71:収容番号000
誰がこんな嫌な設定考えたんでしょうね。まあ、僕なんですけども......。
本日はクリスマスですがクリスマスらしからぬことをしています。
私はだれ......?
なんで、水の中にいるの?
でも、苦しくない。どうして、あなたは私を見つめているの??
あなたは......だれ?
「......っ!? はあ、またこの夢なの?」
私は私。天使月姫が自分の名前......。でも、最近自分がわからない。比古くんと話してから変な夢ばかり見る。私はなにものなの? 知りたい、でも知りたくない。でも本当は知っているのに知らないふりをしているだけ......?
私は、もう知ってる。そう、私は人工的に生まれた子供。SSS機関によって生まれた個性を生み出すための媒体。それを神様だなんて笑っちゃうよね。
そう、この世界に初めから異能の力を持って居たのは如月心之介だけ。それが何でかは知らない。私が知っているのは私が普通の子供じゃないってこと。
「とぼとぼ歩いて、天使ちゃんらしくないね」
信男君が優しく話しかけてくれる。今は、その優しさが本当に痛く突き刺さる。今は優しくしないで......私は!!
「私は、あなたをだまして、すべての人をだまして分断を生んだ元凶なのよ?」
「天使ちゃんがどんな人間だろうと関係ないって言ったよね!? 俺は君が暮れたこの個性に誇りとうれしさを感じてる! 悪いのは全部学園の理事長なんだ! そいつに言って普通の女の子にしてもらおうよ!!」
「そんなのできるのかなぁ......」
「できるって信じるんだ! 俺、今日合わせたい人がいるんだ」
そういうと信男君は公園へ引っ張り出してくると、そこには降谷くんがいた。
降谷一星(もとい、降谷善治)は私の幼馴染。つまり、SSS機関の施設で生まれ育ったということになる。
「よう、一星!!」
「ははは。もう、その名前はよしてくれよ。善治でいいよ」
「うーん、まだしっくりこねえけど......。で今日はお前と天使ちゃんの関係についてちょっと聞きたいだけど。後、できれば理事長の櫛ヶ科 兼志朗についても」
「天使くん自身はどうなの? あまり覚えてない?」
「うん、あなたのことをぼんやりと覚えてるってのと、私が普通に生まれた子じゃないってことくらい」
「そっか。でも、君が無事でよかった。だって、君を自由にしたのは僕自身だから」
「え? そうなの?」
「うん、僕があそこでいじめられていた時、君が慰めてくれたから僕は僕でいられた。でも、君が実験をされる度に衰弱する姿を見て発狂してしまい、僕は施設を追いやられ、その腹いせに一緒に逃げるつもりだった。でも君は自由になった瞬間、空を待つ鳥のように飛び立ってしまった。僕はそれを追いかける少年のように何度も外を見渡した。でも、だめだった。そして、多くの人に個性が、異能力が生まれたんだ」
「そうなのか......。それで俺も個性をもらえたのか。てことは善治のおかげでもあるのか!? 」
私はこの二人が明るい笑顔で話し合っているのを不思議に感じていた。だって、一年前は火花を散らして魂を削ってぶつかり合った二人なのに朗らかに私の話題で盛り上がっている。
「こうやって、如月君と話せるのも天使君のおかげかもね」
「そうさ! 天使ちゃんがいたから俺とお前は巡り合えたんだ! 当然、クソ親父や比古にも。だからこそ、それを伝えたい。俺たちの個性はSSS機関の物でも親父だけのものでもない。俺たちのものなんだ。天使ちゃん、だから自分を責めないで」
私はいままで感じていた負い目を、重荷を少し下ろせて楽になれた。信男君はいつでも優しいんだよね。
「忘れていた。櫛ヶ科理事長のことだけど」
「おおお!! なんか知ってんのか?」
「すまない。名前しかしらない。というか、この学園全員、顔も知らないんだ。つまりは謎の人物ってやつだね」
「そうか、わざわざ呼びつけてすまなかった」
「いや、僕は天使くんの優しい笑顔を見れただけでも満足だよ。まあ、お昼くらいおごってほしいけどね」
「ラーメンでいいか?」
「へ!? 本気で言ってるの?」
「ああ。俺はおごり慣れてるからな」
信男君は私の手を自然に握り、降谷君を連れてラーメン屋さんへと急ぐ。本当にこれまでのことを忘れているかのように......。これが彼の本当の個性。彼自身の魅力はみんなを平気で引っ張り上げられる力。私も彼のように自分の道を歩みたい。彼の隣で、誰のものでもない天使 月姫としての人生を送りたい。
そう思えた。
次回はいよいよ2学期に突入!!
ていうか宿題はみんなやってんのかな?(その辺はやっていることにしておきましょう)
次回「2学期だよ? 全員集合!」




