53:仕組まれたグランファイト
体育祭を目前としながらも急に現れた二人の大人...。彼らは一体どういう人物なんだ!?
体育祭3日前にして新たな教師が俺たちの目の前に現れた。そいつの顔は一瞬で顔見知りだとわかった。
「このクラスの担任になります。生活指導の神宮寺です。そして彼は新しく学校の運営にかかわる法人に入った木村君だ。彼から今回の体育祭グランファイトにおいて規約について話があるのでよく聞いておいて下さい」
神宮寺一狼......。こないだ俺たちを襲ってきたグラサンじゃないか!? 学校でもグラサンつけてやがる......。そしてもう一人、こいつもめんどくさそうな奴だ。
「皆さん、お久しぶりです。と言っても知らないかもしれませんが、君たちの2個上の卒業生、木村裕也です。今回のグランファイトにおいて学校側の意向で我々が全面バックアップすることになりました。それにちなみ今回はエキストラマッチ。力に自信のあるモブでも参加を認めることにします。皆さんのよきファイトを楽しみにしております」
俺たちは少しざわついた。ペキュラー同士の戦いがメインだったP-1グランファイトだったのに今回は能力を持たないモブも参戦可能になった。一部の体育会系モブたちは盛り上がりを見せていた。でも、現出のない彼らに能力を使っていいのだろうか...。木村は俺を積みつけるなり、横目に見てにやりと笑って去っていった。
「なんかわかんねーけど、すげー!!」
「学校もそれだけ目玉にしてるだけはあるよな!!」
多くの声があがり、熱意の冷めぬまま放課後のチャイムが鳴った。俺たちはとりあえず、家庭科室へと向かった。みんなも今回の大会についての話は聞いているみたいだ。
「今回はモブも参戦なんすか??」
小津が目を丸くして言うとしいなが俺の腕に抱きついて上目遣いをしてきた。
「別に力のある人なら大丈夫じゃない? ね、先輩?」
しいなと小津でも意見が分かれてるなぁ。俺もどっちも意見としてある。ただ、運営の言っていることだから変えようがない。と考えてると俺が言う前に廉が口をはさんだ。
「運営ってのが言ってるんだから捻じ曲げようがねえよ。ま、その運営っていう響き自体、怪しいけどな。ていうかあの生活指導、モブ男が出会ったSSSのエージェントなんだろ? ていうことは、この大会、何かヤバいことが起きるんじゃ......」
「廉、それは俺がいうセリフだ」
廉にいつもかっこいい分析を邪魔される。話さなけりゃよかった。
「れんれんは出るの?」
「パス。お前らとは戦いたくない」
礼が少し怪訝そうな顔で俺たちに割って入ってきた。
「能力のないモブとはいえ、戦うとなれば相手は相当の手練れだと思います。篤井さんのメニューをこなしても大丈夫かどうか...。」
「大丈夫だって! 俺たちには個性があるんだから」
「それです。もし相手が個性があることを恨んでたりしていたら? 能力を逆手に取られるかもしれませんよ。以前の羽生さんもそうでしたから」
「確かに。俺みたいに何かにつけて因縁をつけてくるかもしれない。そのための研究も惜しんではいないだろ」
となぜかここにいる羽生が、急にいつものメンバーであるかのように話していた。
「このダサい服の人は誰!?」
真子が辛辣に羽生をいじると彼もやけになった。
「ダサいってなんだ! ダサい髪形しやがって」
「これはツインテールでしょうが!! 見る目がないわね!」
「まあまあ、真子落ち着けって」
「まままま 真子!? あんたに名前で呼ばれたくないいんだからね......如月信男」
真子が少しのぼせている間に俺は羽生をつまみだした。だが、こいつの言う通りモブたちの執念深さは警戒しておくべきだろう。みんなが体育祭に夢中になっているとしいなが手をあげて質問した。
「あ、あのぉ~...。そういえば皆さん活動はしないんですか?お裁縫とか、普通の活動。信男先輩が素晴らしく、かっこいいというのは分かりますが、ここずっとただしゃべってるだけな気がするんですけど...ここホントに手芸部なんですか?」
「確かに、そうだね...。なんか嘘ついたみたいで申し訳ない。ここは、俺のハーレムを作るための部活なんだ。手芸の活動は」
「もちろんするよ!!」
元気よく亜莉須が答えた。もちろんするの!? ていうか何すんの? 俺お裁縫苦手なんだが!? 亜莉須は続けて話した。
「信男君はね、女の子がいやすい居場所を彼自身の手で創造しようとしてるの。だから、彼の活動も立派な手芸部の活動なんだぁ。手芸部って私も毛糸のセーター編んだり、可愛いポーチ作るイメージだったけどね、自分の手で何かを創造すること自体が手芸なんじゃないかって......。だから今から私たちで体育祭に向けてお弁当つくろ! 参加する信男くんと礼ちゃんときらりちゃん! 一年生の子も参加するかもだけどまずは先輩の分、お願いね?」
「「「はい!!!」」」
先輩からそんなことを言ってくれるなんて驚いた。やっぱり彼女は一番年上なだけあって一言一言の重みが俺たちとは違う気がする。一瞬だけ彼女が大人に見えた。こうやって俺たちは大人になっていくのか......。彼女の手料理加減はあまりにも下手でこっちでは見られなかった。
「料理はそんなだいたいじゃない。もっと、分量をみなさい」
「「「「「「西京先生!!」」」」」」
そこにいたのはボロボロになった西京先生だった。
「君たち生徒に教え忘れたことがたくさんあってね。収容所から抜け出してきた。君たちがよければ居場所のない私をかくまってくれないか?」
皆はお互いの顔を見合った。少し難しい顔をした廉、天使ちゃん...。その気持ちもわかる。だけど、この人は俺たちの顧問だ。それにもうSSSのメンバーじゃない。なら、恨む必要もない。
「顧問の先生が俺らに頭を下げてどうするんすか? 俺たちに料理、教えてよ。体育祭近いから栄養満点なの頼むよ」
「私は、厳しいぞ......」
「「「「「「「ご指導、お願いします!」」」」」」」
そして、西京の地獄の料理教室は3日間続いた。そして当日になり、最強のお弁当が俺たち三人に渡された。
「今年は私も見守りに参加するから、楽しみにね? ダーリン」
「姉と共に応援してる。情報なら任せて」
「今回は俺との特訓は無しだからな。気合で頑張れ」
「信男君ふぁいとー! 神様も応援してるから安心だよね?」
みんながみんな応援をしてくれている。一年も今年初参戦で緊張してるみたいだ。
みんな準備は整ったみたいだ!! よし、体育祭の始まりだ!!
次ィ回!体育祭がやってくる!! 年に一度のあの祭典がやってくる!!
グランファイトーーーーーーーーーーー! レディ・ファイトーーーーーーーーー!!
次回「P-1グランプリ 開幕!」
次回もハッスル・マッスル!!




