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56:氷の淑女と雅に踊る紳士~キラッと光るウソを添えて~

札杜VS小津雅!!

彼女の可憐さに再び萌える!

 札杜礼は凛と咲く白薔薇のような出で立ち会場に現れた。対するは虹郎とは対照的なちゃらちゃらした格好のDQN系陽キャだ。正直、遺伝子を疑いたくなるくらいに虹郎は素朴だ。


「あいつ、ほんとにお前の双子か?」


「何言ってんすか?  雅兄さんは俺の正真正銘俺の双子の兄貴ですよ。確かに性格面は似てないっすよね」



まあ、おちゃらけ方が派手か、地味かなくらいの違いだから驚くほどでもないか。礼と雅はにらみ合い、始めの合図とともにとんでもないさっきと共にあやが先手を打った。


「札杜流 居合:荒吹雪!!」


「俺にはそんな技ぁ、『無駄』なんだよ!!」


大きく荒げた声と共に雅は急にポーズを決めてそこを動かなかった。旋風を起こして切りかかる礼には物おじしていなかった。若干冷気のある霧に包まれた後、リングの上を見ると体についたほこりをとんとんとはたいて無傷の雅とそれに驚く礼の姿があった。


「何が起きたか、よくわかんねえって表情してるねぇ! クールレディ。 見えなかったのなら見せてやるよ! <変身(イクイップチェンジ>...」


そういうと雅の体は赤を基調としたタイツのような服に覆われ、膝の皿、手の平、そして口を覆うようにラジオのスピーカ―が張られていた。確かにどこかB級ヒーロー感があるが変身っていうのはさすがにダサい。ていうかイクイップチェンジってなんだよ。カタカナ使えばいいと思ってるだろ。


「SSS機関のおかげで強化された俺の個性をとくと味わうがいい!! 行くぞ、ハウリングインパクト! お前の技、衝撃を返してやる!」


手の平のスピーカーを礼に向けると衝撃波が破裂音と共に礼を襲った。礼は耳を塞ぎつつ、冷刀を地面に刺して吹き飛ばされるのを防いだ。雅は即座に先ほどの衝撃波を地面に打ち込んで飛び上がり大きく蹴りを入れ込もうとした。


「そんなことしていたって、音を操る俺の前では無意味なんYO! understand?」


「近くにいるのにうるさい人ですね。嫌われますよ。私みたいな人には特に」


「大丈夫さ、俺はモテるからすぐにお前の心も溶かしてやるよ! この試合に勝ってなぁ!!」


な、なにぃ!? あいつに礼を渡すわけにはいかんと俺がリングに入ろうとするも廉や天使に両秋をがっしり抑えられていて介入できなかった。


「は・な・せ! 俺は彼女のためにあいつを倒してやる! あいつは俺の敵だ! イキリDQNめ!」


「落ち着いて! 大会中の妨害行為は即刻退場なのよ? ノブくん優勝できなくなるでしょ!?」


「札杜さんが負けるわけないだろ! ずっとそばにいるお前が信じなくてどうする!?」


廉の言葉はスッと俺の言葉に刺さった。確かにそうだ。俺が彼女を信じてあげなければ、押されている彼女に力を貸してあげるにはそうするしかない。


「あやぁ!! 負けるな!! 自分を信じろ! そして君を信じる俺を信じて戦え!!」


礼は短くうなずき、雅の足を払いのけた。そこには島柄長を幻装したあやの姿があった。初めに現れたときよりも冷え込みが厳しくドライアイスを溶かしたような白煙に覆われていた。


「あなたには絶対に心を開かれたくありません!」


「ただのモブに心を奪われやがって! あいつは危険人物だ。即、収容だ。」


「させません!! マスターはただのモブではありません。優しくて、強くて、夢もあって、最高のマスターです! それをわからないあなたにマスターのことをとやかく言われたくありません! 我流奥義 朧月夜!」


剣をくるっと一回転させたかと思うと素早い突きが雅のお得意の衝撃を吸収する技を打ち砕いた。雅は軽く吹っ飛び場外へと持っていかれた。


『凄まじい戦いです...。幻装とは、すべてのペキュラーの行き着く最終段階と言われていますがそれが今、目の前で見れたことに感動しています。そしてそれが優勝候補と言われている札杜選手の手によってなしえたのですから鬼に金棒でしょう。』


