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彼だけ惚れてくれません!  作者: 佐倉 るる
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第3章 1話 現状把握 



「ん……うーーん……」


 寝苦しさに、目が覚める。よく覚えていないけれど、悪い夢を見ていたみたいだ。私が今寝ている木製ベッドのヘッドボードに置いてあるデジタル時計は、AM2時18分という文字を表示している。

 最近、夢見が悪く、寝付きも悪い。それもそのはず。見知らぬ世界で、見慣れぬ寮の、無駄に広い豪華な1人部屋で寝泊まりしないといけないのだ。深い眠りにつけるわけがない。

 このままでは、うまく寝付けそうになかったため、私はゆっくりと体を起こし、その場で膝を抱え、頭の中を整理する。


 私が『桃ロキ』の世界へ入って2日が経った。

 寝て起きて学校へ行って、と体感でも、きちんと2日間経っている。夢だとしたらあまりにリアルで、長すぎる。本当に『桃ロキ』の世界へ入ってしまったのかもしれないという事実が、どんどんと現実味を帯びてくる。


 現実世界はどうなっているのだろう。『桃ロキ』の世界と同様に時間は進んでるんだろうか。

 早くここから脱出しなければ、会社をクビになってしまう。というか、クビが飛ぶだけでは済まない。行方不明者になって、両親や友人に心配かけ、挙句、死んだことにされるかもしれないのだ。早くこの世界から出なければ。


 焦りだけが募り、部屋の肌寒い空気が私の心の不安を掻き立てる。


 しかし、私もこの2日間を無駄に過ごしたわけでは無い。幸いにも、この2日で、いろいろと情報を得ることができた。


 今、私は中等部の3年ということになっており、私がこの世界にやってきたのが、3月2日。そこから2日経っているので、現在は3月4日で、卒業式は3月9日にあるのだそう。

 また、卒業式の次の次の日、11日には、陽愛と2人で卒業遠足として都内のテーマパークに行くことになっており、さらに、その卒業遠足の次の日には、恭哉と共に私の実家、つまり、ゲーム内で言うところの一条家のお屋敷に帰ることになっているらしい。


 抱え込んでいた足を、ふぅっと解放し、再びベットへ倒れ込む。


 私が今この世界ですることは1つ。


 「ゲームクリア」するために、私と、主人公の陽愛(ひより)が、2人して誰かと結ばれること。

 『桃ロキ』攻略キャラは6人。しかし、隠しルートの1人、瀬名 蒼生(せな いぶき)は、恋愛関係として攻略できるわけでは無いため、正確には、攻略できるキャラは5人なのだけれど。


 チャラ男で女好きキャラの須崎 恭哉(すざき きょうや)


 硬派なクール系イケメン、本作メインヒーローの楊井 奏(やぎい かなで)


 人懐っこい犬系年下くんの天能 拓海(てんのう たくみ)


 優しい男に見せかけ、実は、すごい束縛をするヤンデレ系男子、瀧本 翔磨(たきもと しょうま)


 全員攻略後に解放される隠しルート的扱いで、ミステリアスボーイの瀬名 蒼生(せな いぶき)


 そして、私が深く深く愛しているツンデレ男子の宮内 悠斗(くない はると)



 せっかくゲームの世界に入ったのだから、もちろん、私は悠斗くんと結ばれたい。

 主人公の陽愛には、誰がいいだろうか。

 目を閉じて、攻略キャラのことを思い浮かべる。


 恭哉は、理由があるにせよ人を傷つけた前科があるので無し。

 

ヤンデレの翔磨は彼女を束縛したり、軟禁をしたりするため、二次元として見る分にはいいが、現実の彼氏にするとしたら、オススメではない。


 年下犬系男子の拓海は、主人公の陽愛が天真爛漫の彼に振り回され、結ばれるまでに大変な思いをすることを知っているため、却下。

 しかも、拓海ルートは、一条めぐがアドバイスするシーンがたくさんある。私はおそらく、うまくアドバイスできないし、縁結びのキューピットになれる自信がない。


 やっぱり、陽愛にはメインヒーローである奏くんがお似合いだろう。


 閉じていた目を、目をさらにぎゅっと力強く閉じ、下唇を噛み、拳を握る。

 早くこの状況を打破しなければ。なるべく、陽愛がメインヒーローと結ばれるように動くようにしよう。そして、私もまた悠斗くんと出会って恋愛をしよう。

 

 行動するために、今は英気を養わないと。


 私は、ベッドに全てを委ね、瞼を閉じたまま、ゆっくりとした深呼吸を繰り返した。


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