命以外を頂いたからな
かなりダークです。
ルーネの何かを固く誓った様な顔をしていたが、彼女のお父さんであるペイルさんの絶望した顔以外は特に何もなく夕食は終わった。
翌日、朝食を頂いた後、ルーネと家族総出で俺を送り出してくれた。
「ゼン殿」
オーキナから、俺に向かってコインを投げたから受け取る。
「それは儂からの贈り物じゃ。
それを見せれば、狐人族は勿論だが、他の獣人族にも好意的に接してくれるじゃろう」
「良いのか?」
「構わん」
「ありがたく頂くよ」
九つの白い尻尾が描かれたコインを「倉庫」に仕舞うと、ルーネが俺の前に来た。
「ゼン様。私、決して諦めませんから!
6年後に、今度こそ正式に『首飾り』を頂ける雌になってみせます!」
「あ、ああ。期待しているからな」
「はい!」
「それじゃ、また」
「はい、また」
こうして、ルーネ達と別れたのだが、この都市にまだ居るつもりで、同じ都市に居るのだから、「また出会う」だろうから、俺は「また」と言ったのだが、これ以降、ルーネに出会う事も無く、まさか4年後にあんな場面で再会するとは、この時の俺には夢にも思わなかった。
「……10日間、この都市で冒険者をやったから、そろそろ良いかなぁ」
あれから10日間が経過して、冒険者としてこの世界の住民としての基礎と常識を学んだから、この都市を出て冒険を始めようかと考えていた。
「結局、あれ以降にルーネに会う事は無かったけど、何時までも居る訳にはいかないしな」
翌日、ホワイトテイルに出発の挨拶をすると、辺境の都市「ブルムドラ」を後にした。
「ルーネに会えなかったな。はて、何かを忘れている様な……」
街道をのんびり歩いていると、女性の悲鳴が聞こえた。
「はあ!? また手垢塗れなテンプレを……」
俺は愚痴りながらも悲鳴の方に急ぐと、異世界系ラノベでもこの手のテンプレでは見ない様なモンスターの大群に囲まれた馬車4台があった。
モンスターの内訳は、ゴブリンが50匹ぐらいに、オークが10匹に、オーガが5匹って所か。
「助けは必要か?」
「……頼む。少しでも減らしてくれ!」
「分かった」
……まあ、人道的な理由で助けるとするか。
俺は雷矢を、形勢が不利な所を狙って集中的に撃ちまくった。
「……」
何か、周りの人達から視線が……
「……しまった!」
途中から、シューティングゲーム的な意識になって、所謂「無双」してしまった。
「助かったよ」
「そちらは大丈夫か?」
「ああ。お陰でだ……」
「命の恩人にお礼を言おうと思ったらガキかよ!」
「マジかよ」
「助かった。お疲れ。じゃあな」
「ガキ、もう行っても良いぞ」
「おい、何を言っているんだ!」
「リーダーも、そんなガキを無視して、モンスターの討伐部位と魔石を回収するぞ」
「何を言っている! 彼が討伐したモンスターは彼のモノだ」
「ああ? そんな訳があるかよ」
……前世にも、こんなバカが居たなぁ。
「まだ居たのか?」
リーダーと呼ばれた男を無視して、俺は駆け出し上から目線な言葉を言った2人の前に出ると、裏蛇破◯からガ◯ルパンチからのキャンセル回し蹴りを喰らわした後、俺が討伐したモンスターを全て「倉庫」に仕舞うと、スタスタと歩き始める。
「待って頂けませんか!」
「誰だ?」
「この一団の責任者代理の者です」
「それで?」
「命の恩人に対して何もしなかったら、旦那様に叱られてしまいます」
「そんなの知らん。それに、あんなバカを雇う様な奴なんぞ信用出来んな」
「ま、待ってください!」
「お嬢様!?」
貴族令嬢の見本みたいな美少女と、鎧は装備していないけど、女騎士みたいな美少女が現れた。
……そして、女騎士は俺を睨んでいる。
「私が雇った者が無礼を働いてしまい、心から謝罪いたします」
「誰?」
「失礼しました。私、ベリーシア侯爵家が三女『グルーエル=デルマ=ベリーシア』です」
「グルーエルお嬢様! 素性も知れぬ者に名乗られては……」
「ケリー! 何を言っているのです! 命の恩人に礼を尽くすのは当たり前の事です」
ベリーシア……何処かで聞いた事がある。
「それに、結婚式はまだ先とはいえ、私はブルムドラの者になるのですから、その辺りを私としてはきちんとし……」
「あー!」
「「!?」」
思い出した!
