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工学系女子シリーズ(異世界・恋愛、仕事)

【工学系女子シリーズ①】モテない銃職人女子、幼馴染のSランク勇者候補に溺愛される ~ダンジョンデートに行ったら兄が本気で邪魔してきました~

作者: コフク
掲載日:2026/02/07

フェリア・ブラントは十五歳。

モテない銃職人だが、幼馴染のSランク勇者候補だけは、昔から距離が近すぎる。


十五歳にして、実家の銃中心の武器専門店を手伝う、銃と爆弾専門の武器職人をしている。ここは、アルセリア王国の小さな町、カルン。

フェリアは店で、今日も肩下まである赤毛を無造作にまとめ、小柄な体に煤だらけのエプロン姿で店先に腰かけて、細かい工具で銃を調整し、銃身を磨いている。

「嬢ちゃん、そんな格好じゃ男は寄ってこねぇぞ」

常連のおっさんが笑う。

「今日は何かお探しですか?それともこの間の銃の修理ですか?」

フェリアはすかさず要件を聞く。

「え、ええっと、こないだ買った銃の、追加の弾買いに来た。前と同じので」

横で帳簿をつけていた兄ガルドが代わりにおっさんの話を受ける。

「フェリアには男は寄らない方が、学業と武器制作に集中できていいんだよ。

しかも今年、この国でも指折りの難関校、王立アルセリオ工学学院・女子部工学系コースに、1年早く合格した。これからさらに、男どころじゃなくなるさ」

「王都の学校だろ? 可愛くすりゃ、モテるチャンスじゃねぇの?」

「駄目です。モテないほうが幸せです」

ガルドが即答した。

「モテなくても、一生この店にいれば良い。銃と爆弾と僕ら家族は裏切らない」

「「一生!?」」

おっさんとフェリアの声が揃ってしまう。


そのとき、店の外がざわついた。

「きゃー!レオン様だ!」

「今日もかっこいい!」

通りに人が集まる気配がする。

ガルドの眉がぴくりと動く。

「……来たな、害虫」

扉が開く。

「フェリア!」

金色の髪をなびかせ、颯爽と入ってきたのは、幼馴染のレオン・クラインだった。

フェリアの1つ歳上の、まだ十六歳だが、最近率いるパーティーがギルド公認Sランクになり、この町で一番勇者に近いと言われている。

それに加え、長身に整った顔立ち。

町で一番モテる少年だ。

――なのに。

その青い目は、一直線にフェリアだけを捉えている。

「今日はどうしたの?」

「工学学院合格、おめでとう」

レオンは少し照れたように、背中に隠していたものを出した。

一本の、赤いチューリップ。

ガルドが睨む。

「なぜ知っている」

「合格発表の日、掲示板の前で三時間張ってました」

「怖いだろ」

フェリアは花を受け取る。

「きれい、ありがとう」

花瓶代わりの空き瓶に挿す。

「実は僕も今度、勇者候補として、王都の討伐に参加することにしたんだ」

フェリアは顔を上げる。灰色の、目が合う。

レオンは少し照れながら言う。

「王都でもフェリアのそばにいられるように、僕は王都で勇者を目指す」

フェリアは首をかしげる。

「女子部だからそんなには会えないと思うけど……。

 友達出来るか不安だから、たまに会えたら嬉しいかな」

「あと、王都に行く前にさ」

少し間を置いて。

「ダンジョンデート、しない?最近出来たダンジョンがあるんだ」

「行く!また最近作った武器があるの。銃で、レオンに試してほしいのと、力が無い女の子用で私が試してみたいのと、あと、爆弾もいくつか……」

「やった!」

レオンが小さくガッツポーズをする。が、

ガルドが机を叩く。

「却下ァァァ!!

二人きりで、ダンジョン!?いろんな意味で駄目!

