第四話:反抗期の背中と、父の背中
その日の夕食後、加菜恵は台所に立つ妹、結衣の隣に並んだ。 結衣は高校三年生。受験のストレスと、姉が死にかけた恐怖への反動か、事故後は一層口数が減っていた。
「結衣、お皿拭くの手伝うよ」
「……いいよ、別に。座ってなよ、病人なんだから」
「もう病人じゃないよ。ほら」
加菜恵が手を伸ばすと、結衣はパッとその手を払いのけた。
「触らないでよ! ……怖いんだよ、お姉ちゃんが。なんか、いつの間にか遠くに行っちゃいそうで……」
結衣の瞳に涙が溜まる。彼女は反抗期の殻に閉じこもることで、溢れ出しそうな不安を守っていたのだ。 加菜恵は何も言わず、結衣を後ろからそっと抱きしめた。
「……ごめんね。でも、私、ここにいるよ。結衣が大人になって、素敵な女性になるのを、一番近くで見守ってるから」
夜の闇の中、正一は不器用に煙草に火をつけた。
「加菜恵」
「なあに、お父さん」
「……お前が会社を辞めた時、俺は正直、ホッとした。お前は昔から、他人のことばかり考えて、自分を後回しにする。……少しは、自分のために時間を使え」
父の横顔は、街灯の光に照らされて深く刻まれた皺が際立っていた。誠実に、真っ直ぐに生きてきた男の背中。
「お父さん。私、お父さんとお母さんの子で、本当に幸せ。……それだけは忘れないで」
正一は煙を吐き出し、空を見上げた。 「当たり前だ。……明日、蓮君が来るんだろう。しっかり、美味しいもの食べさせてやれ」
父の言葉に、加菜恵は胸が締め付けられる思いだった。 明日は、恋人の蓮と会う日だ。 「未来」を信じている彼に、自分はどんな顔をすればいいのか。
月明かりに照らされた加菜恵の横顔は蒼く輝いていた。
この作品はAI60%、筆者40%で書きました。
指摘や感想とか頂ければ励みになります。




