第五話:色彩の嘘、透明な恋
グラフィックデザイナーである蓮は、色のない世界を嫌う男だった。 久しぶりに再会した彼は、加菜恵を見るなり、壊れ物を扱うような手つきでその肩を抱き寄せた。
「加菜恵、本当に、無事でよかった……」
彼の胸からは、お気に入りの画材の匂いと、少し焦ったような体温が伝わってくる。加菜恵はその鼓動を感じながら、自分の胸の静寂が彼に伝わってしまわないか、それだけが怖かった。
二人は、かつてプロポーズに近い言葉を交わした海辺の公園へと向かった。
蓮はスケッチブックを広げ、慣れた手つきでペンを走らせる。
「見て。次のプロジェクトのデザイン、加菜恵のイメージで組んでみたんだ。優しくて、でも芯が強くて、ずっと見ていたくなるような色」
見せられたタブレットには、柔らかな暖色系のグラデーションが広がっていた。それは、加菜恵がかつて「こんな部屋に住みたいな」とこぼした色使いに似ていた。
「これね、十周年とか、二十周年の記念モデルにも展開できるようなシリーズにしたいんだ。僕らが歳をとって、もっと渋いデザインが似合うようになる頃まで、ずっと続くような仕事をさ」
蓮は眩しそうに、未来の光景を語る。
「楽しみだね。……蓮君のデザインが、街中に溢れるの」
加菜恵は精一杯の微笑みを返した。しかし、蓮が「これ、どうかな?」と加菜恵の指先に触れようとした瞬間、彼女はとっさに手を引っ込めた。
「……加菜恵?」
「ううん、なんでもない。ちょっと風が冷たくなってきたから」
彼女の瞳に映る蓮の姿が、涙で揺れる。彼が描く「ずっと続く仕事」の中に、自分はもう居合わせることができない。その事実が、鋭いナイフのように彼女の透明な心を切り裂いた。
この作品はAI60%、筆者40%で書きました。
指摘や感想とか頂ければ励みになります。




