【本編】※以下、イメージ映像でお送りします
朝職員室へ入り、夜布団で眠るまでの間、私の頭の中につきまとう存在があった。
放課後の道場。
剣道部顧問を務める私の目の前で今、二人の乙女が対峙している。
立ち姿には一見して静謐を湛えながらも、両者の間にはひりつくような熱気が渦巻いていた。
可憐なる双華の剣士。私はこの二人から目が離せないでいるのだ。
「面……」
「ドォ――ッ!」
後の先での胴打ち。だが、浅いか。
両者は即座に切り返しを図る。
「小手ぇっ!」
「メェエエン!」
剣風こそ異なれど、太刀筋にはどちらも迷いがない。
勝負はこのまま進むかと思われた、その矢先。
「……颱翻!」
「ヴィルベルヴィントッ!」
流れが変わった。二人は、私の知る剣道を超えた領域へと踏み込みつつあった。
「いいねー……丹泥勒っ!」
「トーテン・クランツ!」
空気を唸らす剣の応酬。乙女たちの足取りはあくまで軽やかに、まるでダンスでも踊っているかのようだ。
「奥義・芙蓉花――!」
「ならば……リヒト・シュレヒター!」
交錯する数多の剣尖が白黒の残像を閃かせた。実力は拮抗している。
均衡を破るべく、一方が構えに力を込めると、
「五界乾坤鬼門大金神国常立神祀坐空理命此処彼処照神業八十劔ッ!!」
もう一方も真っ向から迎え討つ。
「アイン・フンダート・シュヴェルトヒーベ・アウス・ブラウエン・ブリッツェン・シュネラー・アルス・デア・ヴィント……!!」
二人の繰り出す剣技は、もはや常軌を逸していた。
「これでどうだぁ! 遥遠雲居彼方天御空拠疾降来大磐門毀尽厳霹靂如力強至上大神業八咫太刀ィ――っ!!」
それはいずれも天下無双の剛剣。
「こちらも見せてあげる! シュタルカー・ハルター・ウント・シュヴェーラー・シュタール・シュレークト・フォム・ヒンメル・ヘラップ・ミット・アイネム・ハイリゲン・モルゲンリヒトォ――!!」
さすがにこれ以上は、私も静観していられない。
「時間よ。もうその辺にしておきなさい」
私は二人の間に割って入る。乙女たちは不満げに頬を膨らませていたが、やがて納得したらしく剣を下ろした。
「仕方ないですねー。それより先生」
「私たち、どっちを代表に選んでくれますか?」
曇りのない四つの瞳が、揃って私の困惑顔を映し出す。
だが、私はこう答えるしかなかった。
「……とりあえず、真面目に剣道やるなら入部させてあげる」
「ですよねー」
「部活の邪魔になるし、もう帰ろっか」
二人は丸めた新聞紙を持って、今日のところはおとなしく帰宅の途につくのだった。
「気をつけて帰りなさいよー」
やはり、あの問題児たちからは目が離せない――危なっかしくて。
(おわり)