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電子書籍の残骸
『電子書籍の残骸』
地平線をさらして
広がる曠野に
堆く散らばる
電子書籍の残骸
紙きれは一枚も舞わず
ただ重いもののように
実態のない文字が
ぬるい風に吹かれている
ペンで物を書く者はいなくなった
紙の物を読む者もいなくなった
そんな時代の名残りが
沈黙する無機質に降り積もっている
もう誰も読むことは出来ない
もう誰にも読むことは叶わない
黒と白と金色の廃墟の上を
駱駝が一頭歩いていった
『カフーナの風』
カフーナに生きる人たちは
自由な風を嫌がって
古風な家に引きこもる
そんなありがちな風景にまどろんで
カルーアミルクをひたすら啜る
カスだなおまえ
佳風な呟き
天使の重力
もげた羽根
急いで行こう
束縛の国