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ゼン殿、伝えていないのですね

高度な教育は受けていても、専門の教育は受けていないから……

 


 ……屋敷に到着した。


「初めまして。この屋敷の主から管理を任せられているニコルと申します」

「初めまして。レフィーナです」


 到着するまでの間に、相談して表向きの設定で行く事にした。

 勿論、ニコルさん達にはレフィーナ達の正体をサラから聞いた筈だ。


「レフィーナ王じ……お嬢様の世話係のセジマです」

「護衛のリーダーでバルドだ」


 ほぼアウトな侍女の自己紹介と慣れてしまったバルドの自己紹介の後は、残った護衛4人の自己紹介となる。

 それが終わると、来賓用の部屋にレフィーナを案内して、通路を挟んで反対側の部屋をバルド達の部屋にした。


「ゼン。何を考えているの?」

「純粋な善意と僅かな悪戯だよ」

「……なる程ね。クーデターが起きて、家族が散り散りになっているものね。

 報告では無事と聞いても、その後は分からないものね」

「そういう訳だ」


 ニコルさんと、そんな事を話して翌日の午前8時頃に、王城からの馬車が来た。

 喚ばれたのは当事者であるレフィーナ王女と護衛のバルドに俺達だ。

 まあ、全員を連れて行くのはマナー違反的な感じがするから、リンにした。

 そして、1時間後に俺達は馬車に乗った。


「……」

「そんなに緊張するな」

「そうですよ、レフィーナ王女殿下」


 因みに、1時間後なのはレフィーナを「レフィーナ王女」にする為の準備時間だ。

 だから、今のレフィーナは夜会に出る様な豪華なドレスではなく、お茶会に出席する様な優美なドレスを着ている。

 バルドも、それに合わせて騎士の義礼服を着ている。


「……でも」

「大丈夫だ。俺が助けたんだからな」

「そうです! 何故、ゼン様達も喚ばれたのかしら?」

「それは秘密だ。 ただ、この国の貴族だったみたいなオチは無いからな」

「……そうですか」


 レフィーナも、商会の娘から小国とはいえ国の代表としての心理状態になり、言葉使いが変わっている。


 王城に到着して待つ事は無く、そのまま案内されて王城の応接室に通された。


 少し待っていると、ノックの音が響きレフィーナ王女が許可すると、国王と宰相に文官2人が入る。


「マリネリア国が第3王女レフィーナ=ベルム=マリネリアです」

「うむ。 手紙である程度の事情は分かった」

「それでは!」

「待て。確かに顔をしかめる事態ではあるが、我が国と正常な交易が出来るのであれば……」


 この後、ベータグシム国国王と、マリネリア国王女との政治的な話し合いがされた。

 まあ、レフィーナ王女は頑張ったと言えるな。

 本来なら、そんな事をする必要は無かったのだからな。

 その結果……


「国として保護はしよう。しかし……」

「お願いします!」

「ちょっといいか?」

「……申せ」

「潜在的な害虫であり、将来的な毒虫を放置するのは良くないな。

 大義名分と実利が有るのだから、国としては動いたらどうだ?」

「つまり、ゼン殿も動くと?」


 宰相が口を挟む。


「ああ」

「……分かった。 我が国から騎士団を派遣しよう」

「……ありがとうございます!」

「宰相」

「ゼン殿、何でしょうか?」

「2日後に出せる数は?」

「……第3王城騎士団30名ですな」

「あいつらか。 手配を頼む」

「ゼン殿、意図は?」

「大義名分が有る以上は早い方が良いし、アルファーザス国以外の隣接する他国への牽制にも繋がる」

「……なる程、分かりました」

「後詰めの手配もな」

「分かっております」

「それで良いか?」

「ゼンが動く以上、否は無い」

「それは良かった」

「「……?」」


 俺が言った「俺は貴族じゃない」と言う言葉をレフィーナが信じるのなら、俺の身分は良くて大商会とかの子供か、神殿の偉い人の子供になる。

 しかし、大商会の息子なら国王達にこんな態度や言葉使いは不敬だし、神殿の子供だとしたも、既に世間体を取り「居なかった」扱いにするだろうから、王族に対してこんな態度を取れない。

 結果、大商会の子供、神殿の子供、どちらもあり得ないとなる。

 そうなると、王族となるがそれも無理が有る。

 それだと、今度はベータグシム国側の対応が可笑しいとなる。

 だから、レフィーナ王女と近衛騎士のバルドは混乱している。


「ゼン様は何者ですか?」

「それは秘密だ」


 何処かの獣神官プリーストみたいにポーズを決めて言った。


「……」

「ゼン殿、伝えていないのですね」

「当たり前だろ」

「確かにそうですが……」

「ゼン様、教えてください!」

「……まあ、簡単に言えば、俺の強さが認められているからだな」

「知る者は僅かだが、ゼンはSランク冒険者候補だ」

「な!?」

「どういう事ですか、バルドエル」


 ……本名は「バルドエル」か。


「はい、レフィーナ王女殿下。

 Sランク冒険者とは、冒険者の最上位とする階級ですが、Sランクになるには、絶対的な条件が有るのです。

 その条件を満たさぬ限り、どれ程の武力や権力に、財力が有ろうともSランク冒険者になれません」

「つまり?」

「ゼンは、その条件を満たせる冒険者だと言う事です。その強さは国1つ以上です」

「!?」

「そして、ゼンが動くという事は、国1つ分以上の戦力が動く事を意味します」

「そういう事だ」

「……ゼン様」

「レフィーナ王女」

「は、はい、ゼン様」

「成功報酬で、マリネリアの美味しい料理を無料で1週間ぐらい食わせてくれ」

「……はい!」



 ……2日後


 ベータグシム国王都から、第3王城騎士団と、同行する文官達が出発した。

 勿論、既にマリネリア国には降伏勧告の使者を派遣している。



厳しくも温かいメッセージを待っています!

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