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81:連廉はモブではない

今回は廉くん回!

YU‐JYO

 今日はたった一日限りのお祭り騒ぎで、信男たちも多くの文化祭行事を堪能していた。


「せんぱーい。しーな怖いです~」


「アハハァ......。 じゃあ、俺から離れないで! しっかり守ってあげるから」


「はーい」


「ちょっと、のぶっち? うちもお化け屋敷むりすぎてぴえんなんだけど」


「じゃあきらりももう片方の腕に掴まってていいよ。大丈夫、生徒が作ったお化け屋敷なんだから」


そういってお化け屋敷をくぐり抜けると明るみに出た。ようやく出口となったのだ。信男は二人を連れて無事帰還した。彼の膝が笑っているのをひた隠して3人は他のクラスの元へと出かけた。


「あっ、麗美さん!」


「あら、いらっしゃい。3年は飲食解禁だから今回は張り切って『アイスの天ぷら』よ」


「アイスの天ぷら? なにそれおいしそう!」


「じゃあ、天ぷら三つお願いします」


「ダーリンのため、全力全開でいくわね」


クレープに挟み込まれたアイスが衣をまとってよりおいしく仕上がっていく。


「はい、おまちどおさま。天ぷら三つね」


「ありがと。麗美さん」


「すごいおいしい! 姐さんって呼んでいいですか?」


「とうとうあたしにも弟子ができちゃったか......。しいなちゃんは分かってるねえ」


「店番終わったら部活にも顔出せます?」


「そうねえ。今日、廉君の誕生日でしょ? パーティまでには一かい顔を出しておくわ、最後の文化祭だしね」


三人は天ぷらを堪能した後、一年のブースへと移動していった。そこには佐伯ももが忍者の格好で看板を背負ってこちらに向かってきた。


「なあなあ、ボク達の手裏剣的当てにきてーな」


「え......手裏剣? 大丈夫なの?」


「大丈夫! 軟質素材? でできとるから! じゃ、善は急げ!!」


ももに押されて彼女のブースにやって来ると真子がももとは違うミニスカ忍者に扮して元気に対応していた。


「張り切ってるね、真子」


「き、如月信男!? ちょっと恥ずかしいから見ないでよ!!」


「まあまあ、真子よいではないかー」


「あーーれーー。 ってやらすな!」


「ふたり仲いいみたいだね」


「「そんなわけあるか!」」


「ハハハ。 今日の誕生日会よろしくね」


「かしこまりました!」


そういって手裏剣を投げ当てて無事商品をゲットし信男は家庭科室に帰還した。盛況な雰囲気から一転して少し落ち着いてきているようだ。信男は家庭科室にある冷蔵庫の中にケーキがあることを確認してみんなを集め始めた。廉を目隠しして真ん中に据えた椅子に座らせて電気を消した。廉もこの辺でなんとなく察したのかしゃべらなくなりことが終わるのを待っていた。


『廉くん、お誕生日おめでとう!』


その合図で廉は暗がりに灯るろうそくの火を消した。廉はフッと笑みをこぼすと信男たちは大勢ではやし立ててクラッカーを鳴らした。


「すげー誕生日会だよ、ありがとな」


「おう、俺たちの特性ケーキだ! 今日はみんなでたべるぞ!」


「これ、信男さん一人で作ったんですか?」


「そらそうだろ! っといいたいところだけど、天使ちゃんと一緒に作ってもらった。彼女、手際はいいから」


「手際『は』じゃなくて『も』でしょ! もう~」


包丁でケーキに切れ目を入れながらムスッとする天使におどけるとみんなが笑い始める。天使は顔を赤らめつつも微笑んでいた。廉の誕生日会は何事も起こることなく誕生日プレゼントを渡して終了した。廉はプレゼントの時計を眺めてその腕に通した。


◇◆◇


「ただいま」


いつもの帰り道、家路につくと俺は靴を靴箱に入れて二階の部屋に上ろうとした。すると後ろから低めの声が冷たく呼びかけてきた。


「廉、最近帰りが遅いな」


「友達付き合いが多くなったからな」


「あそこに通わせたのは友達と遊ばせるためじゃないぞ」


「医者にはならないって、父さん」


「廉、俺はお前を思って言っているんだ」


「思ってないでしょ......」


急に父さんは俺に近づき腕を掴んできた。


「なんだこの時計は! こんな高価なものどうやって買ったんだ! もしや万引きか」


「そんなわけない! これは俺の誕生日に学校の友達からもらったんだ! ちゃんと譲り受けた友情の証なんだ。それを悪く言うなよ!」


「っ......!! べ、別にそこまで言っていないだろう! とにかく、お前は俺と同じ医者の道をだな」


「嫌だね! 俺はなんとなくで医者になるやつには診てもらいたくない!」


「そうか......。なら、もう少し考えなさい。安定した道というものを」


「医者になる気はないよ、いまのところは。勉強はするから、せめて友達との最後の青春ぐらい突き合わせて欲しい」


そういって俺は自分の部屋に戻った。初めて俺は親に反抗した、反抗するなんて時間の問題だと思ってた。でも、親とちゃんと話すってこんなにもしんどくて面倒で......でも、ちょっとしたスッキリ感があった。父さんに少しでも自分の言葉が届いていると良いけど......。


◇◆◇

 

 廉はベッドに飛んで入った後少し物思いにふけて眠りに入った。彼はありきたりな人間かもしれない。だが、それでも自分と向き合う一人の人間である。ただ一人の高校生として悩みながらも如月信男と共に青春を駆け抜けるのである。


次回未定

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