そうか。
このお嬢様が、受付嬢が言っていた人か。
「どうされました?」
「いや……」
異世界系ラノベで読んだなぁ。
貴族の最初の恩返しを断わると、大抵が厄介事込みの「お願い」になるんだよなぁ。
確かに、創作じゃなく現実だから、そんな事は起きないかもしれないが、起きたら嫌だな。
「本心は嫌だが、仕方なく、渋々そちらの意向に沿うてやる」
「それは良かったで……」
「この無礼者がーーーぐふっ……がは……」
貴族令嬢のお嬢様の後ろに控えていた女騎士がいきなり剣を抜き、殺意込みで俺に切り掛かって来たから、躱して女騎士の腹に右回し蹴りを叩き込み、どっかの無能力者みたいな男女平等パンチをぶち込むと、倒れた所を落ちた双剣を拾い、女騎士の両腕に刺す。
「ぎ…ぎゃあああーーー……ぎ…が…ぐ……」
更に、俺は「狂犬」の型で女騎士を押さえて女騎士の顔をタコ殴りにする。
「止めてください!」
「何故だ?」
「ケリーが死んでしまいます!」
「俺は、この女に殺されそうになったが?」
「そ、それは……」
俺は、トドメとばかりに腹に剣を刺す。
「がぁ……」
「ケリー! お願いします! 命だけは奪わないでください! どうか!」
「……分かった。命だけは奪わないでやる」
「ありがとうございます!」
俺は、女騎士の腹の刺傷を「小治癒」で治すと、女騎士の髪を鷲掴みにして街道の横の森に向かう。
「何故、森に?」
「命は奪わないが、それ以外を奪う」
「「え!?」」
そのまま女騎士の弱い抵抗を無視して、せめてもの慈悲で森に入り、姿は見えないが声が届く距離で「頂く」事にした。
「痛……いやぁあああーーー!」
……どうやら、外見は10歳ぐらいだが、「使える」みたいだ。
使えなかったら、剣の握る所で代用するつもりだったが、大丈夫みたいだ。
それと、こんな事をしているのに、心が痛まないが、これも耐性のお陰か?
約10分後に、また女騎士の髪を鷲掴みにして森から出た。
女騎士から「奪う」為に、力任せで服を引き千切ったからボロボロになったが、命を奪わなかったから問題にはならないだろう。
「……け、ケリー!?」
「命以外を奪った」
女騎士から、顔に袈裟斬りの切り傷を負わせ中途半端に癒やして女としての美貌を奪い、女騎士の女性としての「初めて」を奪う事で将来の良縁を奪い、両腕の筋を切り、同じく中途半端に癒やして騎士としての道を奪った。
「このガキがーーー!」
「待っ……」
「が……」
責任者代理の者と名乗った男が懐から短剣を抜き、殺意有りで切り掛かったから無詠唱で裂風刃を放ち、首を胴体から切り離した。
「「「「「「「貴様ーーー!!!」」」」」」」
「止めてーーー!」
「「「「「「「「ぎっ……」」」」」」」」
先程と同じ魔法「裂風刃」を無詠唱で7発放ち、馬から降りて武器を抜いた騎士4名と、同じ様に武器を抜いた冒険者3名を殺した。
俺は、殺した連中から現金と換金出来る物を徴収し「倉庫」にしまう。
「どうして!」
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狂犬の型……特攻ア〇テミスを参考にしました。