64:大阪ハネムーン
大阪名物いうたら? たこ〇さのたこやき♪
知ってる人いるんかな?
今日は大阪観光編です!
新幹線に揺られて数時間。新大阪からJRを乗り継いでとある駅にたどり着いた。
駅から降りると佐伯が先回りして手を振って迎えに来てくれた。
「ようこそ! 大阪へ! というか、今から行くのは新世界やけど」
「え? 何それ?」
「大阪のすごい所やでぇ、知らんけど。ま、善は急げや! 離れんように手ぇつないでいくで」
俺はぐいぐいと佐伯のペースで引っ張られていく。彼女とのデートは初めてだし、話もそこまでだというのに彼女は前へ前へと先走っていく。まるで昔の俺のように...。
「もうすぐやで!」
「どうして、君は...佐伯は俺の」
「そういうつもる話は新世界でご飯食べてから! な?」
「あ、ああ」
大阪は初めてだから多くの風景が新鮮に見える。そして、目の前には通天閣というものだろう。これが、大阪のシンボル。そう思っていると一瞬に衣の揚がった香ばしい匂いが広がってきた。これが串カツ、二度漬け禁止で有名なやつだよな。
「あ、二度漬けは」
「ダメなんだろ。それくらいは礼儀としてわきまえてるよ」
中に入り、四人掛けの席に向かい合わせに座る。メニューのおすすめは佐伯に丸投げさせてもらった。だってわからないんだもん。
「で、先輩はさボクの事どう思ってはるん?」
「え? いや、グイグイくる子だなぁって思うけど」
「それだけ?」
「かわいい」
「ほんで?」
「それくらい...だって会ってそんなに経ってないだろ? キャンプもほんとに行くのか?」
「将来の旦那さんが行くんやから行くに決まってるやろ?」
俺が少し悩ませてると色とりどりの串が並べられ始めた。俺は佐伯と取り分けるため串を取り外そうとした。だがその手を佐伯は素早い手つきで止めた。
「何してんの?」
「いや、平等に取り分けようと......」
「そんなめんどい事せんでいいって! ていうか串で食べる醍醐味失うから! 気にせんで食べまくろ!」
彼女の意見には少しびっくりしたが、確かに串カツ屋に来たのに串から外したらとんかつ屋に行けばいい話だ。俺は串に外した分は自分で食べ始め、味わった。サクサクとした衣とちょっぴりレアめな肉がおいしい。
「おま...いや佐伯はどうして俺を大阪に誘ったんだ?」
「旦那さんにするからやで?」
「冗談抜きで」
「冗談ちゃうんやけどなぁ...。でも、キャンプ行く前にどんな人かもっと見極めたかった......かな?」
「で、どう?」
「うーん、もうちょい付き合ってもろてから教えてあげる。はい、あーんして」
「あー」
うん、おいしい。一通り食い終わると会計に映った。俺が先輩なんだから払うと言ったが学生だから割り勘にするとうるさかったので先に支払った後、戻してもらった。そしてさらに俺たちは近く動物園があると言うのでついて行くことにした。こんな都心に動物園なんてあるのか? そんな疑問はすぐに振り払われた。
天皇寺動物園。結構おっきい、というより思っていたより大きいと言った方が正しいだろうか。聞くところによると結構古くからある動物園らしい。
「さ、入るで!」
動物園内は多分飼育されてる多色な鳥が飛んでいたりするのはびっくりしたが、普通にトラやペンギン、キリン、珍しいところだろキーウィのような珍獣が肩を並べていた。
「で、なんでニワトリが放し飼いになってるんだ?」
「先輩! これ、ラッキーな子なんですよ! なんでも元々エサやったのに何度も逃れて生き残っちゃったらしいですよ!」
ふーんと見下ろしているとその子から何かオーラじみたものを感じた。これも個性というものなのだろうか......。これが、この子を生き残らせた要因かと納得していると佐伯はセカセカと先を進んでいた。
「おい! なんで佐伯はそんなにせっかちなんだ!? もっとゆっくりしたらどうなんだ?」
「前の子にも同じこと言われたなぁ......。やっぱりゆっくりした方がええんかなぁ?」
「そうだよ......」
佐伯は少しうつむきながらこちらに戻って手を握り返し出口の方へと戻っていく俺は引っ張り直しなだめながら話を聞いた。
「待ってくれ! どうしたんだ!」
「帰る。ボクと一緒におってもおもろないんやろ? あの娘みたいにいつか離れていくんなら」
「そうじゃない! その子はそうだったかもしれないけど、俺はそうゆうことじゃない。お前はすぐに先のことを考えすぎなんだ。まず俺はお前と一緒にいて面白くないなんて一言もいってない! ただ、今までにない子で困惑してたんだ......。佐伯は佐伯なりのおもてなしをしてくれた...。でも、相手を思いやるってことも覚えて欲しい。俺もそれで失敗してるから......わかるんだ。お前の焦燥感」
佐伯は地面にうずくまり、ずっと顔を隠していた。俺は手を貸さずに同じ目線で少し寄り添う。ぐずる声が聞こえたが聞こえないふりをしながらも手を握った。そうすると彼女は思い切りよく立ち上がる。びっくりした俺は手を放して地面に転げ落ちそうになったけど彼女が素早い手つきで俺を引っ張り上げた。
「時間は限られてるから、高校生活も一瞬や。その時その時を楽しまなあかんな!!」
明るく笑いかける佐伯に俺は満足し、仕切り直して大阪のディープなところの観光をしてもらっていった。存分に楽しんだ後、俺たちは電車を乗り継ぎ、東京へと帰っていった。
次回は いよいよキャンプに行くぜ!!
次回「キャピングっど日和」




