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42:私とあなただけの時間 n日目

俺は、榊とかいう女の子には絶対にほだされねえ!!

俺は絶対に彼女の謎を解いて見せる。


ピピピピ...ピピピピ...

 飛び起きると、時計はいつもの時間を示していた。やっぱり、何度も2年生初日を繰り返しているようだ。俺はすぐに学校に行く用意をして彼女に会わないように風のように玄関を開けた。


「一人で学校行くつもりだったの?」


「榊 皐月めい、君が時間を...?」


「なんのこと?」


俺の考えすぎだろうか...いや、そう思って絆されてきたじゃないか。俺はもうだまされない。この無限ループから抜け出して、はやくみんなに会いたい。ここはいつもと違う行動をしなければ…!


「ごめん、俺が学校に用事あるから先に行くわ!」


そう言って俺は全速力で走りだした。モノクロの青空を駆け抜け、彩をなくした桜の花びらを踏みしめて、スポットライトは俺にしか当たっていないような世界でただの背景と化した人々をかき分け、学校へ正門へと急いだ。


「そんなに急いでも、いみ ないよ」


なに? 気づくと俺は教室のドアに手をかけていて、彼女は俺の後ろで何の顔色を変えずにこちらの顔を覗いてきた。


「はやくきょうしつ いかないの?」


「本当にあんた、誰だ」


「べつにいいじゃん、かわいい幼馴染で......」




授業のチャイムが鳴った。授業が始まると、生徒や先生は平然と授業をこなしていた。俺たちが席に座っていないにも関わらず。俺はその光景に驚きしかなかった。今までこんなことがあっただろうか。



「あーあ、信くんのせいでせかいがバグったじゃない。変に勘繰るから悪いんだよ。さ、予定通りに席について授業を受けようね」



古典のテストとか、どうでもいい。とにかく今は彼女の行動、もとい、俺の行動だ。俺が予定外の行動をすれば俺はこの謎のループから逃れられる? 授業中は予定外の行動を考えるのに必死になってしまった。


 彼女の行動にやきもきしていると、今度は昼休みになっていた。食堂に自分でいった記憶もなければ3限や4限を受けたような記憶がない。ただ寝ていただけかもしれないが、俺の目の前には親子丼があった。親子丼を見つめているとヤンキーっぽそうな奴らが絡んできた。 さっきより進みが早めか? というかまた、こいつら、前に絡んできたリーゼントと世紀末トサカなのか?

これだ。こいつらの行動は変えられる! 俺のこの手で!


「時代遅れヤンキーが、俺のランチタイムを邪魔すんじゃあねえ!」


どうも、俺は個性失っているらしい。 だが、俺には向う見ずにもリーゼントの顔に一発拳を当ててしまった。しかも、めっちゃ聞いてなさそう。 胸倉を掴まれ、じたばたしていると皐月が食堂の机の上に立ち上がった。


「信くんに手出しする奴は私がお仕置きしてあげるんだから!」


皐月はジャンプした後、世紀末不良の突進攻撃を華麗によけていき、よく知らない武道の構えをつけて、相手を挑発すると二人は見事に乗せられて向かっていった。皐月は不良に見事な蹴りを繰り出し退散させた。


「あんたたちが私に歯向かうなんて一万、いや2万光年早いわよ!」


天文学的数字が出て俺は目を白黒させた。皐月は腰を抜かす俺を引っ張り出していった。ふと彼女を見ると少し、笑顔が見えた。それはかわいらしかった。俺は見惚れたまま教室へと戻ってきた。


「いやー、手ごわかったなー」


「あんたの方がよっぽど手ごわいよ」


「なに?」

彼女の冷たく、恐ろしい目線が背筋に冷汗を落とした。


「ん? ああ!? いえ...ナニモ!!」


「ま、いっか。それにしても信くんの立ち向かう姿カッコよかった。ちょっと惚れ直したかも!?」


もうそんな手には乗らない。あの暗黒空間を見せられたんだ。彼女に惚れるのは危険すぎる。彼女確実に能力者ペキュラーだ。しかも闇属性で見たことのない。俺は思い切って聞いてみた。


「あのさ、皐月。聞きたいことがあるんだけど…」


「何?」


「君はペキュラーなんだろ? 俺にどうしてここまで固執するんだ。俺は君を知らないし、もう好きでもない」


「また...どうしてそんなこと言うの?」


 やはり、皐月の声にノイズが走る。彼女はうつむきながらうつろな目でこちらを覗いてくる。俺の中の危険信号が鳴り響いている。またも場の空気は一層暗く、重くなった。教室は依然と同じように皐月を中心に黒く染まっていき、わいわい話しているのに、それらも消えてなくなって皐月と俺だけの空間が出来上がった。時々、血のような赤い色が空間をほとばしっていく。頭の中は真っ白になっていた。彼女がこちらに歩いてくるたび悪寒が走り、唇が震えだした。




「たくさん愛してあげてるのに、他の子よりもっと大切にしてあげているのに、なに?その態度は。話数の差なの? 私がぽっと出のヒロインだから嫌っているの?」


「君はなにを言ってるんだ? そ、それよりみんなは? 天使ちゃんや、あや、きらり、それに廉も」


よく見ると、彼女の手にはどこからともなく包丁が握られていた。その色は鋭く銀色に、そして血のような赤が歯の先端から滴っていた。雫が落ちるたび、俺は“憎悪”の二文字がよぎった。



「のぶくん、ワタシはあなたとひとつになりたいの。たいせつなときをすごして、やがてわたしのものになる。それがわたしのねがい。あなたもすきでしょ?」


言葉が出ない。


「どうしてむしするの? ねえ......!! ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ」



俺は勇気を振りぼった。


「お前は狂ってる!」


「狂ってるのはお前の方だ! どうして私を見てくれないの? あなたは如月信男、<魅力>のペキュラー。ハーレム王になりたいんでしょ。こんなに愛してると叫んでいるのに拒絶するの? もしかして、あなたは信男じゃないのね! 絶対、そうだ。分かってるのよ? あなたは、読者が望むような主人公を演じさせられている......。大丈夫、あなたを彼らから解放させてあげる。第三者ナレーションからも、作者からも、読者からも…永遠に二人の時間を過ごしましょう?」



暗闇に滴る赤い液体は如月信男を縛り付け、永遠の愛の赤色の糸に彼は私、榊 皐月との愛を誓いあいました。そして永遠に暗くて、楽しくて温かみのあるばしょでくらしましたとさ。


おしまい♪

「けなげな幼馴染ちゃんは冴えない信男くんに尽くしたい!」は私たちの永遠の愛の誓いによってハッピーエンドに終わりました。みんな応援ありがとうね!


※最終回ではありません!! 次回「如月信男がいない!!」

俺たちの主人公、如月信男は責任を持って取り戻します!

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