危険な魔物、暗い、そもそもお前が危険! アウト!!」

「お兄さん、僕はSランクですし、それほどレベルの高い魔物は出ないダンジョンなので、大丈夫です」

レオンは真顔。

「何かあっても、僕が責任を取ります。僕はフェリアと結婚する前提で人生設計立ててます」

ガルド、胸倉を掴む。

「お前の兄さんじゃない!勝手にフェリアを人生設計に組み込むな!」

フェリアがどうしても武器を試したいと懇願したことにより結局、

・ガルド同行

・回復役同行

という条件で許可が出て、店が休みの2日後に、ダンジョンへ行くことになった。

________________________________________

ダンジョンは、町のはずれの山の裾野にあった。

洞穴のような入口を前に、フェリアはレオンに一丁の銃を差し出す。

「レオン用に作ったの。片手剣がメインだろうから、片手でも使えるように反動軽め」

「……僕のために作ってくれたんだね。専用の革ベルトも」

両手で受け取り、腰にベルトと一緒に、愛おしそうに取り付ける。

「大事にする」

「遠慮せずバンバン使って後で使い心地教えてね」

フェリアが笑顔で言うと、

その後ろにいたガルドがにやっとして口を挟む。

「その試作品が良かったら、量産するからな」

「フェリアの役に立つなら、嬉しい。――でも愛のこもった本物は、一つだけだよね」

レオンは銃を手に取って、チュッと軽く口付ける。

「くっ、何でも良い意味に取りやがって……」


回復役のピナはレオンにぴったりくっつく。最近レオンのパーティーに入ったらしいが、明らかにレオン目当てだろう。

「レオン様ぁ〜♡ ピナが守りますねぇ〜」

フェリアを見る。

「やっぱり前衛の隣に立つのは、一緒に戦える女の子の方が似合いますよね?

