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86:見送る背中は

おめでとう、すべての子供達......。

ありがとう、すべての子供達......。

 時期は流れ、別れの季節はやってきた。3月9日......卒業式だ。

俺たちは、在校生代表として出席して麗美さんと亜莉須さんの旅たちをいち早く見届けた。在校生代表として俺のクラスの委員長が祝辞を述べた。


『寒さ残る晴れやかな今日 実らせる花はこれからの旅たちを祝福しているようです。卒業生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。在校生一同、心よりお祝い申し上げます。いつも、私たち後輩を導いてくださった諸先輩方~』


 天河あまのがわ 美琴みことさん、降谷ふるや 善治よしはるさん、そして御笠みかさ 麗美れみさんと、結城ゆうき 亜莉須ありすさん......この人たちにはいろいろ振り回されてきたし、俺も散々振り回した......。 一昨年に出会って、手芸部をまとめてくれていた亜莉須さん、降星会から途中参加してきた麗美さんは俺のことを『ダーリン』なんて言って恥ずかしかったけど、うれしかったなぁ......。降星会の天河さんとは生徒会長になってからの方がお世話になっていた気がする。降谷さんともちゃんと話せたのも去年か......。一個上の先輩には、いっぱい思い出があって、たくさん戦って、たくさん笑いあった気がする。



『~これからも我々は卒業生皆様の精神を受け継ぎ、これからも皆さんとの欅の木の下の思い出を胸に伝えていきたいと思います。 本日はご卒業おめでとうございます』


委員長の祝辞が終わり、次に卒業生代表天河美琴の答辞が行われた。


『桜の蕾も膨らみ始め、春の訪れを感じる今日、私たちはそろって無事に卒業の日を迎えることができました』

 

彼女は学校での思い出にひたりながら先生に感謝の意を述べていた。

思い返せば、彼女と降谷さんとの出会いは最悪だった。できれば出会いたくもなかった二人だけど、自由を奪われてしまうよりも行動しておきたかった。彼女の言葉に俺自身も感傷に浸っていると彼女の言葉から以外な言葉が出てきた。


『私は一度過ちを犯しています。偽りの正義感と傲慢に友人とともに暴走していました。生徒の自由を顧みず行動していました。でも、あるとき自由な人間に出会いました。女性関係も風紀も自由に行動する人間です。到底我々は受け付けませんでした。でも、そんな彼から心の自由さと個性のすばらしさを学んだような気がします』


彼女が誰のことを言っているか分かった。でも俺はそこまで偉い人間じゃない。ただ、自分のために動いていたんだ。そう思ってたけど、結果的に誰にとってもいい方向になっていたなら俺はうれしい。


天河さんの答辞が終わり、校歌を一通り歌い、無事卒業生を見送った。卒業式終了後、俺たちは家庭科室に集まった。もちろん、俺たち手芸部だけで送別会を開くためだ。卒業する二人が家庭科室に卒業証書を持って現れる。いつもの制服なのにどこか寂しそうにくたびれている。

俺たちは二人に大きな花束を渡した。


「改めて、卒業おめでとうございます! 亜莉須先輩」


「麗美さん、おめでとうございます!」



天使と俺が代表して花束を手渡すと亜莉須先輩の眼には少し涙が溜まっていた。麗美さんも少し目頭が熱くなっているようだ。


「嬉しいよぉ......。ありがとうねぇ」


「ほんと、この部活に入ってからはいい思い出ばかりよ。全部、ダーリンのおかげだね」


亜莉須はうれしさのあまり、俺に抱き着いてまわりは一瞬驚いた。俺も驚きだよ......! うーん、すばらしい。


「亜莉須、ちょい長いよ。アタシもダーリンを抱きたいんだけど?」


「あなたの“抱く”はなんか嫌感じがするんでダメです!」


札杜ふだもり あやがほっぺを膨らまして、抱きしめようとする麗美さんの前に立って引き留める。麗美さんは礼の頭をなでて抱きしめる。


「かわいいー! ほんと、礼ってかわいいよねぇー!」


「ええ!? ちょちょ! 御笠先輩? やめっ、変なところ触らないで下さい!!」


麗美さんはスッと元に戻り、改めて礼に握手した。


「部長、頑張ってね」



礼は剣道部を本格的にやめ、自分と向き合うために、手芸部部長の道を選んだ。俺と一緒にいたいというのもあるだろうけど、そんなのは関係ない。父親の道場を継ぐことより自分のやりたいことを見つけるためリーダーを引き受けてくれた。亜莉須も先代部長として礼に挨拶をした。


「私、服飾の専門学校に通うことにしたんだぁ。のぶくんが自分の夢を諦めないように私もあきらめずにファッションの事もっと勉強したいって思ったんだぁ......。だから、礼ちゃんもきっと見つかる! 見つかるまで、部長として頑張ってね」


「見つかっても頑張るのは変わりありません。......そうですね、信男さんのように夢ができるように精進します。お二人とも頑張って」


「「ありがとう」」


二人の笑顔を最後まで俺たちは見送った。俺たちも来月からは最高学年、3年生だ。俺は父親との決着を付けなければならない。天使や怜たちを見渡すと、彼女らも何かに決着をつける決心をつけていた。



次回からはいよいよ、3年生編、最終章!!

次回「如月信男は魅力的である」

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