11 召喚された目的
兵舎に着いた所で、マリとは別れることになった。明日はどうやって逃げるべきか考えておかないとな。
「今日は疲れたと思うから、ゆっくり休んでね」
「はい、また明日」
兵舎について、客室で待つように言われたので、ライトと一緒に紅茶を飲みながら、椅子に座っていた。
俺が暇なので、うとうとしかけていると、扉がノックされて、俺を召喚したネルが入ってきた。
「一通り手続きも終わったので、一緒に騎士団長に会っていただきたいと思います」
「はい、わかりました」
「ただ、手続きでさすがに一般兵よりも弱い方を勇者とするのは難しいので、苦肉の策としてハイピー様を勇者にさせていただいています」
ネルの話によると、俺を勇者とするのはステータス上むずかしく、失敗はしたもののハイピーを召喚できたということにするらしい。
ハイピーは、中隊長クラスでこれから大隊長クラスは目指すことができる逸材なら、なんとか対面は保てるとのこと。本当は召喚すると初期状態で大隊長や騎士団長と同じクラスの英傑が出てくるらしい。
そして、なんと俺は、勇者ではなく勇者と一緒に来た使いの者として、キーゼル王国の栄誉国民として登録されたことをネルさんから聞いた。
まあ、勇者なんて面倒なことはこちらもできる限り避けたいので、ハイピーが勇者をやってくれて少しだけありがたい。
使いの者なら勇者よりも自由度が高いし、勇者に伝言を頼まれた時も、あしらいやすいだろう。
最悪の場合は、ハイピーとの会話をゴマかして、面倒なことは逃れてしまえばいい。これが勇者本人だと難しいかもしれないが、勇者は俺との会話でないと話が通じない。
そして、3人とヘビ達で騎士団長が待っているひときわ煌びやかな扉についた。
「失礼します。召喚士のネルです。勇者様を連れてまいりました」
「おお、ご苦労さんだね」
扉を開けると、高級そうな皮の椅子にどっしりと座った、顎髭を蓄えたガタイのいい40代ぐらいの男が座っていた。
物腰は穏やかだかが、こちらを圧倒するオーラがある。現実世界でこれほどまでの圧力を感じたことがないので、異世界きたからわかるようになったのだろうか?
「えっと、頭の上におられるのが勇者ハイピー君だね。そして、使いのヒロなんとか君だね。意思疎通ができない勇者というのは始めたが、騎士団長のフリード・ストロングだ。よろしく頼むよ」
ハイピーに挨拶をしているようだが、すでに眠ってしまっているので、話を全く持って聞いていない。
そもそも、ヘビは瞼が無いので、寝ていても目が開いるので、ヘビの事を知らないと寝ているか判別できない。
知っている人でも、よく観察しないと寝ているかわからないので、ストロング騎士団長が一瞬で判別できるわけがない。
「俺の名前はヒロマサです」
「そうかそれはすまない。それと他のヘビ達はなんだね?」
俺の周りには、ハイピー以外に、ボールパイソンのボルゴローとボルシロー、カラスヘビのクロウがいる。
どれも、ダンジョン内で召喚したヘビだから、ストロング騎士団長には情報が伝わっていないのだろう。
「ダンジョン内で俺が喚んだヘビ達で、どいつも中隊長クラスの強さがあります」
「ほほう、はじめは中隊長クラスが1匹と聞いて逆に驚いたが、複数の勇者を召喚したようだ。素晴らしい才能だよ。ネル君」
「ありがとうございます」
ネルは素直に喜べないような表情をしているが、謝辞を述べている。本当に召喚したのは俺だしな。
「ところでヒロなんとか君、ハイピー君がこちらの世界に召喚された理由を知っておるのかね」
「わからないはずです」
もう、俺の名前を覚える気がないのかな。勇者という立場でない事を考えれば仕方がない事なのか?
勇者なんてこっちから願いさげだが、本当は全部断りたいが、全部断ったらこの世界で生活していけそうにないので、ある程度はうなずいておこう。
「ハイピー君を呼んだのは、最近、邪神の力が増してきて、封印が弱ってきているのが理由なのだ」
「その邪神を倒すのがハイピーの役目ですか?」
「はっはっは、君は神が殺せると思っているのかね。面白いことを考える」
「知らなかったもので」
確かに、人間が神を倒せるなんて普通に考えられば無理だよな。でも小説なんかだと邪神を倒すシーンあるし、勝手に邪神を倒すのか思ってしまった。蛇神なら飼育したい。
「神は人では殺せない。故に神の配下となる魔物を倒し、邪神の力を弱める。それが何千年も前から続いている勇者の役割だよ。封印はこちらでやるから、他の者と協力して励んでくれ」
「危険が及ばない範囲でやります」
「え?」
返答もきちんと聞かずにつれてこられたのに、邪神の配下の魔物を倒せなんて、無理なお願いだ。これでもかなり譲歩している。レベルが上がれば他のヘビを召喚できるから少しだけやってみようかなと思っているが、危険な場所に俺のペットを連れて行くなんてできるわけがない。
「助けてくれるということで、召喚したと聞いているが?」
「それはですね、モガモガ……」
俺は、横にいたネルに口をふさがれたので、途中でしゃべることができなかった。そして、ネルが耳元に口を近づけてきた。
「あの、すみませんが口を塞ぎますね」
耳に吐息がかかって鬱陶しい事、この上ないな。
「彼は、一般兵よりも弱いので、ある程度レベルが上がるまで修行をさせてほしいということです。そうですよね」
「……」
[いいえ]と答えようと思ったが、ネルに口を押えられて、頭を無理やり下げさせられた。怪力女かと思ったが、たぶん俺がこの世界でステータスが低いだけだな。
「彼は、すぐに危険地帯に行くと勘違いしたのと、彼は口下手なので申し訳ありません」
「そういう子なのか? まぁ良い、これからも頑張ってくれたまよ」
「ライト君も、勇者様たちのサポートを頼むよ」
「はい」
「「では失礼します」」
そして、俺はネルに口押さえつけられて、引きずられながら、騎士団長の部屋を後にするのだった。
読んでいただいてありがとうございます。
この回以外でも、ヘビが寝ていますが、主人公以外は寝ているか気づいておりません。なぜなら目が常に開いてからです。
ヘビといえば、足がない生き物として知られていますが、ヘビは足だけでなく瞼がありません。そのため、外見から寝ているか判別するのは難しいのです。
飼育者は、目の焦点や行動や時間帯などから寝ているか判別できる場合がありますが、寝ているか判別するのは相当難しいです。
たまにイラストで、目を閉じているヘビがいるが、瞼がついているならヘビではなく、『アシナシトカゲ』になってしまいます。
もし、ヘビのイラストを描く際には、アシナシトカゲにならないように注意しましょう(笑)
今後もよろしくお願いします。




