84:バトンが渡る君へ
前回に引き続き雅との対戦!
信男は相川の意志を虹郎は信男の意志を受け継ぎ、恋愛を越えた「ハーレム」を追い求める!
小津雅は虹郎、そして信男たちの前に立ちはだかっていた。自由をひけらかし、信男に煽る。しかし、信男は反応を示さずに虹郎だけが彼に対抗心を燃やしていた。
「雅! こんなときに自慢話か!」
「なんだよ、くそ弱虫の虹郎は引っ込んでろ。俺があのハーレム王を引きずり落して俺が真・ハーレム王になるんだよ!」
「「きゃー!! 雅様ステキ!」」
「モテてるやつが偉いんだよ! そうだよな、如月信男!」
「雅、それは違う! お前は......羨ましいだけだ!」
「えっ? 師匠?」
「俺......素でモテたことないもん! あんなふうにもてはやされたことないもん。でも、それが偉いわけじゃない! 羨ましいけど、自慢するためのハーレムじゃない。みんなと心で繋がって、信頼しあうのが本当のハーレムだ!」
「男女の絆なんてふざけている! 男女は愛し、愛されるか。支配するか支配されるかだ!」
信男が言い返そうとした瞬間、虹郎が信男の前に立って拳を震わせて話し始めた。
「俺も、モテたいから信男師匠の元についた。だけど、モテるってのは外面じゃないって、ただ女の人にもてはやされるだけじゃなくて、もっと内面のことだってわかったんだ。雅、お前にそれをわからせてやる!」
そういうと虹郎は心激棒を現出させた。雅もそれに呼応してハウリングスーツを現出させた。ハウリングスーツの手の平から音波を発生させるも虹郎はよけきり、自身の心激棒を早く振り発火させ火炎放射のように相手にあてつけた。雅はスーツのおかげでなんとか焦げることはなかったが痛手を負ってしまう。
「弟のくせに生意気だぞ!」
「双子なんだから兄も弟もクソもないだろ!」
「如月信男の金魚のフンだろ。虹郎、目を覚ませ。所詮あいつも俺と同じ煩悩の塊だ、何が違うんだ」
信男はその言葉を聞いて虹郎の前に踏み出し語りだした。
「違う。初めはそうだったけど、俺は俺なりのハーレムを貫く! そしてこいつはそれを受け継ぐ弟子だ! ヒロインが多いとか少ないとかじゃない。誰が真のヒロインかとかじゃないんだ」
「ホントにそう思ってます? 師匠」
「今はそうだ! 大丈夫、お前の良さは俺が一番よく知ってる」
そういうと信男はラヴ・マシーンを現出させその手の中に虹郎を乗せた。
「虹郎、俺らが抜けたらお前たちが部活の顔になるんだ。だから決着をつけて来い!」
「はい、師匠!!」
「やられてたまるかぁ!」
虹郎と雅がお互いの思いを音楽にのせて戦う姿に信男が強く後押ししていた。信男はあえて戦闘には介入せず、ただ彼の動向を見守った。
「心撃打 乱れ撃ち!」
「ハウリングインパクト、最大出力!!」
お互いを打ち合った後、二人は背後に敵を見据えて立ちすくんでいた。
「くっ......」
「ふん、虹郎! お前はまだよわぐゎっ!」
雅はその場に倒れてしまう。雅の連れ添いが一気にその場に駆け込んできていた。
「弱い姿を見せたのに、どうして」
「雅にはわかんねえだろうよ。弱い所を見せても付いてきてくれるのは本当にお前が好きだって言う証拠だ。そういうことっすよね、師匠」
「うん。もし、逆の反応してたら恐ろしかったけどね。俺はずっと弱い所を見せてきた。それでも、みんな俺についてきてくれてるんだ。だから、俺はハーレム王でいられるんだ!」
そういうと雅はうなだれて家庭科室を後にした。虹郎は逆に信男にさらにすり寄った。
「なんだかんだ言って、師匠は俺のこと認めてくれてたんですなぁ。このツンデレ師匠!」
「いや、さっきのは言葉のあやというやつだ。お前は弟子になるには半人前だ。だから、これからも俺と一緒に頑張ろう」
「はい! でも、ヒロイン戦争の件は丸く収まってませんよ? 」
「そうです! 続きです、続きをやりましょう!」
「えーと、何でもめてたんだっけ?」
「信男さんとはいえ一人の男性です。ですが、天使さんだけにひいきしているのはハーレム王としておかしいと。だからヒロインがだれか決着を」
「なんか馬鹿らしくなったわ。引退するってのに子供っぽいことに熱くなっちゃった」
「ウチ、のど乾いたぁ。るなっち、みんなの分のジュース買いに行こ」
「う、うん!」
「え、えぇ......」
礼が困惑してる間にきらりと天使はジュースを買いに出かけてしまった。正直信男はこのまま誰もが仲良くしていればいいとも考えていた。それでも彼女たちの中からだれかを選ばなければならない時がくるのだろうかと少し思い悩んでいた。
「どうしたんですか? 信男さん」
「なんか将来の事とか考えちゃって......。バラバラになってしまうのかなって思うと余計にみんなとの時間が惜しいと感じちゃった」
「悩みましょう! 一日一日悩んで、悔やんで、楽しんで......。それが信男さんにとって、私たちにとって『思い出』になるんです! 私も今、あなたと同じように進路に悩んでいます。それと同時に皆さんと楽しんで学校に行っています。それは両立できるんです! 」
「そっか、じゃあ......今日は悩むのやめて精一杯楽しみますか!」
「はい!」
礼の笑みは今までに見たことのない笑顔で信男を引き込んだ。引退式はきらりと天使が買ってきたジュースで盛大に開かれ、そして幕を閉じたが、信男は彼女の笑顔を少しも忘れられなかった。
次回は12月イベント! 12月のイベントと言えば!?
次回「俺の誕生祭!」




