もっといい村
昔々のことです。
とてもとても貧しい村に3人の若者が住んでいました。
いつも3人で村の不満ばかり話していました。
ヨハン「俺たち、こんな貧しい村にいたってしようがないと思わないか?」
シオン「俺もこんな貧しい生活、もう我慢できないよ」
ブラン「僕は、自分が生まれた村だし、この村が好きだけどなあ」
ヨハン「ブラン、他の村には、もっともっと楽しいことが
いっぱいあるかもしれないんだぞ」
シオン「そうだよブラン、こんな村にずっと死ぬまでいるなんて
俺には考えられないよ」
ブラン「そうかなあ」
3人の若者は、ある朝、その村を出て
「もっといい村」を求めて旅に出ました。
3人は、ある村に着きました。
その村の入り口に何やら看板があります。
「この村では、剣の使い手を捜しています!」
ヨハン「俺は、剣の使い方にはとても自信があるんだ」
シオンもブランもヨハンが、剣の使い手だということは
よく知っていました。
ヨハンは、その村の剣の大会に優勝して
その村からとても高いお金で雇われました。
ヨハンは言いました。
「ほら、どんなもんだい、やっぱり、村を出てよかったじゃないか」
剣が使えない、シオンとブランはその村では役に立ちません。
仕方なく、2人でまた、旅に出ることにしました。
2人は、ある村に着きました。
その村の入り口に何やら看板があります。
「この村では、足の速いものを探しています!」
シオン「俺は、足の速さにはとても自信があるんだ」
ブランもシオンの足の速さはよく知っていました。
シオンはその村のかけっこの大会で優勝して
その村から高いお金で雇われました。
シオンは言いました。
「ほら、どんなもんだい、やっぱり、村を出てよかったじゃないか」
足の速くない、ブランはその村では役に立ちません。
仕方なくその村を後にしました。
ブランは悲しくなりました。
「僕には、ヨハンみたいに剣はうまくないし、
シオンみたいに足は速くないし、
かといって、何にもとりえがないし、・・・」
ブランは仕方なく、自分の生まれた村へ帰ることにしました。
ブランは、自分の村へ帰ると
「僕には、何のとりえもないから、とにかく一生懸命に
働くしかないんだ」
そう考えると、毎日、毎日、畑を耕して一生懸命に
仕事をしました。
それから3年たちました。
ブランは、貧しいながらも、結婚して子供もでき
何とか家族が暮らせるだけの生活をおくっていました。
貧しくても家族の笑い声がたえることはありません。
そんなある日のこと、
あのヨハンとシオンがぼろぼろの服をまとい
血だらけで村へ帰ってきました。
驚いたブランは「いったい、どうしたんだい」
とたずねました。
2人はこれまでのことを話し始めました。
ヨハン「剣の使い手を捜していたのは、村の王様が争い好きで
いろんな村といつも喧嘩していて、その争いに
俺をかりだすためだったんだよ。
おかげで、休むまもなく、戦いにつぐ戦いでこの有様さ。
おまけに、俺よりももっと強い剣の使い手が現れて
追い出されてしまったんだ。・・・」
シオン「俺も似たようなものさ、
村の王様が新しいもの好きで
足の速い人間を探していたのは、
いろんな村の情報がいつも欲しくて、
足の速い人間に、片っ端にいろんな村に情報を
仕入れに行かせる為だったんだよ。
おかげで、休むまもなく、走りっぱなしで
ある日、走りつかれてがけから落っこちてしまって
足をけがしてしまってこの有様さ。
おまけに、走れなくなった俺は使い物にならないと言われて
追い出されてしまったんだ。・・・」
ブラン「そうだったんだ。
この村は、君たちが生まれた村なんだし
また、がんばって一緒にこの村で暮らそうよ」
やさしいブランは二人のけがの手当てをしてあげると
おいしい料理を二人のために用意してあげました。
ヨハン「ありがとう、ブラン。俺この村に帰ってきて
気づいたんだ。この村は何て緑に囲まれた
素敵な村だろうってことに。」
シオン「ありがとう、ブラン。俺もさ
この村にはこんなきれいな川が流れているってことに
今までどうして気づかなかったんだろう。」
それから数日後
ヨハンもシオンもその傷がなおると働き出しました。
ヨハンの剣のうまさは、くわで畑を耕すうまさに変わり
人の何倍もおいしい野菜ができる畑を作りました。
シオンの足の速さは、狩をするときのうまさに変わり
人の何倍も獲物を捕まえてくるようになりました。
ヨハンとシオンの二人は、作った野菜や獲った獲物を
惜しみもなく、村の人達にも与え
いつしか、その村は貧しい村から、豊な村に変わっていきました。
ヨハン「俺たちの子供たちがもっと豊に暮らせるように
がんばろうぜ」
シオン「いろんなことが勉強できるところや
けがや病気がなおせるところも作って行きたいな」
ブラン「僕たち、本当にこの村が大好きだものね」
おわり