夕食
やらかした。
午後10時を回った、人気の少ないオフィスで
重要な書類に
できたてでいい香りのするコーヒをぶちまける。
1週間かけて作った
来週のプレゼンの資料なのに。
この1週間、ずっと会社にこもりきりで
食事といえばコンビニのおにぎりとコーヒを買うくらいだった。
そういえば妻の作った料理はろくに食べなかったな。
大事な書類をダメにした重大事件の最中に
僕はふとそんなことを考えた。
焦りなのか、諦めなのか
頭の中は濡れた書類とは真反対に真っ白だ。
誰も僕のこの不幸に気づいていない。
このまま帰ってしまおうか。
きっと来週のプレゼンまで誰も気づかないのだろう。
なら。今夜は。
久しぶりに妻の料理を食べたい。
メニューはなんでも。
あの暖かい味を。
ため息をつき、
少し恨めしい思いで、おにぎりの袋を開ける。