

Meroメロ社で会った男ですね。任務には含まれたなかったので見逃しましたが、

 やはりすぐに消すべきでしたかね?」

「仕方ない。公開処刑にしたかったからな。」

「地球からの脅威を演出したかったのですね。」

「ああ。だが、今後は難しそうだ。それで奴らに気づかれることなく、次の任務に

 移行しろ。標的はシンク・ディファレントのCEO、ルカ・フェルメスだ。」

「かしこまりました。ボス、失礼します。」


  エスカは量子通信を終えると、エレベーターの扉が開くと同時に声を元に

 戻した。扉の向こうには女性社員達が立っており、彼女達はエスカに気づくと

 軽く会釈した。エスカも会釈し、プロダクトを作る部屋に向かっていった……。





 プライドシティ 高級住宅街 ヴァルキュリオン地区





  プライドシティでも富裕層が集まるヴァルキュリオン地区。その中でも

 豪華な装飾が施された門が見え、武装した警備員が石造りの見張り台に

 立っていた。屋敷はまるで中世ヨーロッパの貴族が住むような佇まいで、

 その屋敷の窓から男性の怒鳴り声が響いていた。


「ふざぁけるなぁ!! 私がどのくらい金をつぎ込んでいたのか分かっているのか?

 それなのに評決を受け入れろだとぉ!? どういうつもりだ、クーロン!!」


  スキンヘッドと碧眼、高身長の年老いた男性が大声を出して、通信相手に

 怒鳴っている。男性の指には貴金属の指輪がはめられ、杖で体を支えていた。

 ビンス・シュドルフ・ゴドリアス。異世界のエネルギー産業を牛耳る大企業

 Energeosエネルジオス社のCEOである。今は亡き父親が創業した会社を引き継いだ彼は、

 宇宙太陽光発電を実現させるために、当時人工衛星共有サービスで成功していた

 クーロン・マッキードと手を結ぶ。やがて宇宙太陽光発電事業が軌道に乗ると、

 エネルギー業界で新参者の彼は、古参の電力会社から嫌われるようになった。


「貴様のおかげで我が社は太陽エネルギーを独占できた。だが、それと

 これとは話が別だ!! お前の会社の株価を下落させた奴をなぜ庇う!?

