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冒険者パーティー結成!

ラザリスの宿の一室――夕日が差し込む窓辺に、ほこりの舞う光の筋が伸びていた。


「ん……あれ、もう夕方?」


毛布からぬくぬくと顔を出した美少女姿の青年、オタクミ・ルミナス。

戦いの疲れもあって、泥のように眠っていたが、妙な気配に目を覚ました。


視線を向けた先――そこには、光を反射するピンクの刀身に柔らかく布を滑らせている銀髪の少女の姿。


「……セラ?」


彼女は振り返り、ほんの少しだけ眉を上げた。


「あ、起きた」


「お前……いつからここに……?」


「……ついさっき。暇だから、武器磨いてた」


オタクミは寝ぼけ眼でポカンとしながら、磨かれている《タクミ・ブレイザー》を見つめた。


『いや、もっと前から来てたぞ~。部屋の掃除とか、洗濯とか、タオル畳むとか色々してくれてたぞ』


腰元の鞘から聞こえる、呑気な声。

痛武器の鞘神・ゴルドスが、いつものように軽口を叩く。


「べ、別に! 借りを返すだけだっての! 部屋が汚いと落ち着かないだけ!!」


頬を膨らませてそっぽを向くセラ。

その手つきはどこか不器用に優しく、丁寧に痛武器を専用スタンドに立てかけ直す。


夕日が差す中で、ルミナスのイラストが柔らかく光を帯びる。


「ははっ、ありがとな……セラ」


「……うるさい」


セラは一つ咳払いして、オタクミの前に立った。


「昨日の借りを返すため。あんたのパーティーに、加わってあげる。……それだけよ」


ニヒルな笑みとともに告げるその姿は、どこか照れているようにも見える。


『おおっ!? 新メンバー加入イベント!? セラたんのCVは誰だ!?』


「何が“セラたん”よ!! いつもいつもうるさい鞘ね!」


ガンッ!と痛武器の鞘を軽く小突くセラ。


『痛い痛い!』


そんな賑やかな空気の中、突然――


「オタクミ先生ぇぇぇぇぇぇ!!」


ドアがバターンと開いた。

鍋と大荷物を抱えたローブ姿の少女、リアが駆け込んできた。


「オタクミ先生ぇぇっ!! ご無事ですか!? お怪我は!? 熱は!? 食べました!? 寝ました!? ハンカチ持ってます!?!?」


「おお、落ち着け落ち着け! 俺は元気元気! ていうか、お母さんムーブがすごいな!!」


『これが異世界ママ属性か……やるな……』


「違いますっ! 心配してたんですっ!! 今日は栄養満点のスープを作ってきました! 」


リアは手早く鍋を置き、スプーンとお椀をセッティング。

その動きの隅々から「おかんりょく」が溢れ出している。


セラはそんなリアの様子をじっと見ていた。


「あの……で、この人は?」


リアがセラを見て首をかしげる。


「ああ、紹介するよ。この子はセラ。これから俺たちの仲間になる予定の――銀影のシーフだ!


「へえ! すごく……カッコいいですねっ!私はリアと言います!」


リアは目を輝かせる。


「……へっ? あ、いや……別に……」


セラは思わず赤面して顔を背けた。


「なぁセラ、リアはすげぇ絵が上手いんだ!

リア、この前の“魔導書”、セラにも見せてあげてよ」


「あっ、はいっ!」


リアが取り出した一冊の魔導書。その表紙には、ミスティアのSDイラストが彩られている。


ページをめくり、ミスティアの微笑むイラストが見えた瞬間――


「……この絵」


セラの目が見開かれた。


「これ、あなたが……描いたの?」


リアは、はにかみながらうなずいた。


「はい……まだまだ勉強中ですけど」


「…………すごい」


その一言は、ぽろりと、自然にこぼれた。


「優しくて、でも芯が強くて……絵に“人柄”が出てる。絵なのに、すごく温かい」


リアは顔を真っ赤にして、慌ててお椀にスープをよそいはじめた。


「わわっ……そ、そんなに褒められたら手が震えますぅ!」


「じゃあ、とりあえず食べよっか!」


リアの明るい声で、3人と1鞘(?)が席に着く。


セラは、そっとスプーンでスープをすくい――口に含んだ。


「…………美味しい」


その声は、とても穏やかだった。


「そりゃあな! 推しを見ながら食べる飯は、エリクサーより効くんだよ!!」


『HPもMPも全回復だぜ!』


ふとセラが痛武器に視線を向けると、ルミナスのイラストが優しく微笑んでいるように見えた。



食後、オタクミは、立ち上がって高らかに言った。


「よし! 新たなる冒険者パーティー、ここに結成!! 目指すは――借金返済とルミナス文化の異世界布教!!」


「……借金?」


セラが目を細めた。


「え、ああ……ちょっと街ぶっ壊したときの修繕費で……

そんな事より、ルミたんのコラボカフェ開こうぜ! グッズ付きで!」


「入るパーティー、間違えたわ…」


『あの、転売魔の撲滅も……』


リアは二人のやりとりを微笑ましく見守っていた。


(この人たちとなら、きっと楽しい物語が始まる……そんな気がする)


窓の外には、夕暮れのラザリスの街。


笑い声がこだまする部屋の中――

新たな物語の幕が、静かに上がろうとしていた。

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