65:キャンピングっど日和
夏休みといえばキャンプ、クラブ合宿!
そして水着!!
「車に荷物詰め込めた? もううぐ出発だからお手洗いはさっさと済ませてくださいね」
「愛海さんってほんとお姉さんみたいだよね」
「まあ、姉があんなんだからね」
如月信男は部長のように周りに気を配って指示を出してくれている愛海を尊敬のまなざしで見つめるも、愛海自身は少し嫌そうな顔をしている。
「次期部長、どうですか?」
「言うと思った...。私は嫌よ。信男君がやりなよ」
「いやぁ。俺はエース体質だから」
「エースねぇ......」
信男は威勢よく見せつけるも愛海はチベットスナネコくらい目を細めて猜疑心を高める一方だった。その視線は信男をしおらしくさせてしまう。
「何やってんすか? 師匠! 愛海先輩! 荷物全部終わりましたよ。行きましょうよ!!」
「あ、ああ! すぐ行く!」
車で移動すること数時間、我々はようやく去年と同じキャンプ場へとたどり着いた。おのおの伸びをしながら都会とはちがう澄んだ空気を味わっていた。
「お前ら、ついたんなら早めにテント張らんのか?」
「えー。先生、もうやんの?」
今回は西京先生が保護者として見守ることとなったのでより部活らしくなったというべきだろう。先生は先生らしくすぐに遊びに行こうとした信男たちをまとめ上げ、テント張り作業に取り組んだ。
「よいせ、よいせ! おい、虹郎! ちゃんと釘うってんのかぁ? ゆるいぞぉこれ」
「おっす、師匠! 下のテント張りはできるんですけどこれは初心者にはムズすぎですよ」
「すぐ下ネタ言うからモテねえんだよ。ぐだってねえでさっさとやって遊ぶぞ!」
小津と信男を含め全員がテントを張り終わると何人かは暑すぎて水着になって川で大はしゃぎしていた。信男は勢いよく服を脱ぎ去り、川ではなく確実にそこにある柔らかな山脈に飛び込もうとする姿に小津は慌てて水着パンツを引っ張り上げる。
「ちょっと! 師匠泳げないんでしょ!? 飛び込んだら死にますって!」
「誰が川で泳ぐといったぁ!? 俺は女の子という河を泳ぐんだよぉ!?」
「水着にテンション上がりすぎて血迷ったか?? こうなったら<現出 心激棒>!! 鎮まれ、師匠のやましい心!」
現れた打楽器のバチを使って相手の心を落ち着かせたり激しくすることのできる<ご機嫌とりがうまい>小津は如月信男の心を落ち着かせる。如月信男は少し冷静さを取り戻し、みんなを見渡した。
「ほら、のぶっち! うちが泳ぎを教えてあげる!」
「まずは浮き輪で水に慣れてからがいいと思いますよ、マs...信男さん」
きらりとあやは相変わらず意見が合わず張り合っているが根底の部分はお互いを理解しあえている。それは信男と廉が喧嘩していてもいつも戻ってこれるように、不思議なつながりがあるのだ。
「ダーリンはあたしと特訓(意味深)したいのよね?」
麗美が相変わらず漁夫の利で信男の脇をがっしりと自分の腕と胸で掴んで妖艶な笑みを浮かべていた。彼女を敵対視するように、しいながもう一方の信男の手を両手で掴みうるおんだ上目遣いでねこなで声になってねだってくる。
「えぇ~、しーなとも特訓してほしいなぁ~」
「えへへぇ、どうしよかなぁ」
「如月、お前今日の晩飯、一人でジャガイモ剥きな」
「俺も先生に賛成。......ってことは晩飯カレーかよ」
先生の言葉に廉と信男は、別の理由で落胆するも他の子たちは大はしゃぎして、誰が当番をするか役割分担していた。晩飯を食べるにはまだ時間があるのである程度川遊びをした後、ミーティングで二日目以降どう行動するか決めることにした。
「今回は、去年より一日多いから手芸部らしいワークをしたいと思うんだけど、どうかなぁ?」
「それに関して、異議はありません」
「ボクはもっと個性を磨きたいなぁ」
「確かに佐伯の言う通り、俺も師匠に稽古つけてもらったことないし、その時間も欲しいっす」
「パパにワークショップしてもらうようには頼んであるから午前中は手芸部の活動、そっからは信男君含めてみんなの個性を伸ばす練習だね! それでいいかなぁ?」
『大賛成!』
満場一致となったところでようやく日が落ちてきた。つまりは晩御飯の用意だ。信男は予定通りジャガイモの皮をむき、きらりは慣れた手つきで玉ねぎや信男の剥いたじゃがいもを切っていく。あやは少しおそるそるニンジンの皮をピーラーで剥いたあと、慣れていなさそうな怪しい手つきでニンジンを乱切りにしていく。亜莉須がしいなが準備しておいたお肉を炒め、その後、玉ねぎ、にんじんを炒めに入っていき、全体的に火が通ったらジャガイモを加える。少し和えた後、水を入れ十数分煮込む。
「ごはんくらいなら、俺でも炊けるな」
「れんちー、まじできる子じゃん」
「ごはんくらい......だれでもできるだろ。 なあモブ男」
「おう、俺はカレールー入れるだけだけど」
ぐつぐつと沸いている鍋にカレールーを落とす。そこから、独特の香りと色がにじみだされて行き、どんどんとカレーへと変貌していく。ごはんも、うまい具合に炊き終わった。飯ごう炊さんは青春の醍醐味、そう先生は鼻を高くして威張り散らすも、それを無視するように佐伯と西野がお膳にカレーライスをよそい、総勢13人の初日の宴は無事においしく迎えられ満足のいくものとなった。
いよいよ明日からは本格的な合宿だ。信男は抑えきれない高揚感とちょっとばかりの緊張が体を火照らせるのをカレーを飲み込んで明日の栄養にした。
さむいですね。
次回も夏の暑さで寒さを忘れようね!
次回「個性の磨き方①」
下の方にロールすると星...ありますよね。あれは作者の心を熱くして投稿が早くなるボタンです(多分)なので押してもらえると嬉しいです。




