20 暗殺者を預ける
暗殺者の2人組はまるでリアルな像であるかのように動かない。この惨状を見て異世界に来たセイブシシバナに噛まれたら確実に死ぬと思った。まぁ、俺はヘビ無効があるので噛まれても効果がないんだけど。
この像は一体、いつまで動かないのだろう?数秒しか持たないとしたら、怖いよな。
「殺すか。レベル上がるかも」
「ちょっと待ちなさい。誰が差し向けた暗殺者なのか把握した方が良くない?」
「たしかに」
そういえば、セイブシシバナが噛んで毒状態になったということは、ヘビ系のスキルの効果だよな。
スキルの効果が時間って、ヘビ鑑定で分かりしないか?そう思って俺はヘビ鑑定を頭に浮かべて、暗殺者の像に手をかざしてみた。
毒効果時間:2時間 28分
毒効果時間:2時間 27分
セイブシシバナが噛んでから2~3分ぐらい経っていたので、毒の効果は2時間30分のようだ。
それにしても、自然界で2時間30分もこの状態になっていたら確実に死が訪れる。やっぱりチート能力だわ。
「効果時間が2時間30分の時間があるから運ぼう。どこまで運べばいい?」
「犯罪者なら王国憲兵団に引き渡せばいいはずよ」
「それはどこにあるんだ?」
「ごめんなさい。知らないわ」
「街の中心に向かって歩けばいいか」
仕方なく俺は2つの像をもって運ぶことにした。レベルが上がったこともあり、重たいとは思うが、何とか引きずって運ぶことができている。
2人の人間を持ち運べるくらいの力があるのに、これでまだ成人男性の強さに至っていないのだから、この世界の人間はだれもかれもバカ力だと思う。
「あなたって本当にステータスの低いのね。運んでいて辛そうだもの」
「だと思うなら、一つもってくれないか?」
「ごめんなさい。暗殺者を運ぶのは抵抗があるわ。それと姫だとわかっても無礼なのね?」
「俺の国の王じゃないからな、無礼だと法律違反というなら改めるが?」
「いいえ、そのままでもいいわ」
数分ほど歩いていると、ちらほらと人が歩いているので、一人の少年に話しかけると王国憲兵団の方角を教えてくれ、しかも呼んできてくれるらしい。
少しでも早く引き渡したかったので、俺が少しずつ歩いていると、馬に乗った王国憲兵と、馬に乗った偉そうな人物と、なぜか走ってライトも一緒にやってきた。
「姫様! 心配しておりました。どうして城から逃げ出したのです」
この偉そうな人は、リアと関係がある人物らしい。お目付け役か何かではないだろうか?
騒ぎがあったのでもしやと思って一緒についてきたことは予想できるが、ライトがいる理由はわからない。
「ちょっと、外を歩いてみたかったの」
「にしても、護衛もつけずに出歩くなんて問題外です。このような危険な目に合う可能性も十分にあるのですから」
「はい」
フードを外したリアは、白い肌に真っ赤な髪をした超絶美少女だった。これだけ顔が整っていて、髪の毛の色に特徴があれば目立つな。お忍びでもすぐにばれそうだ。
「ヒロマサも危険な目に合うかもしれないから、これからは僕を連れていくように」
「はい?」
「そこは、『ハイ!』と言って欲しかったかな。やっぱり一人で休日はさみしいね」
「……」
そこには、ライトのまぶしい笑顔があるが、休日まで一緒にいないといけないのか?
ライト自体は嫌な奴じゃないが、自動でついてくる奴らが嫌なんだよな。なんで人気あるんだ。
そして、そんなに人気があるなら、俺以外に休日に一緒に過ごしてくれる奴がいるだろう。
「えっと、そちらが暗殺者でございますか?」
王国憲兵が俺が持っている。暗殺者を指さした。
「ああ、そうだ。毒で2時間くらい動かないから」
「ではこちらで預からせてもらいます」
そういうと、王国憲兵は腰に付けたヒモで暗殺者をぐるぐる巻きにしてから、馬に紐を結び引き摺りながらどっかにいった。
敵ながら心配になる格好で引き摺られていった。この世界にあるステータスの概念を考えれば、馬で引き摺られるぐらいはどうってことない事かもしれない。
「姫様、城にもどりますよ」
「わかったわ」
「ちょっと待って、サラッと頭にのせたハイピーをもっていこうとしないでくれる?」
そう、姫の頭にはハイピーが乗ったままである。そのまま行かれると、ハイピーを取りに城までいかないといけないし、城ってなんとなく面倒くさそうだ。
「なら、あなたは私の騎士になりなさい」
「嫌です。普通に返してください」
普通に自分の物を取られて、返して欲しかったら、いうことを聞けと言われても嫌なんだが、俺の物だから返してほしい。
「貴様、姫に無礼ではないか!」
お目付け役と思われる男が、俺をにらんできた。
「じゃあ、俺が騎士になってうれしいの?」
「確かに、それは嫌ですな。姫、諦めましょう」
「わかりました。彼は諦めてヘビだけもらって帰りましょう」
「名案ですな」
名案じゃねぇだろ!俺はヘビを王族に強奪されてるんだが?
「わかったよ。騎士になってやるから、ハイピーを返せ」
「ヒロマサが姫の騎士になるなら、僕も姫の騎士にならないとね」
こうして、なぜか俺とライトは、姫の騎士になることになった。
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