君とそこで1
初めての作品ですので、文言が正しくないところも表現力が足りないところも多いと思います。貴重な意見いただけると幸いです。
出会いは、母の友人の紹介で訪れたとある舞台でのことだった。
可憐な女性が舞台で舞う。
何人もの役者がいる中でその女性だけになぜか目が奪われた。
一目惚れだった。
劇が終わってもまだ、僕の目蓋の裏で彼女は生きていた。
田んぼだらけの町に新築がポツポツと出来かけた、まだ発展途上にも至らないそんな町で僕は育った。
地面には昨晩の湿気で凹にできた水が凍り、車の窓や扉には霜が綺麗に覆っていたそんな季節。
自分の体温で暖まった布団から出られないところを、母に叩き起こされる。
「秀。いつまで寝てんのよ。はやく学校の支度しなさい。」この大声は毎日家の外まで響く。
いつもの朝だ。
僕は通う大学の身支度をし、家を出る。
最寄駅までの通り道、なぜか今日はとても心地が良い日だった。
改札を潜り、エレベーターを降りてすぐ近くのホームで電車を待つ。これが僕の日課だ。
アナウンスとともに、電車のくる音楽がホームに流れる。
そんないつもと変わらない日常に、エレベーターが僕にプレゼントを持って降りてくる。そこにはあのとき出会った彼女がいた。
運命だ…… 僕はそう思った。
だけど、現実は甘くなかった。僕には声をかける勇気もなければ口実もない。
必死に何か理由を探すが、何も浮かんではこない。多分浮かんできても恥ずかしくて言葉が詰まってしまうだろう。
でも、僕にとって彼女と同じ空間にいることだけでとても嬉しかった。
同じ電車、同じ車両の同じドアから入っていく。
そして僕がいつも立つ場所。電車を入ってすぐの左隅。その正面に彼女は立つ。
観客席から見ているときはとても手の届かないような遠い人だと思っていたのに、今は簡単に手が届きそうでどこか違和感しかなかった。
自分の持っている携帯を横目に彼女をいちいちみてしまう。
彼女はとても真剣な眼差しで台本か?ただの小説かはっきりはしないが読んでいた。
むつかしそうな顔をしたり和らいだ表情をしたりする彼女を僕は、目が離せなくなっては、我に返り目をそらせまた彼女に視線を送る。そんなことを続けていた。
そして僕の降りる駅につき、僕は降りていく。
その片目に彼女がいる。
また明日も。そう思いながら今日もまた一日が始まる。
翌朝、また今日もと思いながらいつもの通り道で足を弾ませる。
そして最寄駅のホーム、また彼女と同じ電車になった。
そんな日が続いた。
気がつくと、彼女と駅で出会ってから一年もたつ。
だが何も変わっていない。
彼女がいつも僕の前に立ち、その彼女を僕は横目で見る。
そんな生活がいつまでも続けばいいとそう思っていた。
しかし、ある日を境に僕は彼女と電車で遭遇することがなくなった。