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スライム製アクスタの作り方

近郊の森――討伐を終えたオタクミは、もはやスライムには目もくれず、透明に固まりつつあるスライムの体液に夢中だった。


「これだ……! これで……夢が……ッ!」


リアとセラは、その異様な興奮に距離を取りながら見守っていた。


「……先生、目が怖いです……」


「……完全に別の生き物見てる目ね」


それでもオタクミは止まらない。


「スライムの体液は時間が経つと自然硬化する!

なら、加工すればアクリル状の透明な板みたいにできるはず……つまり、推しアクスタの素材に最適だッッ!!」


『うわぁ……スライムの体液を素材にって……』


「お前らも協力してくれ! できるだけこの体液を採取するぞ!!」


そこからオタクミの指揮の下、異世界アクスタ素材採取作業が始まった。

瓶、袋、木の皿まで動員して、とにかく体液を確保。


こうして、彼は満面の笑みとともに、瓶いっぱいのスライム体液を抱えて宿に帰還するのだった。



◆宿・アクスタ会議室(※ただの部屋)


「リア! セラ! 見てくれ、これだ!! 推しのアクリルスタンドを作るぞ!!」


部屋に入るや否や、オタクミはドンッと瓶を机の上に置いた。

光を受けて、スライム体液は淡く光りながらトロリと揺れる。


リアは目を丸くして、セラは腕を組んで首をかしげた。


「……その、アクリルスタンドって何なの?」


オタクミは待ってましたとばかりに前のめりになる。


「聞いて驚け! アクスタとはな!!

推しキャラを透明な板の中に閉じ込め、どこにでも飾れる究極の尊みアイテムなんだ!!

デスクに! 枕元に! 食卓に! どこでも推しと一緒にいられる!!」


『言い方ァ!!』


「……つまり、推しの“存在感”を物理的に再現する道具、ってわけね」


「そう!! セラ、理解が早い!」


リアはきょとんとしながら尋ねた。


「現実世界ではそんなものが……?」


「もちろんだとも! 現世で推しのアクスタ(ランダム封入)が出たときは、全種揃えるために給料のほとんどを溶かした! だが一ミリも後悔はしていない!!」


『そこは後悔しろ!!!』


セラとリアが若干引きつつも、興味は完全に釘付けだった。


「そして今……この異世界で初のアクスタを俺たちが作る!!」



◆異世界アクスタ制作工程


① 緻密な型取り


まずはリアにミスティア・ルミナスのイラストを描き起こしてもらう。


「リア、頼む! 最高に尊いミスティアを!!」


「は、はいっ!!」


リアは全力で筆を走らせた。

その横顔、アホ毛の配置、衣装の皺……細部にわたって神経を注ぐ。


セラも隣で見入っていた。


完成したイラストは、まさに尊みの極致だった。


「次は、この絵の輪郭で型を作る!」


リアに書いてもらった絵を輪郭になぞって切り、それを持って街の武器工房で型を作ってもらう。

武器工房では門前払いをくらったが、金の力でなんとかした。


② 体液の加工と流し込み


次に、採取したスライムの体液を熱し、一度液状に戻して純度を高める。

リアとセラが慎重に鍋をかき混ぜ、気泡を潰していく。


「気泡厳禁!! 尊みを曇らせるな!!」


「う、うわあ、緊張するぅ……!」


慎重に型へ流し込む。

透明な液がミスティアのシルエットを満たしていった。


③ 魔法による硬化


「次は魔法で冷却・硬化だ!!」


リアは詠唱し、冷気を帯びた魔法を体液に放つ。


シュウウウウウ……


まるで氷が結晶化するように、透明な板が形成されていく。


「あと少し……あと少しだ……!」


④ 最終加工と魂の彩飾


固まったアクリル状のミスティアが姿を現す。

その透明度、立体感は驚くほど美しい。


「最後の仕上げは……リア、頼む!」


リアは細筆で、髪のツヤ、衣装のグラデーション、瞳の煌めきを丁寧に描き入れていった。


「……できた!」


透明な台座を付け、ついに――


異世界初・スライム製アクリルスタンド《ミスティア・ルミナスver.1》完成!!



オタクミがアクスタを高々と掲げると、夕陽の光を受けてキラキラと輝いた。


その立体感、透明感、存在感は――まさに魔法で作られた宝石のよう。


「か、可愛いー!! 先生、これはすごいです!」


リアは歓声を上げ、両手でそっとアクスタを受け取った。


「光の加減で、衣装のグラデーションが変わって見える……!」


セラも思わず見入っていた。


「これは……確かに、妙な魅力があるわね……

ただの板じゃない。“存在”がそこにある感じ……」


「そう!! これがアクスタの力だ!!

どんな世界でも推しは推し。俺たちはその文化を、この異世界にも根付かせる!!」


『また変な使命感が出てきたぞ……』


「よし!次は量産だ!! この世界中にアクスタ文化を広めて、推し愛の波を起こすんだ!!」


こうして、異世界アクスタ文化布教活動が始まった――。

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