あやまち。
それは…とても幸せな日々だった。
僕の隣には笑顔の君がいて。
幸せな僕らは未来を夢見た。
…たとえその幸せが"過ち"だったとしても。
「…幸せってどういう意味が知ってる?」
「う~ん。ご飯がおいしいこと。」
「ちが~う。ホントにみぃはバカね?」
「ひどい!僕はバカじゃないもん!
だって昨日のテストだって…!」
「ちが~う。そういう事じゃなくてね?
もゥ。ホントに密月はバカ。やんなっちゃう」
「むぅ。璃祢は僕が嫌いになった?」
「なってない。嫌いになる訳ないじゃない。
むしろ、愛してるよ。"お兄ちゃん"」
「で?幸せの意味は?」
「私と密月がずっと一緒にいれること」
クスリと笑った璃祢に吸い寄せられ僕は璃祢の淡い唇に口付けを落とした
そう僕らは愛し合っていた。
血も繋がっていた。
顔もよく似ていると言われた事もある。
だけど僕らは人として愛し合っていた。
それに偽りなどなかった
だけどある日、別れは突然訪れた。
「あれ?母さん帰ってたの」
「うん、もう行くつもりだけどね」
「…璃祢は?」
「ん~?生徒会の仕事で遅くなるって。
さっき電話があったのよ。」
「…心配だな。迎えに行こうか」
「あはは。だ~いじょうぶよ。
ホントにみぃは妹想いね。」
母さんはピアスをつけながらクスクスと笑っていた
その笑い方はとても璃祢に似ていて、嫌な予感がした。
何故なのか、よく分からないけど。
「やっぱり行くよ」
「心配性なのは父親譲りね?
りぃは大丈夫よ。ああ見えてしっかり者だからね。
それより買出し行ってくれるかしら?
夕食時には帰ってくるから」
「…わかった」
気乗りはしなかったが母さんの言うことに従った。
また後で面倒な事になるだろうから。
「ねぇ!!母さん!!
こんな時間になっても璃祢が帰ってこないんだけど!!」
母さんの夕食時には帰れなくなったという電話が来た
璃祢の大好きなテレビ番組がとっくに終わった
時計の短い針は12を指している。
璃祢の帰りがこんなに遅くなるだなんて事はなかった
「さすがにおかしいわね。
警察に電話してみるわ」
母さんの声はひどく落ち着いていた
「それより、密月。
ご飯は食べたの?」
「あ、忘れてた」
「ちゃんと食べなさい。
そしてもう寝なさい。大丈夫。
大丈夫だから」
母さんとの電話を終え、僕は脱力で座り込んだ
ただ、璃祢が無事なことを祈ってた
「…き!密月!」
誰かが必死に僕を呼んでいる。
目を擦り、身体を起こした
いつの間にか眠っていたみたいだ。
あ、そういえば璃祢!!
「璃祢は!!」
飛び起きた僕が見たのは久しぶりの父と化粧が崩れた母。
2人とも、心なしか表情は暗かった。
「ねぇ!!璃祢は!?
無事だったんでしょう!?
ねぇ、自分の部屋で寝てるの?」
「落ち着いて聞いて。
密月」
「璃祢は…帰ってこないし。
もう一生逢えない」
父さんの眼鏡の奥の瞳が潤んだ。
それを見た母さんが父さんの手をきつく握る
「…?何言ってるの?
無事なんでしょう?」
「…殺された」
ポツリと父さんが呟いた
「璃祢は殺されたのよ。密月。」
「少女達だけを狙った連続殺人事件
君も聞いた事あるだろう?」
知らないおじさんが僕に問いかける
たぶん、刑事の人だろう。
「…き…いたこと…あります」
それは残忍な殺人。
少女だけを狙い、遺体をバラバラにし、瞳だけを持っていく極めて悪趣味な事件。
「そ、それが…?
璃祢と…何の関係が…?」
「守上璃祢さんは、その殺人事件の被害者に。」
刑事さんは正面を見つめ、呟いた
彼は何を思うのだろうか。
たくさんの少女達の死を見つめ、その死を家族に伝える。
何故か僕の思考は冷静だった
少し安心したのかもしれない。
だって僕らに永遠はあっても幸せは約束されないから。
どこまでも自分勝手な僕を璃祢は怒るだろうか。
「璃祢を…
妹を見せてください」
僕の声は震えてなかった
刑事を正面から見つめ、僕は呟いた
周りは驚いたように、僕を見つめる
「お願いします」
刑事はひとつ頷き、僕の頭をくしゃと撫でた
僕らの想いは過ちで、
僕らの出逢いも過ちであった
そしてまた、僕が永遠に璃祢を愛することも過ちなのかもしれない。
名前読み仮名
守上密月-もりかみみつき-
守上璃祢-もりかみりね-
アトガキ-独り言-
ここまでお読みいただき感謝いたします。
恋とは夢中になる事で、
愛とは自由になることらしいです。
誰かに全てを愛されたいと思う反面、
こんなボクを愛してくれる人などいない。と
思ってしまうのです。
そして、また誰かを愛すこと等ないと。
まぁ、余談ですが。
今回は最悪な結末ですが2人の愛に
気付いてほしいと思います。
それでは、お時間をいただき
ありがとうございます。