あたしのしっぽ
『あたしのしっぽ』
あたしにはしっぽがある
比喩ではなく
ほんとうに
ねこのしっぽが生えてるあたりに
とても短いしっぽがある
力を込めなくても左右に動く
お父さんはそのうち消えるといった
らしいが消えなかったあたしのしっぽ
お医者様でも予測できないしろもの
バイクに乗る時には邪魔だった
オフロードバイクのシートは固いから
しっぽが当たってジンジン鳴った
温泉に行くと恥ずかしかった
誰も気づいていなくても
ジロジロ見られてる気がしてお湯に潜った
初めての裸を見せた時は
ずっと前を向いていた
前を見せるよりも恥ずかしかった
誰もあたしのしっぽを愛撫しなかった
触れようともしなかった
ないものとしてくれる気遣いに傷ついた
そのうち見せびらかすようになった
見せびらかされた相手は嫌がった
何も言わないけど顔が遠ざかった
今はもう誰にも見せないし
誰も知らないあたしのしっぽ
ズボンの中でフリフリ振るだけ
ねこといるとしっぽが安らぐ
同じ部位をからだに持つもの同士
顔を見合わせて笑いあう
イタチもよくわかってる
しっぽをペロペロ舐めてくれる
あたしには彼のきもちがわかる
とても長い付き合いだけど
なんの役にも立たなかった
それでもあたしの一部
あたしのしっぽ