 報道動画で、お前はジンという男に激怒していたではないのか?」


 一方、通信相手のクーロンはのんびりとした態度で、ゴドリアスに答えた。


「まぁまぁ。落ち着いてください、ビンスさん。物事をすべて宇宙スケールで

 考えてください。俺達は今、太陽を中心に回っている惑星なんですよ。」

「何を言っているんだ貴様は!! 八千億ダナーの損失だぞ!?」

「問題ありません。俺らは既に、年間で1がいダナーも稼いでいるんです。

 たかが八千億ダナー、微々たるもので隕石のようなものですよ。」

「ふん!! 貴様は我が社の電力を浪費するだけではないか!? 宇宙のためと言い、

 消費電力が激しいロボットどもを大量生産しているが、いつになったら我々は

 地球を見つけることが出来るのだ? なぜまだ見つけることが出来ないのだ!!」

「地球は俺らと同じ太陽という名前の恒星の周囲を、回っている惑星なんすよ。

 研究者の中には多元宇宙論で何百億光年も離れていると言っている奴が

 居ますけど、俺の見立てでは、すぐ近くに別の太陽系があると思います。」

「分かった、分かった!! 宇宙の話はもういい。それよりもなぜ受け入れた?」

「理由は簡単です。今、太陽なのは7大企業セブン・パワーズです。なので俺ら新参者は、

 ブラックホールが発生するのを待つんですよ。」

「・・・・・貴様、私の話を聞いていないのか? 宇宙の話はやめろ!!」

「分かりました。つまり、俺らが経政連で多数派になればいいんですよ。」

「3人が7人にどうやって多数派になると言うのだ!!」

「簡単なことです。7人には消えてもらいます。俺ら3人で議会を回します。」

「!? そんなもの、民主的なプライドシティで通用するのか?」

「だから新しい体制を創造するんです。初代大統領は俺、初代行政長官は

 ビンスさん。初代司法長官はアーデルマイト。これで三権分立ですよ。」

「な、なにをバカなことを言っている!! まるで独裁政治ではないか?」

「会社経営も今まで俺ら一人で出来たでしょ? シティも出来ますよ。」

「・・・・・・まぁ、お前はジンを泳がすのだな? 私はロズノフに

 連絡して手を打つ。八千億ダナーの損失は償ってもらうつもりだ。」

「そうですか。俺は今から海で泳ぐんで、失礼しますね。では___」


  量子通信を終えた海パン姿のクーロンはこめかみから指を離すと、

 彼に抱きつく水着姿の女性二人の腰に手を置いた。白いビキニ姿で、

 褐色肌のエルフの女性が優しく微笑んだ。もう一人は青いビキニ姿で、

 オレンジ色の髪が特徴のヒトだった。女性二人は豊満な胸と整った

 顔立ちをしていた。やがてクーロンと二人はソファから立ち上がると、

 豪邸の屋外テラスから目の前に見えるビーチに向かって歩き始めた。




 プライドシティ 繁華街 オリエント地区




  地球にある居酒屋のような場所で、二人の男達が席に座った。一人は

 豹のような獣人であり、両腕を改造した機械化人間サイボーグであった。もう一人は

 苔のようなモスグリーンのフード付きトレンチコートで顔を隠した男だった。

 フードで顔を隠した男は、豹の機械化人間サイボーグに謎の女性が映った写真を見せた。

 デジタル画像に慣れていた豹の男は、フードの男に対して言った。


「へぇ。懐かしいな。90年前に、使い捨てカメラで撮った写真を思い出した。」

「・・・デジタルでは敵に知られる恐れがある。この女は、機械生命体ミュータントだ。」

「!! 人間にしか見えねえ。機械生命体ミュータントはモンスターみたいな面だろ。」

「そうだ。今までな。だが、最近新種が見つかってな。

 そいつはヒトの脳を集めている。若い奴が標的だった。」

「・・・・・・コレクターじゃねえか。やっぱりジンって奴じゃなかったか。」

「やっぱりとは?」

「あいつは個人主義者で機械相手しか戦わない。生身に一切興味がない。

 そもそもあいつが機械化手術カスタマイズを始めたのも、ある機械化人間サイボーグと決着を

 つけるためだった。そいつは黒い騎士のような姿でな。ガルフロードと言う。」

「なるほど、そうなのか。・・・話を戻そう。お前に依頼するのは、この女を

 消してくれ。最早そいつはシティにとっては害悪でしかない。」


  豹の男が見ている写真には赤いメッシュが入った青髪のエスカが写っていた。

 だが、エスカの首から下は赤いパワードスーツだった。胸元には青いエネルギー

 コアのような物質が埋め込まれている。ジンと違い、女性の胸だと分かるような

 盛り上がったバストが特徴だった。豹の男は写真をライターで燃やし始めた。

 豹の男は席を立った。逆にフードの男は椅子に座ったまま、豹の男を見送った。




 プライドシティ ビジネス街 ワールド・キャピタル地区




  特務省ジャッジ・オフィスの自動ドアが開いた。ジンが外に出ると、雨が降っていた。

 ジンは隣の武装したオークの特務官ジャッジナイトに会釈し、傘を持たずに歩き始めた。

 パワードスーツを隠すためにナジュリから渡された茶色いトレンチコートを

 着用している。帰り際に、ナジュリから赤い傘も渡されたが断った。傘は

 どう見ても女性が使うような赤と白いバラが入ったデザインだった。また、

 ナジュリにこれ以上借りを作りたくなかった。こき使われると思ったからだ。


「さて、ミシェルは_____」


  ジンの目の前に白い服を着た人物が立っている。黒い傘を持っていて、顔が

 見えない。もしかしてと思ってジンは走り出したが、数秒後には後悔した。














「ヤァ★ 残念でしたぁ!!!! 僕だよ!!」


  それは白いタキシード姿のベンジャミン・ベーコンだった。傘を持ち上げ、

 顔を見せて、見つめるジンをあざけり笑った。ジンはため息を吐き、話し始めた。


「おい。話が違うじゃねえか。迎えに来るのはミシェルのはずだぞ。」

「フハハハハハ!! 僕はな、リアルが充実している奴が大嫌っいなぁんだよぉ!!!

 特にお前みたいなロボットが魔族の女と付き合っているとかぁ、反吐が出る!!」

「ちっ。てめえ・・・ミシェルに何をした?」

「おっと。僕は紳士的な魔族だからね。もちろん先にお前がこれから住む

 マンションの部屋に案内したよ。・・・言っておくけどな、これは長官に

 対する恩を返すためだ!! 勘違いするなぁ!!! お前のためじゃない!」

「はいはい。分かったよ、ベン。それじゃあ、そのマンションに行くか。」

「僕に指図するな! 来い、地下鉄で行くぞ!! 僕の愛車に乗せるかよ!」

「地下鉄か・・・・・・そういや初めて乗るな、異世界の。」

「ふん!! 電車代は僕のおごりだ!!! これであの決闘は決着だ!!」


  黒髪でオッドアイのベンジャミンは、金髪で青い目のマスクをしたジンと

 一緒に歩き出し、数分後に見つけた地下鉄の階段を降りていく。そして彼らの

 後ろには赤い髪で褐色肌のジュリアが居た。ジュリアは心の中で喋った。


 え? ジンじゃん。ん? なんか見たことない男と一緒に歩いているけど…。

 も、もしかして、二人ってそういう関係だった? いやいやいやいや。

 落ち着け、あたし。なんでジンを勝手に自由愛者リバティーと決めつけるんだよ。

 そういうのが今はダメな時代なんだって社長も言っていたの思い出した。

 うん、尾行しよう。一応、ジンは商売敵だし、偵察だから。うん・・・。


  自分自身の感情を抑え、ジュリアはジンとベンジャミンの後を追った。

 ジュリアはとっさにフードで頭を隠し、落書きが目立つ電車に乗り込んだ。

 ジンとベンジャミンはつり革につかまって立っている。ジュリアは離れた

 席に座って二人を見た。白いタキシード姿の男はニヤニヤ笑っていた。

 それに対してジンは無表情で、ますます混乱したジュリアは頭を抱えた。

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