フェリアさんは、後方支援ならできますかぁ~?」

「私、前で爆弾投げますから、それも含めて防御お願いします」

「えっ」

フェリアは腰に一丁軽い銃を差し、後ろには色々入っていそうなリュックを背負っている。

兄ガルドも、短剣2本を腰に差し、散弾銃を背負って向かう。

________________________________________

ダンジョンに入ってすぐの序盤戦。

一定間隔でスライムが出現してきた。

ピナはレオンにだけ防御魔法をかける。

「『雑魚一層』!」

フェリアはそう言うと、手に持っていた小型爆弾を転がす。

ぽん。

ぼふっ。

敵が消滅。

「相変わらずすごいね」

レオンが感心する。

「でも粉々過ぎて、素材も何も残らないな」

ガルドが言うと、フェリアがポケットから出してメモを取る。


奥に進んで行くと、スライムがフェリアへ体当たりした。

ぽす。

「ちょっと痛い」

ガルドが怒鳴る。

「ピナァァ!!回復うー!」

「い、今かけますぅ!」

レオンも低い声。

「防御魔法、全員にかけて」

渋々、フェリアとガルドにも防御魔法をかけた。

________________________________________

さらに下の階へ進む。

まだ魔物は出てこない。

レオンが、銃を片手に、フェリアにそっと話しかける。

「今のうちに、銃、教えて。この持ち方で良かったっけ?」

「いや、ここは、こうやって――」

フェリアが後ろから手を添える。

レオン、指を絡める。

「……フェリアの手、小さい」

「作業でまめもできて、硬いけど」

「好き」

ガルドが割り込む。

「はい、そこまで。ダンジョンに集中してくださーい」

「ちっ、残念」


進んで行くと、ゴブリンなどが出てきて少し強くなってくるが、レオンとガルドが剣ですぐに倒してしまった。

「銃も試したいな」

フェリアがぽつりとつぶやく。


さらに奥まで歩いていくと、やっと、上前方からコウモリ型魔物が3体現れた。

フェリアが撃つ。

パンッ。パンッ。パンッ。

全て命中。

「かっこいいね……また銃の腕、上がった?」

「銃の試し打ちしてるうちに腕上がったかも」

「そうなんだね、好き。」

レオンがフェリアに近づき、肩に手が触れかけたところで、ガルドが間に割り込んで睨む。

「近い。一メートル離れろ」

「遠い!」


「私も間に入りますっ」

ピナまで二人の間に無理やり入ってくる。フェリアの身体にどんっと当たって、フェリアが少しよろけた。

「お前は回復も防御も足りないばかりか余計な事まで!邪魔、返品だ!」

ガルドが怒鳴ってピナとフェリアの間に手を伸ばし、フェリアをかばう。

「暴力はやめてください!ダンジョン内での返品は不可!」

ピナも大きな声で食って掛かる。が、身体は後ろの壁際まで後ずさっている。

「ただでさえ、余計なもの見せられてイラついてるんだ!」

ガルドがピナの横の岩壁をどんっと拳で打つ。

「壁ドンはレオンさま以外は不可ですっ!……あれ?」

ずささーっと、後ろの岩壁が崩れ、ピナは尻もちをついた。


________________________________________

壁が崩れた後ろから現れたのは、広い空間。

「隠し部屋だ」

レオンが言う。

「あ、あそこ、魔物!」

一つ目の巨人が、大きな部屋の奥に立っていた。

「これ、ダンジョンの、ボス?」

「強い奴じゃない?おっきい」


「ピナ、防御かけて!僕らの強化も!」

先ほどまでと一転して真剣な表情になったレオンが言うと、

ピナが慌てて杖を振り、防御魔法と強化魔法をかける。

……レオン中心。ガルドとフェリアは薄い。

ガルドが睨む。

「差別すんな」

ピナが不服気にかけ直す。


フェリアは強い敵が嬉しすぎてニマニマしながら、リュックから爆弾を取り出して、巨人の足元に放る。

「まずはこれね。『足取られ~る』!」

巨人の足元がねばねばになり、前に進めなくなる。

すかさずレオンとガルドが前に出ようとすると、

「攻撃、まだちょっと待って」

銃にも何か込めると、

「『目の前まっしろ』!」

パンッ。

巨人の目の前で弾ける。

一つ目が真っ白な膜に覆われ、巨人がさらに苦しみだした。

「はい、レオンどうぞ。できれば銃、使って」

「あ、ああ」

レオンが銃で撃ち当たるが、巨人が暴れているため、若干逸れて致命傷にはならず、まだ倒れない。

ガルドも散弾銃を放つ。

巨人がますます苦しみ、怒りの声を上げる。

「そうか、敵が動いちゃうと、命中率が下がるのが問題ね……」


すると、足元のねばねばの効果が切れ、

巨人が向かってきてハンマーを振り上げた。

ピナが悲鳴を上げ、逃げる。

「おいこら、防御魔法だろ!」

ガルドが叫ぶ。

最前線のレオンの目の前に、ハンマーが振り下ろされようとしていた、その時。

フェリアは銃に素早く弾を込めてレオンの横に出ると、両手でグリップを握り、引き金に掛けた指に力を込めた。

(レオンが傷つくのは、絶対に嫌)

「本当はもっと他も試したかったけど……『貫通弾』!」

パンッ。

巨人の目の真ん中を打ち抜いた。

ダーーン!

巨人は砂埃を上げてその場に倒れ、動かなくなる。

即死。

暫く一同、沈黙。

「……フェリアさん、かっこよ……」

ピナの目が輝く。

「武器の名づけセンスはいまいちだけど、ファンになりました!

 ふたり、カップルで推す~!」

レオンが嬉しそうに照れる。フェリアは巨人の死骸を確認中で聞いていない。

「カップルじゃないし、センスも良いだろ」

 ガルドは一人、不服気だった。


________________________________________

部屋の奥にあった宝箱から武具、巨人も素材になるところ回収して地上に戻り、ギルドに報告すると、まだ見つかっていなかった部屋だと喜ばれた。

ガルドとフェリアのランクも上がるとの話。武器職人が本業の二人はあまり興味が無いが。


店に戻り、片隅に、フェリアとレオンが腰掛ける。

窓からは、オレンジ色の夕日が差し込み、二人の顔も半分染まっていた。

レオンがそっと、言う。

「フェリア、今日は一緒にダンジョン行けて、良かった」

「うん。私も色々試せて良かった。レオンの銃は、命中率上げる方法考える」

フェリアが手を出すと、レオンがちょっと残念そうに銃とベルトを手渡し、銃ごとフェリアの手を上から握る。

「また、改良したら渡すから」

フェリアが言うと、名残惜しそうにレオンの手が離れた。

「じゃあ、また頻繁に通わないとね。

それと……」

見つめあったまま、レオンの顔が、近づく。

「僕は王都のギルドに入る。王都でも、フェリアの武器を使いたい」

「……感想くれる?」

「もちろん」

ガルドが割り込む。

「業務連絡だけね」


レオンは、もう心に決めていた。

――王都でも、ずっと一緒だ。

勇者になったら、告白する。

その時はきっと、もうフェリアは断れない。


フェリアはまだ知らない。

そんな彼の気持ちも。


自分が武器を改良するたび、

少しずつ逃げ道を塞がれていることも。


そして、赤いチューリップの花言葉が、

「愛の告白」であることも。



読んでくださりありがとうございます!

よろしければブクマ・評価いただけますと嬉しいです。

銃職人女子フェリアの続編は、シリーズ④、⑥を予定しています。

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