解説を遮られるくらい小さかったがはっきりとした声であやが俺に言い放った。


「きらりさんにも応援に行ってあげてください!! 彼女にも...マスターが必要です! まだ試合は始まったばかりかと思いますし!!」


意外な言葉だった。彼女がいつも邪険に扱っているきらりを心配するようなまなざしは俺を突き動かした。もちろん、礼の試合が終わったら見に行くつもりだったが彼女に言われたらなおの事張り切っていくしかない。俺と廉、天使ちゃんはきらり側の試合会場に向かった。すると愛海と亜莉須の姉妹が見守っていた。確かに試合は始まってすぐくらいだった。愛海はこちらに気づき、こちらに手招きした。


「どう? 礼さんは」


「勝ったよ。こっちは?」


「まだ動き出したところってところね。相手は二階堂さんだから大丈夫だとは思うけど」


「あいつ強めだよ」


二階堂はこちらに気づいたのか少し睨みつけてこれ見よがしにきらりを縛り付けた


「おいおいおい。お友達がせっかく応援に来たのに随分苦戦してんじゃね?」


「うっせー! うちは縛られんのきらいだっつーの! ああん!」

二階堂はさらに彼女を縛り付けた。彼女に近づいて顎に手を当てて顔を近づけた。


「そう虚勢を張っていられるのも今のうちだぞ。 俺の新たな僕、バクライを見ればその口も閉じるだろう」


そういうと彼の紙から小さい人型の怪人が現れたその頭はどこか爆弾のようだった。彼が指を鳴らすと彼女の足にくっついて爆発した。さらにバクライたちがとびかかり、爆発しようとしていたがきらりは何とか足の呪縛だけが取れて蹴り飛ばした。


「まじ、うち怒ったかんね? 映えキック!」


「語彙力!!」


きらりはバクライもろとも二階堂を蹴り飛ばした。だが、彼は自分の後ろに嘘の壁を作り、場外を免れてリング内に戻った。二階堂は息を切らしつつ、次のしもべを呼ぼうと書き込んでいたがそれをすかさず、きらりは自慢の蹴りで紙とペンを落とさせた。現出した紙とペンは消え去り、縛られていた腕も元に戻った。


「いいぞー! きらり! 特別いたぁーいお仕置きかましてやれぇ!」


「おっけー、モブッチ。JKパワーをおみまいしちゃるもんね! 必殺、ぴえんこえてぱおんぱんち!!」


腕を最大まで伸ばして幼稚園児みたいにぐるぐると回してから一気にアッパーを二階堂に浴びせた。彼は意識を失い、天高く飛んだあと場外に落ちていった。幸い、スタッフが柔らかいクッションを置いてくれたので何ともなかったが名前のインパクトよりもとんでもない技だな。


「おっしゃーーーーーーー!!!」


『き、決まりました!!  きらり選手の逆転勝利!! 全身を縛られ、痴態を晒し万事休すかと思いきやの勝利です。やはり彼女のポジティブぱわーは底なしなのでしょうか!? これより一時休憩をはさみ、二回戦へと移ります!!』


そういうとお昼のチャイムが鳴った。お弁当の時間だ。今日に限ってはみんなが用意してきたお弁当を食する時間だ。俺の周りに手芸部のみんなが集まってきた。


「マスター、お疲れさまでした。お昼にしましょうか。腕によりをかけたので...」


「しっかり食べて午後も頑張らなくちゃね。うち、モブッチの横ー」


「ズルいわよ、きらり。 ダーリンの横はアタシよ」


「信男君。はい、あーんしてぇ」


皆で囲んで食べるご飯はやっぱりおいしい。しかも一品一品がみんなの手作りだ。幸せを噛み締めつつ亜莉須先輩の少し焦げた卵焼きを、礼の少し甘いきんぴらごぼう、きらりがデコったうさぎリンゴ、しいながハート型にでんぶを撒いたご飯...それぞれに愛がこもってて元気が湧いてきた。他のみんなもそれぞれのお弁当を食べて英気を養った。

ペキュラーメモファイル

小津雅:小津虹郎の双子の兄。陽キャグループの中心にいてうるさいのでどこにいてもわかる。弟とは違い、モテる。裏ではDJをしているという。

【個性】:うるさい、さわがしい。

<現出装>:サウンドハウス(彼はハウリングスーツと呼んでいるらしい)

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