48:西京貴は時間にうるさい。
SSS機関編始動していきます!
そして今回は影の薄かった西京先生の出番!
~SSS機関本部~
「収容番号004。お前はセーフティだ。収容を解除する」
「そ、そんな!! 私は教師として、真っ当に彼らを本部へと連行しようと!」
「006のようになりたいのか?」
「......かしこ、まりました」
黒服の機関の収容者たちに嘲笑われながら立ち去る教師。欅が丘高校2年担任 西京 貴。彼の心にはふつふつと如月信男への怒りがこみあげていた。
「如月信男!! すべて、あいつのせいで!」
その頃、如月信男の通う学校、欅が丘高校の桜は4月だというのに葉が混じりだし、新生活の幕が上がろういう雰囲気だった。新入部員も3人現れ、順風満帆は日々を送る彼に影が落ちる。それは6限目、最後の授業だった。
「如月くん、天使くん。部活の前に君たちには再試験を受けてもらうよ」
「なぁに言ってんの? 西京先生!? 俺たちテスト全然引っ掛かってないよな? 天使ちゃん」
「うん。信男君も私も再試験受けなくていいくらいの点数は取れていますけど?」
そういうと、西京先生は二人の肩を叩き、にらみつけた。
「今日の放課後、5時ジャストに始めますので、ここで勉強しているように」
西京先生はまた来ると言って立ち去っていった。天使と信男は首をかしげながら廉に話した。
「私たち、そんなに成績悪かったっけ?」
「モブ男はともかく、天使さんまで呼び出しとはな」
「おい、廉! 俺はともかくってなんだよ!」
「で、どうするんだ?」
「無視だよ無視! 部活行こうぜ」
「お前なぁ」
そう言って教室のドアを潜り抜けようとするとどうしたことか、信男と天使だけは教室から抜け出せないでいた。なにかの力に阻まれているようだった。きらりも二人を不思議そうに見つめながら廉と二人で引っ張ろうとするが一向に出ることができない。さらには、二人は何かに引き寄せられるように自分の机に座っていった。
「な、なにしてんだ? モブ男!!」
「わ、わかんねぇよぉ!!」
「動けないよぉ!」
4時45分...きらりと廉も教室に入れなくなった。声はまだ届くようだ。信男と天使は必死で抜け出そうとするが動けないでいる。きらりと廉も教室に入れないとなってはどうすることもできない。
4時50分...とうとう声が遮断された。扉が大きな遮蔽物かのようにお互いの声は聞こえなくなり、呼びかけても無音だった。
「信男くん、どうしよう......。これ、先生の個性なのかな?」
「肩を叩かれた時点でなんらかの能力が作動したのか!? あの先生、生徒を拘束するためにわざわざ個性なんか使いやがって!」
そして約束の五分前、4時55分。西京先生は現出魔を連れて教室へやってきた。その姿は恐竜、ティラノサウルスのようだった。
「私は少々時間には厳しいタイプでね。 それが個性として現出した。私のT‐レックスの能力は、つまり私の指定した時間、場所からは逃れることはできないということだ!! ここを出たければ私を倒すしかないのだ!! すべてはお前が悪いのだ、如月信男!! お前のせいで私は機関を追放されたのだ!」
おそらく、西京もSSS機関のエージェントだったのだろう。彼を倒して情報を聞き出すのも悪くはないがここから出るのが優先である。信男は、マジックステッキを現出させた。天使には後ろに隠れてもらい信男はハートスクリューで牽制した。魔法は物体でもないにも関わらず、T-レックスはしっぽで攻撃を跳ね返した。そしてT-レックスは信男の右腕に噛みつき、振り回した。
「うわぁぁぁ!!」
「信男くん!! こうなったら、神様パワーで助けないと......!」
「ほほぉ、君はどういう個性なのだ? 先生に見せてみなさい」
「<現出・神の一矢>!! 」
光の弓と矢を持ち出し、天使は思いっきりその弦を引っ張った。光の矢は確実に西京を打ち抜いた。何も起きなかったように見えたが、なぜか現出魔は姿を保てなくなっていた。
「時間にルーズでもいいのか...?」
「ていうか、デートの時って絶対女の子は遅れるよ? 先生みたいな時間にタイトな人って嫌われるよ?」
その一言に西京の心にグサッと矢が刺さった音がした。信男は解放され、尻もちをついた。
「天使ちゃん、ナイス......」
「信男くん!?」
なぜか天使の攻撃は信男にも影響してしまったようだ。それでも勝ったのには変わりない。
「くそぉ、覚えてろよ!」
西京が負けセリフを吐き出して教室を飛び出すと、先生の目の前には札杜 礼が雪風を吹かせて待っていた。冷徹なまなざしは、西京を今にも凍り付かせようとしていた。
「西京先生、マスターに迷惑をかけて謝罪もなしですか? とんだ大人ですね」
「わ、悪かったって! だが、エージェントから外されたのはあいつの......」
さらに礼の目は、冷徹に養豚場の豚を見るような目で軽蔑していた。西京は腰を抜かして如月信男に頭を床につけ、手を擦り合わせて何度も謝罪していた。
「もう良いって先生。それよりさ、機関のこと知ってることがあるなら教えてよ」
「わ、わかった。 私が所属していたSSS機関は、ここ数年で現れた能力「個性」を研究、兵器化するための機関だ。エージェントとは、個性を持つペキュラーが収容されたときの呼び名で個人個人が研究対象であり、機関収容者を増やすための道具としても扱われている」
「そんなのが学校にあってたまるかよ! 校長か理事長に言おうぜ」
「無駄だ。彼らも機関とはズブズブだ。ここの校風は何だった?」
「自由に、個性を......伸ばす」
「そういうことだ。初めからペキュラーを養成する学校だったんだ」
「じゃあ、廉みたいな普通の人は?」
「お前みたいに覚醒する可能性を秘めているからともとれるし、普通の高校というフェイクを掛けるためともいえる。......これで満足か?」
「ああ、満足したぜ」
SSS機関の目的とは個性のあるペキュラーたちを収容して兵器ビジネスへと変えようとしている個性を大事にしようともしない皮肉な連中だった。そのことを聞いて信男は少しながら彼らに嫌悪感と戦う使命を感じていた。
次回はGW編! 新入生との交流を深めるため、デートへと誘う!
次回「泥しいなはおしとやか?」




