私が、貴方達を置いて逃れる訳が無いでしょう!
罪を重ねる主人公とサラw
テンプレなクーデターで、御旗は現国王の弟で、現国王は暗殺されたが、王妃と王太子と王太子妃は逃亡に成功したらしい。
この第3王女「レフィーナ=ベルム=マリネリア」を、逃亡先であるベータグシム国の王城に届ければミッション終了だ。
後は、交渉して戦力を借り奪還した暁にはベータグシム国の同盟国になります、とかになれば国としての面目が立つだろう。
……実際は、属国だろうがな。
因みに、ベータグシム国とマリネリア国の繋がりは、3代前のベータグシム国国王に、マリネリア国の第1王女が側室として嫁ぎ、その娘が、現ミランザム公爵の祖母になる。
ベータグシム国としても旨味が無い訳じゃない。
大義名分付きで、小国とはいえ国1つ分の領土が手に入れる事が出来る訳だ。
「……それでだ」
「レフィーナ様、まだ出られてはなりません!」
「何を言っているのです! 恩人には礼儀を尽さないといけません!」
「……はあ~」
さあ、これから交渉をしよう、という時に我慢出来ずに王女様が出ちゃったよ。
そして、俺達の前に到着すると綺麗なカーテシーを披露する。
「私達が危ない所を救けて頂いてありがとうございます」
「巻き添えで、殺されたら敵わないからな」
「改めてご挨拶させて頂きます。
私、レフィーナ=ベルム=マリネリアです」
「……はあ~」
また深い溜め息をするバルドが言う。
「交渉ではなくお願いだ。
私達に協力して欲しい。 勿論、充分な報酬を払うと約束しよう。
期間は、此処から、ベータグシム国の王都前までで、金貨5枚払おう」
因みに、今回だと、正規の手順で依頼として出した場合は、大銀貨5枚から金貨1枚が相場だ。
「……表向きの設定は?」
「あ~。大商会の孫娘と、幹部の娘で幼馴染みの世話係に、自前の冒険者チームだ」
「どうでしょうか?」
……王女様が考えた設定か?
バルド達に視線を戻すと苦笑いだった。
まあ、気持ちが分からんでもない。
小国とはいえ、近衛騎士としての矜持と信念を持っていただろうが、それが土と血に塗れた日々を過ごす。
そう思うと、少々の同情心が芽生えるな。
「ゼン、受けましょう」
「ゼン君、良いよ」
リンとランを見ると頷いていた。
「そうだな。その依頼を受けよう」
「やったー!」
この王女様は、猫を飼っていたのか。
「……次だが」
次は、ゴミの分別について聞かないとな。
「このゴミはどうする?」
俺がゴミと言った事で、憤慨する者と、意味を理解して顔色が青くなる者に別れた。
「悪いが、装備品は売ってくれないか?」
「あ……ああ! 全部で大銀貨1枚でどうだ?」
「買った!」
多分、この装備品は正規品なんだろう。
そうなると、売れる事は売れるが色々と疑われるし、買い叩かれるだろう。
それなら、恩を売った方がマシだと言える。
こうして、ゴミが身に付けていた装備品は、バルド達が所有していた予備のマジックバッグに収納された。
そして、俺の手には大銀貨1枚が置かれた。
「ゼン様、ゴミの焼却が終わりました」
「ご苦労さま」
同時に、リン達にゴミの処理をお願いしていた。
翌日、俺達はUターンする形でベータグシム国に向かう事になったのだが、レフィーナ王女が、俺達と親交を深めたいという事で、俺達の馬車に乗った。
しかし、小休憩の後、バルドが自分達の馬車に乗りましょうと促すと、俺達の馬車に乗ると言い出して引かなかった。
「お尻が痛いのは、もう我慢出来ません!」
……だ、そうだ。
まあ、馬車の中で質問攻めをしていたから、当然と言えば当然か。
そして……
「う、うわぁーーー!」
「ブラックキラーグリズリーだ!」
「Aランクモンスターが何故だー!」
「GaAーーー!」
「私達が足止めをいたしますから、レフィーナ王女だけでも逃げてください!」
「何を言っているの! 私が、貴方達を置いて逃れる訳が無いでしょう!」
「そういう訳にはいきません。
ゼン! 悪いがレフィーナ王女を頼む」
「バルド……」
「盛り上がっている所を悪いが、もう終わったぞ」
「「……へ!?」」
俺の声に振り向いたレフィーナとバルドが見たのは、俺の後ろで首無しのブラックキラーグリズリーの後ろ足に縄を括り付け、リン達が協力して吊り上げている姿だった。
ブラックキラーグリズリーの処理が終わるとバルドが言った。
「……何故、こんな副街道に現れたのだ?」
「理由なんて分かる訳が無いだろ」
「……そうだな」
数日後に俺達はベータグシム国の王都に到着し、バルドから金貨5枚を受け取ると、バルドに聞かれた。
「ゼン。先触れを出して、返事を待つ間の宿屋を取りたいと思っているが、何処か良い宿屋は知らないか?」
……!
「ああ、有るぞ。 宿屋じゃないが、屋敷を持つ友人がいる。
その屋敷はどうだ?」
「……いや、それは」
「大丈夫だ。その屋敷に住む友人は、王族と深い関わりを持つ者と交流が有り、何度かは、王女がお忍びで来た事がある」
「……この国の王女がお忍びで来れる程の屋敷か……レフィーナ様」
「賛成よ」
「……済まないが仲介を頼めるか、ゼン」
「任せろ。リン、バルドから預かった手紙を王城に届けてくれ」
「分かりました、ゼン様」
リンはバルドから預かった手紙と、注意事項を聞いた後、王城に向かった。
「サラは、屋敷に」
「分かったわ」
「サラ、分かっているな」
「勿論よ!」
既にマリーベルで前科が有るから、サラの顔からは「ガッテン承知!」と、物語っていた。
こうして、サラには先行してもらい、俺達は冒険者ギルドの場所を教えてから、屋敷に向かった。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点とブックマークをお願いします。




