49:泥しいなはおしとやか?
ぷいー♪しいなです!先輩! 遊園地に連れて行っていってくれませんか?
ご連絡、お待ちしてまーす。
「如月信男くん、SSS機関は君の父親も関わっている。気を付けたまえ。ああ。後、今年から学内の成績不振という理由で体育祭は6月になったからな! では、よきゴールデンウィークを」
そう言って西京は俺たちの元から去った。学校にも現れなかった。突然のことに学園は特にうちのクラスはパニックになってしまった。なんとか副担任が彼の授業と受け持ちのクラスをやってのけている。SSS機関...そして俺の親父。一体何の関係が...。
「先輩? 厳しい顔してますけど大丈夫、ですか?」
「ああ、いやごめん! 緊張しちゃうなぁ、後輩とデートだなんて」
「いえ、私も先輩とデートできてラッキーかなぁって......」
「ん? どういうこと?」
「いえ! なんでもないですよ! 早く連れて行ってくださいよ、テーマパーク」
とりあえず、難しいことは後回し!! 今日は泥ちゃんと初デート!! 感じいい子だし、すぐにOKしてくれたから彼女の個性も見極めつつ、今日一日は話題のテーマパーク『スニッキーランド」を堪能するぞ!
ジェットコースター、お化け屋敷、メリーゴーランド、ゲームセンター...。何でありな夢の楽園。まずは泥ちゃんにどこに行きたいか聞こう。
「泥ちゃんで大丈夫?」
「なんでもいいですよ? 思い切って『しいな』でもいいですよ?」
「いやぁ...。とりあえず、どこ乗りたい? ......しいな」
「スニッキーと写真撮りたい!!」
スニッキー・ラビット。日本大好きなうさぎの男の子というキャラクターだ。普段はティーンタウンのエリアにいるって聞いたけど。うさぎ、うさぎ、、あれかな? そう思うとしいなは思い切り飛び出していった。スニッキーは手を振ってから抱きしめていた。いいなぁ...いやいや、写真写真!
「じゃ、撮るよ?」
「ええ…? 先輩も一緒じゃないんですか?」
そんなことを言っていると、スタッフの人が気を使ってくれてカメラを持ってくれた。俺も入り、スニッキーをはさむ感じで写真を撮ってくれた。写真が撮り終わると小さな舌打ちが聞こえたような気がするが置いといて、いい写真が取れててよかった。次はどこ行こうか...? ジェットコースターちょっと乗りたいかも
「あ、ジェットコースターは大丈夫?」
「絶叫系、苦手ですけど先輩となら何でもできる気がします!!」
頼もしいというより、すごいうれしい。こんなにもいい子がいていいのだろうか。ちょっと泣きそう。俺はここ一番のメインと言われているジェットコースター『スターダスト』に乗り込むことにした。ドラゴンのような意匠のコースターが激しく、早く、駆け巡るアトラクションだ。とても楽しみだ。怖がってるしいなを全力でサポートしながら行こう。
いよいよ、俺たちが乗り込む番。やけに緊張して心臓の鼓動が聞こえてしまいそうだ。
「緊張してます? まだ」
「うん、ちょっとね?」
「私もです。 手、握っていいですか?」
「は、はい」
俺としいなは手を安全バーの上で重ね合わせた。
ゆっくりと上がっていくコースター。手をギュッと握りしめ、落下に備えた。そして、ひゅんとなり、空と地面が交互に重なるように見えたり、空を縦横無尽に飛ぶ隼か、いやそれ以上の竜の背に乗ったような感覚。乗ったことないけど。堪能しているとあっという間に魔法は解け、華麗に元の乗降口へと戻された。降りたときには疲れ果てたが、妙な爽快感があった。
「意外と、楽しかったです」
「そ、そうでしょ? よかった。じゃあ、次はしいなが決めていいよ」
「じゃあ、ちょっとゆっくりしたメリーゴーランド!! 可愛いお馬さんに乗りたい!」
色とりどりの馬というよりポニー?ユニコーン?が回っているメリーゴーランド。そこまで並んでいる列もジェットコースターよりましだったので乗ることにした。古き良きアトラクション......。どこか懐かしい気もする。乗る時間はそこまでではないものの、ゆっくり動くので時間もゆっくりに感じた。二人乗りできるタイプのものにしたのでちょっと恋人のデートっぽくて俺の念願が叶い、満足した。
さすがにお腹がすいてきた。二人で一緒にゲームセンターの近くにあるフードコートに行き、昼食を食べることにした。俺はやきそばを、しいなはプレートを持ってきた。そこにはキャラクターにかたどられたパンと可愛らしく盛られたハンバーグランチだった。意外な組み合わせなので面食らった。
「これね、食べたらプレートもらえるんですよぉ~。いいでしょ♪」
はい、可愛い。正直これで飯が食える。と思いながら焼きそばを豪快に食べた。しいなはかわいらし気に小さく切り分け、食べていた。パンももったいないなぁと言いながら口にほおばっていた。
「写真とかよかったの?」
「え? あ!! 忘れてた。てへ」
『てへ』ですって奥さん。可愛いと言わんとして、何と言いますかい。でも彼女の個性がまるで分らない。ここまで頑張って引き出そうとしたけど......ちょっと抜けてるけど、配慮しながらわがまま言ってくれる可愛い後輩じゃないか。ますますわかんねえな、これ。一通り食べ終わった後、少し休憩した。午後にあるパレードを見ようという話で盛り上がるもそれまで時間が一時間半くらいある。ふと見ると、しいなはゲームセンターの方に視線を移していた。
「ゲームセンターで何か可愛いものでも取ろうか?」
「い、いえ! この遊園地代にちゃっかりお昼もいただいたのに...」
「気にしなくていいよ。大事な後輩だからね」
「あーいや、私はそういうのじゃなくて......」
「普通にゲームがしたかったの? なら、ここでゲームしてようよ。パレードまで時間あるし」
「いいんですか?」
「別にいいよ! ていうか俺、やりたかったのあるんだよね」
「分かりました! 私もちょっと色々見たいんで!!じゃあ、午後にこの入り口で!」
そういうとそそくさとどこかへ消えてしまった。全然いいんだけどね。さあて俺は、ここにしかないって言う『マジック&ドラゴンズ VRVS』をやりに行くとしますか! 母さんに散々手伝いして、もらったお小遣いだ。使わなければ...!! 俺はさっそく近未来の椅子に飛び乗った。
次回はまさかの遊園地編後編であの有名なカードゲーム「マジック&ドラゴンズ」が見られるぞ!
ゲーム、始めようぜ!
次回「揺れる乙女心。」




