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プロローグ

不定期更新です。よろしくお願いします。

俺の名前は模部壱郷もぶいちごう。22歳。ニートだ。

Fラン大学を卒業したはいいが、就職先を見つけることができず、春から実家の部屋に引きこもり、ゲーム三昧ざんまいだ。

やれ高校の同級生が一流企業に就職しただの、結婚して子供を設けただの、初任給で親をディナーに招待しただの、親が口を開けば、このような他人の成功ばかり飛び出てくる。隣の芝の方が確実に青いので、気持ちは分かるが、だからといって甘んじて受け入れることは心が拒否しているので、今日もコンビニで買ったコーラをちびちび飲みながら、オンラインFPSゲームをプレイし、コントローラーを投げ、台パンする。

夜、俺はボーッと考え事をしながらコンビニへの道を歩いていた。

どこで間違えたんだろうか。

どこから人生の先行きが見えなくなったのだろうか。

これからどうすればいいのだろうか。

考えれば考える程に、答えは愚か、何に悩んでいたのかすら分からなくなり、残ったのは現状への不満のみだった。

あー、世界を自分の思い通りに出来たらなー。


『力が欲しいか』


ん?何だ今の声?


『世界を変える力が欲しいか』


そう言って現れたのは、全身が黒いもやで覆われ、目らしき場所から2つの刺すような赤い光を放っている2メートル弱の人型の存在だった。

俺は一瞬恐怖したが、俺も無敵の人と言ってもいい存在なので、肩が縮こまりながらもその悪魔のような存在に言った。

「欲しいです」


『いいだろう』

悪魔はニヤリと笑ったかのようにもやを揺らし、言った。

俺は、これからどうなってしまうんだという不安と、どんな力が貰えるのだろうというワクワク感で荒ぶる呼吸を落ち着かせようとした。

悪魔の言葉の続きを聞くまでは。


『では本契約の趣旨を説明させて頂いた後、利用規約とこちらの誓約書をお読みになって頂き、サインして頂く形になります。』


そう言って悪魔はどこからともなくタブレットを取り出し、スライドショーを交えながら契約についての説明を始めた。

俺は全く状況に付いていけず、ただ説明を聞き流す他なかった。

ソシャゲのそれと同じように利用規約を読み飛ばし、誓約書にサインした。


『これにて契約が成立しましたので、肉体の変形及び能力の付与をさせて頂きます。目を閉じていてください。』


俺は目を閉じた。

何か仄暗ほのぐらい、それでいて落ち着くものが自分の中に入ってくるのを感じた。

足りなかったものが満たされていく。できないことができるようになる充足感。

そんなものを覚えたとき、悪魔は言った。


『これにて能力の付与は終了しました。目を開けて頂いても結構です。』


俺は目を開け、自分の体を見た。肌は黒っぽくなり、細かった腕には筋肉が山盛り付き、血管が浮き出ていた。頭に手をやると、山羊のような角が生えていた。

説明を聞き流していたのでよく分からないが、どうやら魔族化したらしい。

正直焦っている。


『では、能力についての説明をさせて頂きます。

模部もぶ様に付与させていただいた能力は、ズバリ、「如何なる状況においてもボトルフリップが100%成功する能力」でございます。』


おーー………

…………………。

……………………。は?


『例え床がデコボコでも、銃を向けられて手が震えていても、スカイダイビング中でも、ボトルフリップが成功します。邪神様への深い祈りや邪神教の熱心な布教によって、能力が覚醒した場合、ボトルとなり得る物がなくても、ボトルフリップをしようと意識することでボトルを顕現させることも可能になるでしょう。』


え?え?ハズレじゃん。ハズレ能力じゃん。

世界を変える能力じゃないじゃん。

「あのー、世界を変える能力ではないんですか?」


『はい、普通ならば絶対に成功出来ない状況においても世界を都合良く改変することでボトルフリップを成功できるようにする能力となっております。』


「改変ってボトルフリップ限定ですか?」


『はい。そうです。』


「代償はあるんでしたっけ?」


『先程説明したように、能力の対価として邪神様への祈りを毎日午後7時きっかりにしてもらいます。1日でも祈りを欠かすと能力を没収し、寿命を半分頂戴します。』


「………。因みに能力の変更は出来たりは…?」


『これも先程説明しましたが、覚醒済みの能力であれば未覚醒の別の能力とランダムで交換できます。能力を覚醒するまでは変更出来ませんので、変更を希望するのであれば、毎日深い祈りを捧げ、熱心に邪神教の布教活動をしていただくことになります。』


俺はようやくカモられたのだと理解した。


面白ければ星とブックマーク押していただけると嬉しいですm(_ _)m

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