ではゼン様。私がご案内いたします
イタチごっこはウザい。
「お前、強いな。改めて自己紹介しよう。
オレはクロードだ。冒険者ランクはBランクだ。よろしくな」
「私は、エマよ。冒険者ランクは同じくBランクよ。よろしくね」
「俺はゼンだ。たった今、Dランクになった冒険者だ」
「後、察していると思うが、オレとエマは同じチームのメンバーで、名前は『蒼い雷光』だ。それとメンバーはもう2人居るが、まだ宿屋で寝ている」
「正確には、昨日の依頼達成の打ち上げで飲み過ぎて起きれないだけよ」
「あははは」
「そういう訳だ。それと、オレはゼンを気に入ったから、何かあれば助けてやるからな」
「私もよ」
「じゃあな」
「またね」
「ああ、じゃあな」
……周りが「あの蒼い雷光のクロードさんやエマさんと、親しげに話しているガキは何者だ?」みたいな事を話しているが、無視して冒険者ギルドを後にした。
「ん?」
適当に歩いていると、多分……狐の獣人族の女の子が野郎共に暴力を受けていた。
どうしようかと思っていたら、野郎共の1人の顔が前世で勤めていた会社の、パワハラをした糞上司に似ていたから、介入する事にした。
「何をしている?」
「うるせえ!」
「関係無い奴は引っ込んでろ!」
「相手は獣人族とはいえ女の子だぞ」
「獣人族だからだ!」
「そうだ! 人族様の都市に、獣臭い獣人族が彷徨くんじゃねぇよ!」
「そうか。てっきり俺は、お前らのアレが小さ過ぎて、小さい女の子ならと声を掛けたが、断られて逆切れしていたのかと思ったぞ」
そう言うと、周りの野次馬が「クスクス」と笑い出した。
「て、てめぇ……」
「あ! ゴブリンなら……も無理か。ゴブリンにも選ぶ権利があるからな」
「「「「「ぶっ殺す!」」」」」
はい。殺人の意思表示と武器を抜いた。
正当防衛の成立だ。
「ぎぃ……」
「ぐはっ……」
「がぁ……」
「げぶぅ……」
「ごふっ……」
肋骨折り付きのリバーブローを5連発!
「す、済まなかった」
「あ? 何を言ってんの? 此処で止めたら逆恨みで、お仲間が加わったお前らに襲われるだろう?
だから、逆恨みの気持ちが持てない様に徹底的に潰してやんよ。
勿論、あの女の子に手を出しても同じだからな」
「……ひぃ!」
俺は、折った肋骨の反対側も折り、野郎共5人の両腕両足の骨を折り、下顎と両膝を砕いて、全員の左目を潰して、右小指を切断した。
更に、慰謝料として全所持金と武器等を没収した。
俺は野次馬を睨むと散り散りに去っていき、暴力を受けていた獣人族の女の子に行き、小治癒を放ち声を掛けた。
「小治癒。大丈夫か?」
「大丈夫です。助けて頂いた上に傷の治癒まで……ありがとうございます」
「俺はゼン。君の名は?」
シレっと、異世界でオマージュした。
「私、は……狐人族のルーネリアです。ルーネと呼んでください」
「ルーネか……良い名前だな」
「ありがとうございます」
念の為に、もう1回掛けておこう。
「小治癒」
「……え!?」
「まだ痛む場所が有るか?」
「無いです。また回復魔法を掛けて頂いてありがとうございます」
「大した事じゃないから気にするな。
それよりも、目的地とか有るのか?」
「は、はい」
「それなら、そこまで一緒に行ってやるよ」
「そんな! そこまでして頂く訳には……」
「気にするな。それよりも行こう」
「……はい。ありがとうございます」
……まあ、中学からの親友の妹に似ていたのは彼女には秘密だな。
「目的地は此処です」
一緒に行って到着した場所は、商業地区だと知らなくても誰もが分かる一等地に建っており、更に一際立派な商会だった。
これがテンプレなら、この女の子ルーネは、この大商会の会長の孫で、その会長が「商売の邪魔する奴がいる? 金を使い握り潰せ」とか言うパターンかなぁ……
「それじゃあ」
「待ってください! このまま帰したらお母様に怒られます。どうか、お礼をさせてください」
「……分かった」
「ありがとうございます!」
……乙女の涙に勝てる訳がない。
そして、ルーネが言ったパワーワード「お母様」に、内心ビビりながら後を付いて行くが、スタッフらしき狐人族の人達全員が軽く会釈するのは気の所為だろうか?
……マジで、偉い人の身内!?
「この部屋でお待ちください」
そう言われた部屋は、どう見ても最上級の品々に囲まれた豪華な応接室だ。
しかも、この大商会は周りの商会よりも3階も余分に高い建築物な上に、その最上階まで上がった。
最低でも、この大商会の幹部以上のスタッフの身内だ。
「お待たせした」
待つ事20分ぐらいで部屋に狐人族の渋いイケジジとルーネが入って来た。
「先ずは、孫娘を助けて頂いてありがとう」
「いえ、当然の事ですから」
テンパった俺は、常套句で返した。
「その当然の事が難しいのだ!」
「お祖父様。先ずは自己紹介を」
「そうであったな。儂は、この『ホワイトテイル』商会の会長をしている『オーキナ』だ」
「俺はゼンで、Dランク冒険者だ」
マジで、会長の孫娘だー!
「うむ。その年でDランク冒険者か」
「実力と幸運が重なってな」
「うむ。必要以上の謙遜をしない所が好感が持てる。 どうじゃ、孫娘のルーネと交さ……ぎぃ……」
「どうした?」
「……いや、何でもない」
勿論、俺は気付いている。
ルーネが、オーキナの足の小指を踏み付けているのを!
「お祖父様。ゼン様は冒険者です。それなら武器や防具、冒険に必要な道具でお礼をされたらどうですか?」
「……そうだな、ルーネ」
「ではゼン様。私がご案内いたします」
「分かった」
「ゼン殿。終わったら、もう一度顔を出してくれるか?」
「分かった」
「ルーネも分かったな?」
「はい、お祖父様」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点とブックマークをお願いします。